日本中の様々な場所で、社交ダンスは多くの方に
踊られていて、誰もが、楽しく美しい音楽表現を
行っていると思うのですが、実際は、床に対して
違和感を感じたり、滑る事で抵抗を感じる方も
少なくありません。
中には、床が滑るから、社交ダンスが上手く踊れ
無いと不満を言う方も少なく有りません。
もちろん、空滑りする床や、滑りが一定で無い床では
誰もが思う様なパフォーマンスは難しいのですが、
少なくとも、滑らない床では、社交ダンスは踊れない
という事実は変わりません。
しかしながら、滑らない様にしっかりと床を
つかまえて踊れば、上手に踊れると思っている
方々も少なくありません。
その為、よく滑る床で踊る時は、多少、滑りを止め
足元の安定を図る事も少なくないのですが、
滑りが悪くなると、身体の運動機能が、極端に
低下する事を忘れてはなりません。
また、中には、滑る床を利用して、まるでスケートを
する様に滑りながら踊っているペアも居て、これも
安定したボディワークが生み出せずスケートの様な
踊りに成ってしまいます。
社交ダンスは、床が滑る事が前提で作られている
ダンスであり、その事で、男女がスムーズに
ポジションチェンジをしたり、フットワークを巧みに
使い分けたりすることが出来るのです。
では、踊っている時、皆さんは、足のどの部分を
使って、床を滑る様に踊っていると思っている
のでしょう。
まさか、ボール、つまり、土踏まずの前の部分で
床を滑りながら踊っていると思っていませんか。
残念ながら、この部分で滑ろうとしている方は、
滑る床では、バランスと運動を失い、滑らない床で
踊ると、ボールが床に引っかかって、上体が
失速する事が多いのです。
しかし、この部分で滑るように踊って見えるから
ボールを滑らせる様に踊っていると信じて疑わない
と思われます。
大切な事は、足の裏の部分は、上体の運動に伴い
体重を支え、バランスの起点となると言う事です。
基本的にバランスの起点が動くと、その他の部分は
機能を果たせなくなります。
つまり、ボールでバランスを取っては居ても、
滑らせたり、立たせたりしているのは、
足首から上の部分、特に、ふくらはぎから、
背面に向かう筋肉が使われ,足首から下の
筋肉の力で床を滑らせたり摑まえたりは
していないのです。
例えば、ボールターンを例にしてみると、
ボールターンにより右方向に90度回ると
すると、多くの方が、つま先を右方向に
90度回そうとします。
しかし、上手くボールターンが出来る人は、
カカト側が左方向に90度回るのを意識し
動かす力は、ふくらはぎから、ハムストリングを
通る上体の背中側の筋肉によって生まれます。
しかも、回転の切っ掛けは、右ショルダーと
右側肩甲骨が後方に動く事に依って
始まります。
社交ダンスやスポーツに於ける運動の
説明をする時、パフォーマンスの中心となる
筋肉は、鏡に全身像を映して、映っていない
背中側に在る筋肉だと言う事が有ります。
上手く踊れなかったり、スポーツが苦手の
方々の多くは、腕力と、前側の筋肉を使い
常に、バランスを失いながら動いています。
腕の力や大胸筋、腹筋、更には、太ももの
前側の筋肉は、どちらかと言えば、
背中側の筋肉に比べ繋がり難く、其々
バランスを助けるために使った方が
上手く踊れるのです。
力強い背中側の運動で、ボール、並びに
トウで立った時、支えている指先のバランスを
保つ為に足首から下の筋肉や前面の筋肉は
使っても、動く時は、常に背面の筋肉を使い
上体と下半身を繋げる方が、スポーツや
社交ダンスを全身で楽しめる人と言えます。
社交ダンスのみならず、あらゆるスポーツは
如何に背中側の筋肉で四肢に運動を伝え、
目的の運動表現に出来るかが大切です。
様々なパフォーマンスは、見る側からすると
スポーツの外見的特性に注目しがちであり、
人の身体に共通する運動機能を見失いがち
と言えます。
特に社交ダンスは、誰とでも踊れる様に、
長い年月をかけて作られて来ました。
私達が、生まれて歩き始めた時から育てた
身体の運動機能を使えば、誰でも楽しめ
言葉よりも遥かに気持ちが通じる事も
多いのです。
口で説明する何十倍も自分の思いを伝え
更には受け取れるのが社交ダンスです。
単に、足形や踊り方の説明を覚えても
自分自身の心と身体を成長させる事は
出来ないのです。
習ったテクニックや運動表現を見せる事で
社交ダンスが踊れていると思っていると、
外見だけの、直ぐに飽きてしまう踊りと成り
自分達も直ぐに新たなる道具が欲しくなり、
お互いの気持ちが成長する事は難しいです。
身に付けた社交ダンスのテクニックや
運動表現で、お互いの心に喜びを
与える様に出来てこそ、初めて、誰もが
納得する社交ダンスになるのです。