社交ダンスは、非常に華やかな踊りで有り、誰もが
その外見に囚われがちですが、その美しさの価値を
作るのは、男女二人がお互いに相手の思いを感じ取り
音楽を通じて見ている人達に示した結果であることが
とても大切です。
何処からか見つけてきたような、誰かの真似である様な
外見と中身の差が感じられる踊りは、どんなに華やかでも
直ぐに感動は消え去り、印象に残らない踊りとなって
しまうのです。
もちろん、上達していく過程においては、素晴らしい踊りを
真似て踊る事は大切と言えますが、その目的が、あくまで
自分達が作り出す感動の世界を生み出す為の手段で
無ければなりません。
昔から日本人は器用で有り、先進国の豊かな生活を真似
高度成長を遂げてきたのですが、いつまでも人まねでは
どんなに素晴らしい踊りを見せても、心は本当には
満足しないのです。
感動的な踊りとは、唯一無二のペアの運動表現で有り
その時の音楽と二人の心から生まれないと、本当に
心から社交ダンスを楽しめないのです。
所が、多くのペアをレッスンしてくると、ペアの目的が
与えられたルーティンやテクニックを間違いなく
見た様に言われたように繰り返すことに終始していて
自分達の踊りの答えが、常に教える側の考えであったり
目指すエキスパートの表現であったりしています。
誰もが求めるもので有り、例え審査員であっても
踊りの良し悪しをその時代のエキスパートの踊りと
する傾向がある事から、いかに上手に真似るかが
ペアの能力とする事からも、いつまで経っても
ペアの満足する踊りとはならず、上手と言われる
踊り手の踊りは、どのペアを見ても同じ表現で有り
同じ表情を見せようとしているのが目につきます。
人間の運動表現や感情表現は、千差万別で有り
その豊かな感情表現が個性を生み、人としての
魅力ともいえるのです。
例え、どんなに美しいからと言って、同じ表情や
運動表現をしていれば、見ている人からすると
違和感と言うより不気味さを感じることも有るのです。
社交ダンスを見た多くの方が、美しさだけでなく
近寄りがたい違和感を感じてしまうのも理解
出来ます。
発展途上の戦後社会であるならばいざ知らず
日本人の心も成長し社会も個を重要視する中で
借り物の表情や運動表現では、踊る人も見ている
多くの観客も魅力を感じなくなってしまうのです。
外見的な美しさ以前に、二人の間に信頼関係があり
踊る事の喜びが無ければなりません。
しかしながら、多くの踊り手が、自分自身の身体を
反射的に動かす方法を知りません。
ただやみくもに下半身の力を使ったり、見たような
運動表現をしてみたりと、常に自分の事しか
考えられず、お相手や音楽の事を考えられない
社交ダンスとは程遠い踊りとなっているのです。
社交ダンスを踊ると言う事は、自分の身体から生まれた
普段の生活と同じ反射機能で踊る事が大切です。
つまり、どんなに難しいステップや運動表現でも
持って生まれた身体の機能を知っていれば、
常にお相手を気遣い、音楽を楽しみながら踊れます。
記憶力に頼り、与えられたステップを間違いない様に
踊る、まるで受験勉強をするような踊りを踊っていて
本当に楽しい踊りが踊れる訳が有りません。
素敵なお相手と素晴らしい環境、そして魅力的な
音楽が流れていれば、本当に思うが儘踊れるのです。
難しいステップやルーティンを使わずとも、お相手と
音楽に反応して動く身体は、最高の社交ダンスの
醍醐味を感じさせてくれるのです。
本当の自分の身体の使い方を知らず、何本も
高額のゴルフシャフトを買い続けるように、新しい
ステップやルーティンを求め続ける踊り手が
実に多いのが現状と言えます。
社交ダンスを踊る為の基本は、誰にでも理解でき
練習することでどんなステップも運動表現でも
無理なく踊ることが出来るのです。
難しいステップや種目を踊っているから上手に
踊れていると思っている方は、高価なゴルフクラブを
買い続けているだけで一向にスコアーが上がらない
自称名人のゴルファーと何だ変わりません。
しかし、ゴルフは、一人でしますけど社交ダンスは
二人でコンタクトして踊る事を忘れてはなりません。
どんなに素晴らしい先生について踊らせてもらっても
自分の技術が上がったとは言えないのです。
二人共顔で笑って心で泣いているような踊りに
ならない様、本当の楽しさを感じられる社交ダンスを
習われることを切に願いたいものです。