スタンダードダンスを踊る時、男女がお相手を右サイドに置いて
ボディの右前方でコンタクトしますが、この意味は、ボディ
コンタクトの方法と言うより、男女が互いに近接してレッグを
前方にスウィングした時お互いに膝がぶつからない為であり
スタンディングポジションにある時、またダウンして互いに
重心を低くしてレッグコンタクトを行った時に、互いの右膝が
お相手の両足のにスムーズには入れる為でもあります。
男女がスクウェアポジションでコンタクトした時、お互いの膝が
向かい合ってしまい、ぶつかりそうで腰を引いている方が
見受けられますが、膝が曲がり合って重心が低くなった時は
男女の四つの膝が滑らかにかみ合う事が大切です。
ただ、まっすに膝を入れようとしてもすぐに腰は抜けてしまい
かえって滑らかなスウィングを無くしてしまいます。
ホールドと同じく下半身のレッグコンタクトもナチュラルと
リバースの正しい回転によって自然にお相手を邪魔する事
無く自由に前後にスウィングする事が出来るのです。
所で、上体のホールドの使い方が良くない踊り手がとても
多く見られます。
ただ、両腕を固めて大きな形を作って踊るとても不自由な
上体で踊っているペアが少なく無くて、その踊り方は遠い
40年以上前の高度成長期の世界のエキスパートの
外見だけ真似した昔の踊り方であり、男女にとって
負担は増えても楽しく踊る事は出来ません。
当時、日本を代表する踊り手が、両腕に女性をぶら下げ
びくともしないと自慢した事がありましたが、この姿を見て
欧米の踊り手達は苦笑しました。
上半身を固定して下半身だけを動かすと言う身体の機能を
全く無視したジャパニーズダンスは今でさえも多くの踊り手の
上達を阻み、自由に思うが儘の踊りをする希望を失わせ
沢山の踊り手に社交ダンスを諦める理由を作っています。
両腕の使い方の基本は、両腕で相手を捕まえたり手具を
持ったりするスポーツと同じで、両腕で左右に同時に動かすと
脊椎が捻じれてしまい、初心者のゴルファーと同じく、正しい
円運動が出来ません。
上体を左回転する時は、脊椎の左半分の肩甲骨を
主体とした左上体を後方に回転させる事が大切で
この時右サイドは左サイドが導く運動にフォローするだけで、
同じように右前方に回転させてはいけません。
むしろ左サイドが回転し始めたら回転しないで止めている様な
感覚です。
野球やゴルフで右利きの人がバットやクラブを振る時
右腕は出来るだけ前方に回転しない様に止めているのも
脊椎を中心とした正しい左回転を作る為でもあります。
特に右利きの男子に多い右手で女子を左方向へ運んだり
回転させようとして回転軸が捻じれ、ホールドが崩れたり
パートナーのバランスを失わせたりしがちです。
この様な両腕を間違って使いがちな為、昔は初心者に
最初から両腕を固めて踊らせたのですが、その踊り方が
日本人の踊り方の典型と成って今も残っているのです。
正しい回転運動をすると、男女が自然にコンタクトし
重心も自然にムービングフットの上に移って行く事から
お相手を押したり引いたりする必要が無くなります。
つまり、とても柔らかいホールドでお相手の運動表現を
しっかりと感じながら踊る事が出来るのです。
外見的には崩れない様に維持しているように見えて
正しい踊りをしている人のショルダーはとても柔らかく
組んでいても気持ちが良いものです。
上手と思われる踊り手のホールドは、ぶら下がっても
崩れないのではと思われる程硬直している事が多く
運動表現によって美しい端正なホールドが出来る事を
知らないで苦労して身に付けた古い踊り方と思われます。
あらゆるスポーツのエキスパートの上体はとても柔らかく
必要に応じて全身が鞭のように強いバネと成って
魅力的な運動表現と成ります。
柔らかくして演じているのではなく、目的の運動をする為に
全身の筋肉が繋がる様に成っているだけの事です。
上体を固めないで全身を繋げて踊る基本が身に付けば
どんな踊りも楽しめるだけでなく、足形やルーティンに
囚われた頭の中の知識を再現するだけの踊りから
卒業出来ます。
自分の身体はどの様に動きどの様にお相手と繋がり
音楽表現をするかと言う社交ダンスの基本を習う事が
いつまでも社交ダンスを楽しむ秘訣でも有ります。