当社では、アーティストの音楽イベントの企画プロデュース、

ステージの構成演出の他、楽器の演奏やヴォーカル(コーラス)で

仕事をしたい人を募集しているセクションがある。

育成しデビューをさせていく。

デビューといっても、テレビやCD中心の芸能界ではない。

仕事は、ホテルやレストラン、ラウンジでの演奏は勿論,イベントやコンサートでの

ステージ出演など様々で、活動エリアは、関西、西日本を中心だが、ホール公演や

イベントの場合は全国どこにでも行く事になる。

業界内の我々は、それらの出演者を総称して「プレイヤー」と呼ぶ。
一般から公募するオーディションは大変である。
応募者がそれぞれ、自分の勝手なイメージで応募するため(当然のことなのでそれが悪いわけではない)
受かれば明日にでもCDが出せる、と思っている子もいれば、TVに出てタレントの仕事をする、とイメージしている子もいれば、エレクトーンが弾けるからと(我々からすればプロとしては全く通用しないレベルの子もくる)バイト感覚で簡単に考えていたり、逆に音大のピアノ科を出てるからすぐ仕事できるもの、と思っていたり、また、自分のオリジナルソングを熱唱する子もいれば、アニメソングオタクもいたりする。ジャズを歌う子、クラシックを歌う子、ヒット曲を歌う子。レベルも様々、ジャンルもそれぞれ、やる気のレベルもバラバラ(ジャンルやレベルは何でもかまわないが)場違いもいれば勘違いの子も多い。
「この事務所、本当に仕事あるのかな」と自分の実力は棚にあげ、疑う子もいる。
「絶対コレで食べて行きたいです」と自己PRしていたわりには、こちらからの説明後”思ったより大変そう、もっと簡単と思ってた”と、あっさりやる気のなくなる子もいる。
こちらが出来るだけ即戦力がほしいのは言うまでもないが、なかなかすぐ使える子はいない。
それでも、こちらにしてみれば”それが普通”ととらえている。なぜなら、すぐ使える子というのであれば、その子は当然すでに活躍しているはず、よってそんな子はスケジュールは忙しい、わざわざ募集のオーディションには来ない、という事である。

東京の大手事務所のあるミュージカルのオーディションにうちの子を受けさせた時。

そのスタッフから聞いた話も「中々いい子は来ない。しかしそれもいつもの事」らしい。

ああ、こんな大きなとこでもそうなんだなぁ、と思った。

又、ある番組のサマーステージのオーディションのキャストにうちの子を受けさせた時も、

関係者が、

「もう何度もオーディションしてるんですが演出家が中々OK出さないんで・・・今回で決めてくれると助かるんですけど。」

と何度もやり直しのオーディションにスタッフもかなり疲れていた。

結局いつも、使う側にしてみれば、使いたい子はスケジュールがいっぱいで、空いている子は必要のない子なのである。その子にしてみれば「仕事がない」となる。しかしこちらは人不足。

どこも同じなんだなぁ、と思う。

我々の仕事は、仕事の内容により時間が異なる。例えば、ラウンジで歌ったり演奏したりの仕事を目指すなら、時間が夜になる。ブライダルでの演奏の場合は大抵、土日中心となる。

じゃあ、だからといって、土日も毎週決まった時間に仕事があるのではない。結婚式そのものの本数が少なければ仕事も少ない。例えば仏滅の日などは極端に少ない。という具合にである。曜日を指定すれば毎週出来るバイトとは異なる。よって、自分の希望は述べてもらってもいいとしても

「平日の午前中が希望で職種は結婚式なんですけど」と言ってもらっても、コンビニのように24時間、同じ労働が出来るわけではない。

又、自分が“ココのステージで歌いたいです”と希望しても、使う側が「別の子がいい」となれば

その子に仕事は入らない。

しかし、一般応募の子は、そんなことは勿論わからないので「週3日しか働けないんですけどそれでもいいですか」と言ってくる。こちらは「自分に仕事は入らない人は毎日休みなんですよ」と答える。

その意味が分かる人はわかるが、わからない人は“そりゃあ自分に仕事をくれなければ休みですよね”と思う。また、お客さんからのリクエストに応じなければならない事なども考えもしていないので、タレントのように自分の持ち歌さえ歌えばいいと思っている子もいれば、演奏する曲は自分で決めれると思っている子、或いは、人が決めてくれると思っている子(どちらも異なる)など、それぞれ勝手にイメージしている為一時オーディションでは、さわりを説明するだけでも大変である。

仕事の説明は業界がわからないとかなりの時間を要する為、詳しくは一次通過した人に二次で説明している。

A,B,C,D,Eの五段階評価で、ABCが一次審査通過。DEは再チャレンジしてください、となる。
自分が当然Aで通過するもの、と思っている者は、Cだと気に入らない(ま、そうだろう)
こちらの評価基準は、どれだけ演奏や歌が上手であったかという評価ではない。
すぐに現場で使える者A。まだまだ研修の必要がある者C。となる。
応募者100名に対して、Aは大抵1から2名程度。
B,Cが2、3名、殆どがCである。
ココで言いたいのは、それだけ使える人はいない、という話ではない。
100名のなかでAが1人だった場合,こちらもその者に期待するわけだが,
大抵活躍しない。するのはCである。
「100名の中で俺が一番だから、先に仕事が廻ってくるぞ」と思うかどうかは知りません。
しかし、20年以上実施しているオーディション、現実はそういうもんです。
また、一次しか通過させないつもりでいたような子が、最終審査まで残り採用になったり、
不採用にしようか迷ったあげく、ダメもとで採用したような子が、後々活躍したり、
となるのが現実なのである。
だからいつも私は二次オーディションで「我々にも皆の可能性はわからない」
「若い力はまだまだ未知の力を秘めている」だから、Cの人頑張れ!Aの人たるむな!と言っている。
一次オーディションを通過した子たちは二次オーディションに進む。
実技審査はなく、オリエンテーションと個別面談である。
まずは、仕事の種類と時間帯を簡単に説明。仕事の種類によってヒトが全く分かれているのではないので、例えは、月曜はパーティー、火水は展示会、木曜は企業イベント、金曜はラウンジ、土曜はブライダル、日曜はコンサート、といった具合に、毎日様々なところで色々な仕事をする、という説明。
そして、レビュラーの説明。毎週月と水はAホテル、木曜はBテレビなど、決まった所にいくのがレギュラーです、ということなど。そしてそのメンバーになるにはオーディションに受からないと希望だけしてもなれないということ。
また「事務所に仕事はないですよ」という説明。つまり、事務所に「誰か一人お願いします」と頭数的に発注があり、当日誰かが行けばよい、とイメージしている人がいたりするが、そうではない。
依頼側から「A子スケジュール空いてますか」と電話があり、空いてなければ、他事務所のB子に発注しようと思っているかもしれない、ということ。事務所に発注の電話があれば、誰でも行かせられると言う権限が事務所にあるとは限らない。という意味(当然、売り込みはするが、最終決定権は発注側にある)
また、レギュラーのオーディションに受かる為のポイントなども指導。
”ダメで元々”、というのはない、ということも指導。
どうすれば活躍出来るか、などの講義などもあり、かなり濃い話なので「やれるかな」と不安になる者や「思ったより大変そう、しかしプロの世界だ(と実感し)頑張ろう」と思う子など、同じ話を聞いても、また、それぞれである。
上手な子が不安になったり、こちらからすれば、まだまだデビューは無理だな、と感じる子が、えらく張り切っていたり…で、いろんな子がいてるなあ、とつくづく思う瞬間である。
社会を知らない新卒にしてみれば、ステージに出ることが大変なのではなく、
社会人として仕事をする事が大変なのである。
何の職業もそうだと思うが、見ているのとするのでは大違いである。
つまり、この仕事が大変なのではないが(我々にしてみればそんなに大変ではない)
20代そこそこの者にしてみれば、甘く考えて普通なので「思ったより大変」となる。
どの職業も見えない所は大変なのは共通だが、この仕事は見える所が華やかで綺麗である。
夢を売る仕事なのだから当然なのだが、実際は殆ど見えない所が仕事の中心の為、現実との
ギャップが大きいようである。
それが新人にはわからないので、誰かがソレらをしてくれて自分は本番だけするものと、
とらえがちである。そりゃあ、ビッグにでもなれば、色々な人が自分の為に動いてくれるかも
知れないが、全く無名の新人は、自分の事を自分でするのは当然、先輩のアシストも自分が
やって普通。しかしこの世界"人から使われたくない"や"事務や販売がイヤだから"など、
一般の仕事はお客に頭を下げなければならないが、この仕事なら周りが「出演してくれて
ありがとう」と言ってくれるものと思っている者もたまにいたりする。
結局、この世界も一般と同じ。
最初は相手が「使ってやっている」という側で、新人が「使って下さい」と頭を下げる
立場である。
採用後は、多くの研修がある。研修のメインは実技的なものではない。
業界のしくみや常識を知る為に、まずは事務所内のしくみやルールを学習。
そうしなければ、事務所内の会話が通じない。それでは他社や現場で話にならない。
まず言葉の単語が通じるようになる必要あり。業界用語も多いからである。
危険なのは、一般語に思われるが解釈は全く本人が思っているのとは別で、業界解釈
だったりすること。通じているつもりが通じていない、となり問題が広がる。
我々の仕事で、新人が仕事をしようと思っても、最初は出来ないのは、仕事場は
会社の中ではないからである。しかも、昨日と今日は全く異なる場。ということは
やることもやり方も別。会場への入り方もわからない。誰に何を聞いていいかもわからない。
つまり、今、立っていなればならないのか、立っててはいけないのか、が、わからない。
よって、ステージをする、という以前の問題だらけから、スタートが始まる。
コンビニなどの場合”自分がコンビで働くのだから、仕事の仕方はコンビニの人が教えてくれる”と
思って普通である。
しかし、我々の仕事の場合、会場の人は「プロが来たから聞こう」と思う。
ところが、新人が「会場の人に聞こう」と思ったとしたら、互いに聞く側のつもりになってしまう。
新人の考えは、相手先に仕事に行くのだから、自分は聞いて当たり前・現場の人が教えてくれるものと
解釈してしまう。(その気持ちは分かるが)
我々の仕事は逆である。
しかし、それには現地を見て”今回の現場はこうするべき”という判断力が求められる。
当然新人には出来ない。
例えば、テープカットのセレモニー。
現場の人は「プロが来たら、どこで音が入るか聞こう」と思う。
プロは「通常○○ですよ」や「大抵○○ですがコレコレの場合は△△ですよ」と、
どこでどんな音が入るのかの解説の知識が必要である。
よって、現場の関係者も「ああ、プロに頼んでよかった」となる。
勿論、新人はそんなこと分からない。だからこそ新人なのである。

仕事があるのかどうか?または、自分が本当に仕事に行けるのか、など、不安になる。
よって「どの楽器の仕事が多いですか」と質問があったりする。
つまり、同期でピアノが3名、ボーカルが1名だったりすると「やっぱりピアノの方が仕事が多いんですか」と聞いてくる。叉、同期でボーカルの子に先に仕事が入ったりすると「ヴォーカルの方が仕事が多いんですか」と聞いてくる。
これに対する答えも、一言で”何が多い”、と言えるものではない。
つまり、例えば、ピアノと歌、とちらが多いかと言えばピアノかも知れないがピアノ奏者人口も多い。歌の方が少ない分競争率は低いかもしれない。もっと極端に言えば、ピアノの仕事とハープの仕事、ピアノの仕事の方が多いが、ハープは奏者そのものが少ない。よって、しょっちゅうハープ奏者はいなくて大騒ぎになるのが現実である。


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