パーティが終わって | 社交ダンスはヒップホップよりやさしい

社交ダンスはヒップホップよりやさしい

学校教育におけるダンスと言えば,ヒップホップが主流となっていますが、社交ダンスは二人で助け合って踊ることにより誰でも覚え易く、技術とマナーが自然と身に付きます。
子供からご年配まで、踊ることにより相互理解が得られる、素晴らしい芸術的スポーツです。

連休の初めに、恒例の春のパーティを執り行いました。

開教以来、30年が過ぎ、毎年の事ながら、夏を前に

生徒の発表会は盛り上がります。

出席される方々も毎年の顔なじみで有り、生徒達の家族も

大人から子供まで、飲んで食べて踊って、楽しいパーティを

過ごします。
教室が長くなると、さすがに、当初の中高年の方は、
誰もが後期高齢者と成り、子供達や孫が来る時代です。

しかしながら、高齢となっても、音楽が鳴ると、誰もが
目が輝き、かつてと変わらないエネルギッシュな姿で

また若い頃に戻っているかの様なはしゃぎ様です。
当教室の生徒のみならず、様々なサークルなどで

習っている方々も参加されているとあって、
パーティは、いつも同窓会の様に賑やかです。


とは言うものの、何十年も多くの方々の踊りを見てきて、
いつも思う事は、どうして、そんなにも苦しい踊を踊って

いるのだろうかと言う事です。
毎回、殆どの方と触れ合うのですが、どなたも、
異常と思えるほどの緊張です。

 

私と踊る事に依る緊張ではなく、音楽を演ずる身体が
非常に不自然で、笑顔の中に、身体から伝わる

音楽と相手とは関係ない不自然な運動が気になります。

当然、音楽の捉え方も、相手とのやり取りも感じられず

ただ、必至に自分の記憶と格闘している様です。

 

中には、元競技選手と言う方も居て、さすがに
運動機能も、身体の強さも別格と言えるのですが、
残念ながら、全ての部分に、注意が払われているものの

ほとんどの部分が音楽的に繋がらず、更には、目の前の
相手に対するセンスとして動いていません。


ステップも間違うことなく、これまで習った正しいと思われる

運動表現を一生懸命するのですが、やはり、自分の身体と

記憶の確認に過ぎず、誰と踊ってもこの様に踊っていては

社交ダンスとは言えず、特定の相手としか踊れない、
不自然で不自由な踊りと成ってしまいます。


しかしながら、やはり問題は、中高年の方々の、硬直した
不自然な踊りで有り、二足歩行のウォークの基本すら

出来ていない方が非常に多く、自分が普段どの様に

歩いているのかも解っていないと思われます。

 

私たち人類は、地上で行うあらゆる運動に、下半身を使った
ウォークを使っています。
この事は、多くの方が行っているウォーキングの運動と同じで、
その延長上にジョギングが有り、徒競走が有るのです。

地上で行うスポーツは、この前進、または後退運動の力で
様々な運動表現を生み出しています。


もちろん、社交ダンスとて同じであり、スタンダードダンスと

ラテンアメリカンダンスのウォークが出来ないと、社交ダンスは

上手に踊れないのは事実です。

しかし、このウォークがどの様に行われ、音楽的にどの様に
演ずるか、更に、様々なステップが形作られるかを知らないと、

足形をいくら覚えても、思う様な運動表現には成らないのです。

 

大切な事は、ウォークや各ステップは、足形を覚え、その上に
体重を乗せて行くのではなく、ステップからステップへの

重心の移動が有って、その結果ステップが生れるのです。
つまり、前進後退時に、しっかりと重心が移動できなければ、

足形だけ動かして、立ち足で踏ん張ったり蹴ったりしても

何の効果も無く、むしろ、運動表現を損うだけなのです。

 

様々な方と踊ると、まず、自らの重心が動いていないで
下半身のステップが移動する事にしか神経が働いていません。

歩幅に関係なく、滑らかな重心移動が出来なければ、

音楽表現も豊かなパフォーマンスも出来ず、その結果、
コンタクト面を通して、相手に重みや緊張感を与えるのです。


どんなに脚力が有る人でも、スムーズな重心移動が成されないと

単に暴れた運動と成ってしまい、お互いのトラブルの原因に
成ってしまうのです。
多くの方と踊ってみると、自らの重心が自分が決めたステップに
乗らない事に依り、常に相手に強い力と重みを与えてしまい、

自らも踊り辛くなっています。

 

足形や外見は目に見えるのですが、重心や体重は解り辛く
どの様に感じて踊るかを習わなければ、上手く体重が動かず
常に足形に気を使って踊らなければならず、その度に

コンタクトを取っているお相手に負担をかけるのです。

 

何故、上半身を緊張し、足形を間違わない様に気遣いながらしか

踊れないかと言う理由を知らなければなりません。

しかしながら、残念な事に、グループレッスンを行うと、毎回

この大切な基本を知っている方がほとんどいない事に

驚かされます。

 

先生が面倒で、教えないのかもしれませんが、競技会などで
名を成した先生に習っていても、聴いたことが無いと言う方が
何人もいるのには、驚かされると共に、アマチュアの方々の
苦難が無くならない理由が解ります。

 

社交ダンスは、人間の身体と心の基本を習う事が大切です。
その為に様々なルールが有り、ステップや運動表現が有ります。

特定の人と一生踊り、他の人とは踊らないと言うならいざ知らず、
様々な方とコンタクトして音楽を表現するとなったら、
誰にでも通用する基本を知らなければなりません。

 

何故、身体やボディを触れ合いながら踊るかの意味を知る事と
自分だけの身勝手な考えで踊っていては、お互いに
いつまで経っても、社交ダンスは楽しく踊れない事を

知っていなくてはなりません。

 

大人も子供も、全ての世代に通用するマナーを学ぶことが
社交ダンスの最大の目的でもあるのです。

人間としての心の豊かさに裏打ちされた社交ダンスを踊れば、

誰と踊っても感謝され、お互いに楽しい思いが出来るのです。