「肘をついて食べると行儀が悪い」の根拠は、実はちゃぶ台にあった|トレンド|無料動画 GyaO[ギャオ]|
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メールマガジン「まぐまぐ」に、このような記事を見つけました。
日本の食卓は、一の膳、二の膳というように、小さな膳が使われていました。それが何時のころか、ちゃぶ台が普及してきました。
ところが、このちゃぶ台は、意外と不安定だったそうです。脚がしっかりしていませんので、うっかり手をつこうものなら、ひっくり返ってしまいます。
そのようなことから、「ちゃぶ台に肘をついて食べてはいけない」という習慣が生まれたらしいですね。
昔からの風習とばかり思っていましたが、なんと"ちゃぶ台"が普及してからのことだったとは。ちゃぶ台をひっくり返すのは"頑固オヤジの特権"、だったのかもしれませんね?
ちなみに、ちゃぶ台が登場したのはいつ頃のことかというと、明治20年代に、家具メーカーが発案したのが始まり
とされているのだとか。そして一般家庭に普及したのは大正時代から昭和にかけてのこと。つまり「肘をついて食べてはいけない」と言われはじめたのは、ずいぶん最近のことなんですね。では、それ以前はどうったのでしょうか?
「壺齋閑話」によれば、明治維新以前―古代に遡るまでの間、日本人の食卓は基本的に、
銘々膳
が使われていたようです。つまり一人用のポータブルな食卓…時代劇などで見られるアレです。今日でも温泉旅館などで見ることができますね。一人分の料理を載せるだけの小さな膳ですから、肘を置くようなスペースは見当たりません。確かにこの一人用の膳なら、わざわざ「肘をついて食べるな」という注意をしたりされたりする必要もなかったのかも。
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この記事に「違和感」を感じた私はさっそく調べてみました。
ちゃぶ台の歴史で、検索してみると明治中期(1900年前後)というサイトもあれば、明治10年後半、はたまた本記事のように明治20年代というサイトもあり、一概に何年に普及したとは言い難いものがありそうです。
そこで、本記事では公平性を期すため、「拳骨コレクション」の中から以下の本を参考にしました。
安田甫等編『小笠原流小学生徒躾』 (勝山教育会、明治十六年)
本書には、「第八節 飲食程儀」という項目があります。そこには、食事をするときの礼儀・マナーについて細かに記述されていますが、この記事の言うとおり、肘つきがダメだという記録は発見できませんでした。
その影響も銘々膳によるものだということも納得です。
ただし、すべてが配膳だったわけでもなく、一般の酒屋や屋台などでは今の机などが出ております。ただしそれは砕けた酒席での話しなので、そんな中での食事マナーまでは記録として見つけることは出来ませんでした。
しかし一般論として、当時の小笠原流が「肘つき食事」を認可しているはずもなく、やはり記述されていない(ルールにない)ということは、肘つき食事が「下品な行為」だと昔から認識されていたのではないでしょうか。もちろんマナーは時代によって変化するものです。近年では、小笠原流が携帯電話を使うときにマナーを新たに流儀に組み込んでいますが、時代の変化とともにマナーや礼儀作法というのは変わっていくべきだし、変わらなければならないと思います。しかし、私は少なくとも「肘つき食事」が、それ以前からマナーとして認められている証拠がない以上、これらのマナーは日本人のマナーとして護り続けていくべきものだと思います。