ゴルフや野球をする時、更にはテニスをする時も
コーチャーが注意する共通の言葉に、肩を抑え
運動時に肩が上がらない様にしてプレーする
というのが有ります。
社交ダンスに於いても、多くの方が踊っている時
肩が上がったり外れたりして、全身の運動表現を
損っている事が多いです。
その為、肩をしっかりと抑え、ボディから外れない様
ホールドを一定の形に保つように踊ります。
しかしながら、どんなに肩を抑えても、ホールドは
崩れ、上半身に異常な力が入って踊っている
多くのペアを見かけます。
その為、コーチャーがは、出来るだけ肩の力を抜いて
リラックスして踊る様に言います。
所が、リラックスして踊っても、やはりホールドは
緊張して次第に崩れて行くのが常と言えます。
肩を上がらない様に固定して、堅くならない様に
リラックスして踊ると言う方法は、何十年も昔から
行われて来た方法であり、誰もが試みるものと
言えるのですが、その効果は、余り期待できる
ものでは無く、外見的に作る事が出来た人だけが
一見踊れている様に見えるだけなのです。
素晴らしい踊りを見ていると、肩が上がらず、
上体の形態が変わっていない様に見える事から
見た様に作り上げれば、同じような踊りが出来ると
昔から信じて疑わなかったのですが、殆どの場合
同じような形は出来ても、しょせん、どんなに動いても
変形しないマネキン人形を作っているに過ぎません。
何故、肩が静かに見え、変形しないのかという
身体の仕組みを知って、運動の方法を知っていないと
苦労ばかり多くて楽しさに繋がらないのです。
そもそも、肩と言うのは固定して使うものでは無く
日常生活に於いて肩が固定してしまったら、
私達は、一日たりとも楽しく過ごせないのです。
増して、音楽の中で、心から楽しく踊りたいのに、
肩を固定すると言う事は、両腕の機能を止められた
手錠を掛けられた犯罪者と何だ変わらないのです。
では、一体、肩が静かにしていられるには、どうしたら
良いのでしょう。
まず、肩の基本的な動きを知る事です。
難しい医学的な説明は省略して、誰にでも解る
方法で説明します。
肩関節は、非常に複雑に動き、日常生活のあらゆる
運動に応じられるのですが、その基本は、二つだけです。
1つは、ボディにぶら下がっている事、もう一つは、
肩回りの周囲筋を伸ばし、目的の方向に弾力性を持って
関節部分を広げる行為です。
小さな物を取ったり日常的な上半身の運動は、殆どが
肩関節から先の運動であり、この時、肩関節は自由に
進行方向に腕を伸ばす役割をします。
つまり、この肩回りが固定されていれば、日常生活は
殆どの場合不自由してしまうのです。
肩はいつも同じ場所でボディと繋がっているのではなく
関節周囲筋と共に伸縮しながら、様々な上腕の運動を
助けているのです。
この腕が伸びて行く時、ボディに伝わった運動は、
下半身の左右の足に繋がり、支え足と動き足の
役割を反射的に与えます。
しかし、この時は、肩関節が自由にあらゆる方向に動く為
両足は、バランスを取る様に働いて、床からの力を
身体の移動には使えません。
つまり、両肩がボディ側の関節にしっかりと収まっていないと
左右の足は上体の重みを目的の方向に動かせないのです。
つまり、肩関節を外して踊ると、下半身が反射的に動かず
意識を持って左右の足を動かさなければなりません。
走る時も、歩く時も、テニスをする時も、ゴルフをする時も
左右の足に反射的に体重を移すには、両腕がしっかりと
ボディの一部となって、上体の動きと連動しなければ
成らないのです。
しかも、腕の重みは、背中側に在って、脊椎バランスに
支配されていないと、物を持ったり、ホールドをしたりした時
腕だけの力で動かさなければならず、上体が硬直するのです。
社交ダンスを踊っている時、上体を大きく見せようと、
肩関節を広げているペアが少なくありませんが、この事で
ホールドとボディの動きは寸断され、上体は力を入れなければ
形を維持できず、下半身は、常に意識してステップしなければ
踊れなくなってしまうのです。
左右の肩がボディから離れると、下半身の動きは、上体の
バランスと形を支える為固定される傾向にあります。
外見的な形を保っても、リラックスしても、肩の役割を
知っていないと下半身と自分の運動ばかりが気に成った
不自然で息苦しい踊りと成ってしまいます。
肩はただリラックスして抑えれば良いのではなく、
背中を通して、脊椎の左右のバランスを掌ります。
上方に向かって演じられるショルダーの運動は
肩関節が柔軟に伸縮して、その運動に誘発されて
左右の足が美しいバランスと形を作る様に働きます。
また、身体を移動したり回転したりして、様々な方向に
移動して行く時は、常に、上腕の重さはボディに
感じられ、いわゆる、肩がリラックスした状態です。
左右のホールドは、一本で繋がっている様なものでなく
其々が、身体のバランスと運動を促すために使われ
片時も固定されることは無いのです。