顔を上げて踊っているのでは有りません | 社交ダンスはヒップホップよりやさしい

社交ダンスはヒップホップよりやさしい

学校教育におけるダンスと言えば,ヒップホップが主流となっていますが、社交ダンスは二人で助け合って踊ることにより誰でも覚え易く、技術とマナーが自然と身に付きます。
子供からご年配まで、踊ることにより相互理解が得られる、素晴らしい芸術的スポーツです。

社交ダンスを美しく踊っているエキスパートを見ると

男女共に顔を上に向けて踊っている様に見えます。

また、クラッシクバレーや新体操と言った音楽表現を

目的としている芸術的スポーツも演者を見れば

顔を上方に向けて華やかな表情で踊っているのを

見る事が多いです。

 

その為、社交ダンスを習うと、ステップや運動表現と共に

顔を上に向けて踊る様に指示される事が多いです。

確かに顔を上げ口角を上げてにこやかに踊っていれば

見るからに楽しそうに見えますが、その表情が、本当に

心からの自然な笑みで有るかと言えば、単に外見的な

作られた演技である事が少なく有りません。

 

この顔を上げて踊っている様に見えたからと言って、

顎を上げて笑って踊ったとしても、外見を気にする人や

誰かの真似をする事が多い方は何とも思わなくとも

ペアの心の様や音楽表現を感じたいとする人にとっては

非常に不自然な動作に見えてしまいます。

また、多くの観客にとっては、特殊で誇張した演技となり

豊かな芸術性や人間性を感じられません。

 

この顔を上げている様な動作も、実は、頭骨の位置を

正しく脊椎の上に置き、左右のショルダーが下半身の

運動を表現として上方に伝えようとすると、筋肉の連動で

自然に目的の方向に顔が上がるのです。

ただ上方を見上げて笑顔を作っているペアの場合は

左右のショルダーの動きは、ボディとは全く関係なく

肩口から単独に動いていて感情の繋がりは無く

単にルーティンを間違いなく演じているに過ぎません。

 

もちろん、顔を上にあげて演ずる意味も有ります。

全身運動をする時、頭の位置を脊椎側に置けば

ボディの左右の動きが滑らかに成り、下半身の運動も

反射的に成るからです。

演者が顔を上げてにこやかに入場してくる場面は

外見的な演出も有りますが、踊る以前から身体の中心を

しっかりと感じ、ボディが思い通りに動く為の準備でも

有るのです。

 

しかし、ひとたび全身の運動表現が始まると、そのまま

顔を上げて踊り続けると非常に不自然に成ります。

つまり、顔が上方に表情を伴って向けられるのは、

ボディからの運動が繋がっている事が大切なのです。

下半身から伝わったパワーが、ボディを通り、左右の

ショルダーの演技と成ると共に、頭が上方に伸びる

役割もします。

しかも、左右のショルダーから指先までの上方への

演技が行われると、肩の筋肉に同調して首周りの

筋肉が引き上げられ、演ずる方向に顔が向けられます。

ボディを伴ったショルダー表現の延長上を見上げる

その姿が顔を上げている様に見えるのです。

 

身体の運動が指し示す方向に見上げる事から、

演者の思いがしっかりと見ている人に伝わるのです。

上体が様々な方向に力を伝える事に因り、視点は

前後左右360度空間を豊かな表情で動きます。

見ている人にとって一番の印象は表情ですから

顔を動かしている様に見えてしまうのです。

初心者ならまだしも、いつも顔を天井に向けて

意味なく踊っている様では、心と身体が繋がらず

豊かな感情表現は育ちません。

 

人の印象の9割は顔に集中すると言われます。

如何に自然で感動的な表情と成るかは、

しっかりと見えるもの聴こえる音楽、そして触れる

お相手を感じると共に、心と身体から伝わった

表情を自然に創り上げる事が出来るかで決まります。