SNSの発達により、世界中の情報が瞬時に解り、
私達の生活もより一層便利に成りました。
それにつれ、社交ダンスの世界も、欲しい情報が
簡単に手に入る様になり、誰もが、様々なテクニックや
運動表現が視覚的に理解できる様に成りました。
その為、愛好家の中には、プロも驚く様な知識を持ち
様々なステップや技術を駆使して踊っている方が
多く見られる様になりました。
とは言え、現実の踊りは、どれ程進歩したかと言えば、
残念ながら、かつてSNSが無かった頃よりも、遥かに
後退していると言わざるを得ません。
外見的には華やかで美しく見えても、二人の間には
より一層その形と運動を維持するための、不自然な
運動とストレスが感じられ、素晴らしい音楽を感じて
2人が共に、心から楽しく踊っている様に見えません。
同じような感覚で踊っている方々からすると、素敵で
憧れの踊りに見えるかもしれませんが、プロの目
と言うより、一般の社交ダンスを知らない方から見れば
極めて異常で異様な踊りに感じてしまいます。
問題は、 例え、世界のトップクラスの情報であっても
その事を、人間の持つ共通の運動機能や、音楽表現
更には、男女の関わり合いを通じて生まれた知識として
理解していないと、素晴らしい情報の1%も体得できず、
やはり外見の真似事に終わってしまうのです。
かつて、私達が社交ダンスを始めた頃は、
社交ダンスの情報を得る事は非常に難しく、ビデオが
出回ってきたとはいえ、殆どの場合、踊りながらの
手探りの状態であったと言えます。
その為、一番の練習は、対人的なレッスンを通じ
目の前のパートナーの運動表現を常に感じながら
踊る事が中心でした。
男女共に、常に、相手の動向を気にして踊る事で
その日のコンディションに応じて、踊りを変化する
社交ダンスとしての大切な技術が習得出来ました。
その為、自分のパートナーとだけでなく、誰と踊っても
瞬時に相手と合わせられる能力は、踊る人は
誰でも持ち合わせていたものでした。
現代と比べて数少ないステップやフィガーであっても
それを様々に使い分けて、誰とでも踊る事が出来、
踊ながら、様々な感情のやり取りが出来ました。
比べてみると、今や、私達がかつて知りたかったことが
全て、しかも、様々な世界一流の方々の情報が、
居ながらにして手に入ります。
その為、アマチュアの方の踊るステップもルーティンも
驚く程華やかで豊かな表現と成りました。
しかしながら、そんな踊りをする方々をレッスンすると、
驚くべきことが解ります。
多くのペアが、かなりのキャリアが有る方々も、
男女其々が、お互いの踊る順番やステップを決めて
あげなければ踊れません。
その場で、関連した同じようなルーティンに変えようとすると
男女共に丸々覚えないと踊れません。
増して、例え同じルーティンであっても、踊るフロアーの
設定を変えると、全く踊れません。
全て習った様に記憶した様にしか踊れないペアが多いです。
社交ダンスは、非常に柔軟性のある踊りであり、例え、
周囲を囲まれても、部屋の形が変わっても、
進行方向に障害がっても、全く苦も無く踊れるのです。
つまり、競技ダンスやデモンストレーションダンスの方が
むしろ特別な踊りと言えるのです。
かなりのベテランでも、新たなるルーティンを作ると、
全く最初から丸覚えをしなければ踊れない方々が多く
それまでの踊りが役に立っていない事が多いのです。
一を聞いたら十を知るとまでは、行かないまでも、
社交ダンスは、それまでの知識で、殆ど苦も無く
新たなるルーティンは身に付けられるのです。
誰とでも踊れる様に、社交ダンスは、どんな
ステップも、誰でも動ける運動機能で成り立って
いるのです。
一部のショウダンスの様に、特別の練習と
運動機能を必要とする物も有りますが、
殆どの方が理解でき、踊る事が出来るのが
社交ダンスの特性でも有ります。
何度踊っても上手く踊れなかったり、非常に難しく
感じられる踊りであったなら、それは、ステップや
表現の問題ではなく、貴方の運動機能を使えない
特殊な踊り方と成っている事を知って下さい。
社交ダンスで苦痛を伴う踊りは有りません。
その人の運動機能や運動能力に応じて
様々に使い分けられるのが社交ダンスなのです。