社交ダンスの踊りを見ていると、ペアの技術の良し悪し
に関わらず、日本人の踊りと欧米人の踊りには、
かなりの違いが見られます。
もちろん技術的には日本人のレベルは世界のトップクラス
と言えるのですが、ペアとして醸し出す雰囲気は、容姿が
違っているとは言え、それ以上に異質のものを感じます。
プロのトップクラスの踊りであったり、国際的な選手の
創り出す魅力的な音楽表現は、個性の違いは在ると言え
日本人と欧米人の踊りに差は感じられません。
しかしながら、アマチュアの多くの踊り手達やベテランの
踊り手達には、日本人と欧米人と言うより、社交ダンスの
踊り方そのものに根本的な違いが感じられるのです。
やはりこの違いは、踊る時の男女の考え方の違いに
端を発している様で、日本人の社交ダンスには、
男子が常に主導権を握っている、女子に踊り方を
常に指示している様な雰囲気が有るのです。
この事は、社交ダンスのレッスンを初めて受ける時から
男女の立場が決められている事に起因していると言え
日本人の男女の立場をそのまま反映している様にも
感じられます。
特に目立つ表現は、流れる音楽リズムが男子に在り、
女子は音楽とお相手の運動に遅れて踊っている様に
見えてしまうペアが多く、音楽リズムを自ら取れない
自分の意志で音楽表現が出来ない女子が多い事です。
中には、ただ男子にフォローして付いて行けば上手に
踊る事が出来ると言うベテランの女子もいて、
フォローの意味を勘違いしている方が少なくありません。
そもそも社交ダンスは、女子を守り楽しく踊れる様に
エスコートするように男子の踊りが作られていて
高いヒールの靴を履いても自由に踊れる様に
ステップも運動表現も進歩して来たのです。
音楽の素晴らしさを踊りだけでなく華やかな衣装を
身に付ける事でより豊かに表現できる様に男女共に
ステップや運動表現が進化して来たのです。
言わば社交ダンスの男女の立場の違いは、
音楽バンドと歌手の関係と同じなのです。
美しい衣装を纏い魅力的な歌を歌う女子を
男子は陰ながら支える楽団と言えるのです。
女子が最高のパフォーマンスが出来る様に
最も的確な方向にエスコートし女子の演技が
より豊かに成る様にあらゆる方向から助けるのが
男子のジェントルマンとしての役割です。
黙って俺について来いと言った古い体質の日本社会の
男女関係では上手に楽しく踊れる訳が無く、外見的にも
隷属的な女子の姿はどんなに美しく着飾っても違和感が
漂ってしまうのです。
かと言って、女子は思うが儘に身勝手に踊っていいと
言うものではなく、自分を助けてくれる男子がより適切に
運動表現が出来る様にフォローしなければ成りません。
女子は、男子が男子の役割をスムースに出来る様に
男子の思いを深く感じ取ってヘルプする事が大切であり
その姿が外見的には男子にしっかりとフォローしている様に
見えるのです。
男子は、女子がより豊かな表現が出来る様、無理やり
動かしたり表現させたりしないで、女子が自らバランスを取り
音楽表現の中心になる様に踊らなければ成りません。
男女其々の外見的運動表現は、自らの踊り姿を作っている
と言うのではなく、お相手に対するサポートアクションである
と言う事です。
男女其々の形は、お相手のどの様な運動に対して行っているか
と言う理由が有って初めて作られているのであって、自分自身の
ボディシェイプを勝手に作っているのでは有りません。
多くの社交ダンスの表現は、何故そのような形に成ったのか
何故そのように動いたかの理由がお相手の運動表現に在ると
言う事が説明できなければ成りません。
頭の中の記憶に在る形や運動表現の再現で有ってはならず
社交ダンスの音楽表現は、常に反射的に作られているのです。
対戦型スポーツの様に、お互いに何が起こるか解らない
のではなく、ステップもルーティンもある程度想定出来る事から
例え反射的に行うとしても難しくは無いのです。
スタンダードダンスのコンペを見ていると、テクニックだけでなく
女子のロングドレスの動きを見ていると、二人の立場が
良く解ります。
女子が主体と成って音楽表現をしていると、ロングドレスが
美しく円形に広がりますが、男子の周りを女子が踊っていると
ロングドレスのすそが男子に巻き付いて、円形に広がらず
更には大きなスウィングが生れません。
素晴らしいペアの踊り手は、女子に音楽表現が豊かに感じられ
女子の表現をより魅力的にする為に働く男子の力強いボディ
ラインが目に付きます。
男子の力で女子を引っ張っている様な踊りは過去のものであり
現代社会に於いてはハラスメントに過ぎません。
また、女子も男子に重労働をさせて、お相手の気持ちが
理解できない様では、大人の魅力的な女性とは言えず、
いずれ男子の思いも萎えてしまいます。
社交ダンスを上手に踊るには、誰にでも共通のマニュアルを
覚えるだけでなく、自分の身体に備わっているお相手を
楽しく喜ばせる機能を育てる事が大切です。
素晴らしいステップや運動表現を思うが儘に使えるには
男女の機能の違いと使い方に熟達する事が一番大切です。
自分の身体はどの様に動き、どの様に動かすと気持ちいいのか
ステップやテクニックを覚える以上に知る事が重要です。