私達は眼によって自分の周囲の状況を判断し見える方向に
運動する事が多く身体を移動させる時は見えた方向に
地面や床を押して進む傾向が有ります。
その為新たなる場所に移動する時は足で床を押して
全身を推し進めていると考えがちです。
身体の向きを向かう方向に定め少し前傾に成る事で
重心を動かしやすくする事に因って次々にステップを
目的の方向に振り込んでいると考えています。
実感としてはゆっくり歩く時はさほどではなくても
早歩きをしたり走ったりすると地面や床をしっかりと押し
歩幅を広げて移動していると思っている人が多く
何の疑問もなく当たり前のごとく生活しています。
それ故社交ダンスを踊る時も陸上のスポーツをする時も
この運動機能を高めれば自然に目的のパフォーマンスが
出来ると信じて疑いません。
その様な気持ちで社交ダンスのステップやスポーツの
前進後退運動を行おうとすると思いとは裏腹に
全く思い通りにならない自らの身体に愕然としてしまい
能力や才能の無さと思いこんでしまう事が有るのです。
この床や地面に対する身体の筋肉運動は外見とは違った
あらゆる哺乳類の身体に共通の運動をしている事を知ると
この迷宮にはまり込む事無く楽しい社交ダンスが誰とでも
思うがままに踊れるのです。
私達の身体は誰しも例外なく筋肉の緊張弛緩によって体形が
保たれ様々な運動表現が出来るのですがこの運動には一定の
法則が有ってその動きに則って動きさえすれば普段の生活の
運動の様に苦労せず楽しい踊りを演じる事が出来るのです。
筋肉の特性として収縮は得意ですが伸ばす事は苦手です。
この事は生物の原始反応として縮む時は素早く伸ばすときは
ゆっくり行われる事からも解ります。
その為伸ばす行為を素早く行うには強い意識が必要です。
社交ダンスの運動表現としては筋肉の収縮を利用して足腰を
曲げる事は優しいのですが伸ばす行為は難しいのです。
つまり立ち止まっている時から床を押して身体を推し進める
というのは苦手で有り運動の始まりは立脚に重心を集める
収縮運動から始まる事が望ましいのです。
中間バランスを取り前後どちらかのフットで床を掴まえ
重心を引き寄せる動作から始まると思い通り音楽に乗せ
フィガーを演じ始めることが出来るのです。
スタートで両足を揃え開脚してからステップを踏もうとすると
まず立足で床を押して筋肉を伸ばす行為が必要と成ります。
例え足を広げても重心が次のステップに移らない事から
床を蹴る必要が出て来ます。
引き寄せられた重心は上体のローテーションによって始まった
下肢の運動でひとりでに次の中間バランスまで床を押す運動に
変わって行き音楽表現が途切れる事はありません。
何故社交ダンスのみならず陸上のスポーツは両足を開いて
運動を始めるかの理由でも有ります。
初心者が行うような両足を揃えた状態から音楽を聴き
床を押して開脚する運動は常に床を蹴って踊らなければ
ならないだけでなく上半身と下半身の運動表現が繋がらず
思い通り踊れない大きな原因と成ってしまいます。