華やかな衣装を身にまとい、満面の笑みで演ずる女子の姿は
芸術的な美しさもさることながら、心からの気持ちの現れと
言えなければ、社交ダンスの表現とは言えません。
その為には、作り物の笑顔、外見的に美しく見える様な
テクニックや演ずる為のノルマで有っては成りません。
しかしながら、踊っている女子の心境は、必ずしも、心から
演じているという訳ではなく、演技として要求されるから、
楽しく踊っている様に見せれば男子が喜ぶから、と言った
本心からの踊りでない事が多い様です。
踊っている場以外で聞こえて来る女子の声の中には、
男子の機嫌を損ねない様に、出来るだけ要求に応じる様
頑張っていると言う女子が少なくありません。
確かに、それでも踊りは楽しいと言いますが、常に自分からの
感情表現と言うより、リーダーからの指示によって求められる
ステップや表現を行っていると言う女子が多くいます。
もちろん、女子が、男子を無視して勝手に踊っては成りませんが、
男女には其々役割があり、少なくとも、男女のペアに於いて
女子の心の中に不自由さが有ってはならないのです。
所が、日本で踊られる社交ダンスは、国民性なのか伝統か
女子が常にリーダーが思う様に踊る事を要求されます。
つまり、リーダーのイメージ通り踊る事が女子の役割であり
女子も、嫌われたくないが為に、黙って付いて行くと言う
常に男子が踊りの中心と成っているペアが少なく在りません。
もし、社交ダンスの長い歴史の中で、男子を中心にした
テクニックや運動表現が創られて来たとするならそれでも
良いのでしょうが、実際は、ヨーロッパに於いて、女子を、如何に
美しく踊らせるかと言う目的の元に発展して来た事から
男子が中心となる社交ダンスは、あらゆる運動の場で、
常に、女子に不自由な踊りが要求され、その事で上手く踊れない
女子を、男子が力任せに、自分の思い通りに踊らせようと
している状況が生まれています。
男子のリードとは、女子がより美しく自由に演じられる場に
周囲の環境をシッカリと把握しながら導く事を言い、
男子の踊りに従わせるのではありません。
むしろ、演ずる方向が決まって、女子が音楽表現をするのを
一緒に追随してより豊かな表現になる様にエスコートする
と言うのが男子の大きな役割です。
その為、女子の立ち位置に対して、男子がどの場所で
女子の踊りを助けるかが重要であり、しっかりと女子の踊る場所を
考えながらステップを踏む必要が有ります。
その為、例えば、ラテンアメリカンダンスに於ける男女のステップは
音楽に対いて同じタイミングで動くのではなく、女子の滑らかな
音楽表現に対して、男子は、女子のステップが振り込まれ
次の位置が決まる瞬間、一番女子を美しく踊らせる場所に
ステップする為、女子のフットスピードよりも遥かに速いスピードで
音楽リズムを奏でます。
つまり、男女がステップした瞬間は、音楽リズムに合いますが、
女子が十分な体制で、ボディ表現を行ってステップを準備できるまで
上体に依るエスコートを行ってから、音楽リズムと女子のステップ
リズムに追いつきます。
所が、多くの日本の踊り手は、男子がステップを踏んでから、女子が
遅れてステップを踏んでいるのが実情です。
つまり、女子は、常にリズムに遅れていると言う事です。
音楽表現をする女子がリズムを外すようでは、当然、上体の表現は
違和感のある演技と成ってしまうのです。
スタンダードダンスに於いても、日本の踊り手の多くが、
男子のステップに女子が反応して、遅れて体重を乗せる事から、
重心が足の上に乗らず、重くて遅い音楽表現と成っています。
特に、初心者や、余り上手く踊れていないペアは、決まって、
女子が音楽から遅れ、男子が送れる女子をホールドの力で、
リードと言う名の元、男子が引っ張っているのが見られます。
必至に自分に付いて来る女子は、男子にとって健気に感じて
魅力に感じるのかもしれませんが、女子の心の中は、
もし躍りでなかったら、すぐさま分かれてやると心の底で
思っている笑顔の女子が居る事を男子は忘れてはいけません。
所詮男子は、女子の笑顔や心無い浮いた言葉に簡単に
騙される傾向が有ります。
女子からすれば、とても楽しそうな笑みの奥で、握りこぶしを
握っている事も有るのです。
女子が本当に満足して踊る時は、偽物の表現とは似ても
似つかない、とても美しく魅力的なその人にしかない表情をします。
偽物の笑みで満足している様では、本当のリードは覚束ないもので
いつまで経っても、満足できる踊りを演じる事は出来ません。
本当に女子から心から慕われるには、女子の本心を満足させ
男子の思い通りに動きたくなる様な踊りをしなければなりません。
男子は、10人の偽りの笑みに騙されないで、一人でも本当の笑顔を
自分に向けてくれるお相手を育てる事が大切です。
黙って俺について来いと言った、旧態依然の社交ダンスを
踊っていては、女子の能力を出させる事は出来ず、
敷いては、男子に対する心からの信頼も尊敬も得られないのです。