音楽を演じる身体と見た目の身体 | 社交ダンスはヒップホップよりやさしい

社交ダンスはヒップホップよりやさしい

学校教育におけるダンスと言えば,ヒップホップが主流となっていますが、社交ダンスは二人で助け合って踊ることにより誰でも覚え易く、技術とマナーが自然と身に付きます。
子供からご年配まで、踊ることにより相互理解が得られる、素晴らしい芸術的スポーツです。

昨今、老いも若きも様々なスポーツに興じ
それに伴い、健康管理と身体のトレーニングを兼ねて
ジムに通って美しく力強い外見を作ろうとする方々が

多くなっています。
単なる痩身の為と言うより、マスコミの影響もあって

しっかりとビルドアップされた身体が好まれるようになり
最近では、男女共、しっかりと体脂肪を取り除いた

アスリートの様な身体を目指す方も多いです。


社交ダンスの世界に於いても、肉体美を誇示した

コスチュームで踊るラテンアメリカンの選手を見ると
演技だけでなく、野生的な力強さと筋肉美に、

憧れる方々も増えてきました。

かつて、社交ダンスは、中高年の方々が、健康の為

更には、痩身の為にと、日常生活を若々しく保つ為

という目的が多かったのですが、近年では、年齢以上に
筋肉質で体力や運動能力に長ける方も多くなりました。

より激しくダイナミックにと、踊り手の欲望は果てしない

と言えるのですが、本人の基礎体力や筋力は、

トレーニングの成果か、力強くなっているのですが、

上半身にばかり力が集まって、全身をスムーズに使えず

力強さが、相手に踊り難さを感じさせる事が有ります。


しっかりと運動をしているから、より美しく力強く踊れると

本人は思っているのでしょうが、意外と、バランスが悪く

しかも、運動能力が増したはずなのに、下半身が弱く

音楽性に欠ける方も増えています。

足腰もしっかりと鍛えて、それまで、トウで立つことも
ままならなかったのに、しっかりと立つことが出来、

崩れやすかったホールドも力強く形を保つことが

出来る様になっているのに、実際は、上体は更に

崩れやすく、下半身と上半身がばらばらと成って
本人の思惑と裏腹に、相手にとっても、見ている

人達にとっても違和感が増す事が有るのです。


ジムに通ったりして、体中の筋肉を鍛えたはずなのに
実際に踊るとなると、以前よりも思い通り動かず、

期待を裏切る結果となってしまう場合が有るのです。
この様なタイプは、典型的な外見を真似て踊る
自分の身体の各パーツを意思を持って動かす
踊り手で有り、基本的には、初心者の踊りと

変わりません。


もちろん、身体を鍛える事は間違ってはいません。
しかしながら、身体の各部分がどの様に関連して

繋がっているか、更には、目の前の相手とどの様に
身体の筋肉が関わっているかと言う、基本的な
運動を習っていない事と、繋がった状態で筋肉を
鍛える事が少なかったことに、トラブルの原因が

生まれて来るのです。

身体の各部分は、ギリシャ時代の彫刻に出て来る様な

美しく力強い外見であり、他人より力が強いのですが、
残念ながら、部分々のトレーニングは行っても、

その力が、全身に繋がらない事が問題なのです。

その為、自分が意識している部分を動かす時は、
非常に少ない筋肉が働くことになり、その他の
身体の部分がブレーキと成って、かえって重く
スムーズに動かなくなるのです。

トウで立つ場面は、足の床に近い部分だけが働き

上半身と全く繋がっていない場合が多いのです。

名人と言われる合気道の先生の動きを見ていると

まるで、ダンスをしている様に相手を投げます。

演武を見れば、申し合わせ的な部分も有りますが、

相手に接触した部分と自分の身体の全てが

筋肉の繋がりを持って動いているのが解ります。
力強い下半身の力が、まるで鞭の先のように

コンタクト部分に繋がり、面白い様に大男が

円を描いて投げられます。


この事は、剛速球を投げるピッチャーとて同じで

150キロの球を投げる投手の手は、とても柔らかく

合気道の名人と同じような暖かさを感じます。

しかし、どちらも、下半身は、一度動き出すと

松の根の様に人の下半身とは思えない程の
力強さなのです。

 

社交ダンスに於いても、素晴らしい演技をする

男女の足腰は、アスリートと同じくとても頑丈で
力強いものです。
しかし、コンタクトする部分は、お互いの情報を

交換する接点であり、むやみに緊張して硬く

成っていては、上手に演じられ無いのです。

 

外見的な美しさと力強さは、見ている人の感覚であり

実際の上半身は、音楽と相手を感じる為に

とても柔らかく心が籠っているものなのです。
このトレーニングは、実際に音楽と相手を感じる事が

一番であり、パートナーが何を望んでいるのかを
常に感じる能力とその時流れる音楽を如何に感じて

踊っているかで全身の筋肉が繋がるものなのです。


つまり、より豊かな音楽性と運動表現を示すには

相手に対するセンスを育てる努力が必要なのですが、

実際に練習したり、踊るとなった時、如何に二人が

音楽的に運動的に役割を果たしているかと言う
基本的な知識を持っていなければなりません。

 

自分の運動表現やステップについては詳しくとも

二人の違いと、関わり合いの違いを知っていない
踊り手がとても多いです。

外見的に上手に見えて、二人がお互いのノルマに

一生懸命なペアがとても多いです。
かなりベテランの競技選手であっても、アマチュアの

サークルの先生であっても、その事を知らなかったり

習ってこなかった方が多いのが残念です。


欧米の社交ダンスのレッスンに於いて、子供から

大人まで、どのレベルの方々も、各人の技術も

さることながら、常に、その時の相手のとの関わり合いを

反復して教えられます。
しかし、多くの日本のレッスンは、ペアで有っても
社交ダンスは個人レッスンが主体であり、男女の
完成品を創り上げる事に終始しています。

例え、外見的に美しく仕上がっても、二人を繋ぐ

心と身体のトレーニングが成されていないと、

どんなに上手く合わせようとしても、種類の違う

ジグソーパズルを合わせる様なものです。

しっかりとした力強い身体を創り上げる目的は

一体何なのか、解っていてトレーニングしないと

誰もが、ボディビルの様な目的の違うスポーツに

成ってしまうのです。