社交ダンスを踊る方を見ていると、一生懸命
身体を動かし音楽を聴きながら、間違わない様に
踊っているペアと、まるで、街中をお喋りしながら
楽し気に歩いている様なペアが見れます。
当然、殆どの場合が前者であり、時たま見られる
思わず目が追いかけてしまうペアが後者であり
見つけるとなぜかホットしてしまいます。
特に、競技会などを見ると、殆どが前者であり
踊りの楽しさと言うより、必至さと緊迫感が
伝わって来て、とても近寄れない様な雰囲気が
漂っています。
確かに、これから勝敗を決める競技会なのですから
致し方ないと言えるのですが、社交ダンスの場合
この戦いの雰囲気だけでは、本当の目的は
達成する事は出来ず、単に、採点に一喜一憂
するだけと成ってしまいます。
男女が与えられたルーティンを間違いなく、習った通り
運動表現をする事は大切ですが、お互いに、自分の
記憶を辿りながら踊っているのが問題です。
当然、二人が自分の考えを主張する訳ですから
二人の間にはトラブルが生じるのですが、何故か、
キャリアが増してくると、上半身は、何の問題もなく
同じ形を保ち、足形も間違いなく、更には、二人共
笑顔で踊っているのです。
しかし、この踊っている中身が問題です。
上手に踊れていると思われるペアの身体は、堅く硬直し
形をを維持するために、上腕の筋肉が異常に使われ
更には、運動表現は、二人の理想とする頭の中の
イメージが中心である為、見るからに不自然に誇張され
見ている人を跳ねのけてしまいます。
そう、相撲をする力士の運動の様に、二人の身体は
お互いの意志の戦いと成っているのです。
欧米の選手に見られる、自然で流れる様な音楽表現は
一体どこから生まれるのでしょう。
日本人であれば、かなりレベルの高い踊りが出来る
トップクラスの方々に見られる運動表現が、
まだキャリアが無い名もない選手や、一般の方々の踊りに
普通に見られるのです。
日本人の踊りの特性は、外見的な印象から表現を作り
人の身体が運動する時の誰もが持っている大切な機能を
理解している方が少ない事です。
つまり、かなり高度なテクニックを教える先生ですら
個人個人の身体の仕組みに関しては関心が薄いのです。
誰もが共通の外見的な運動表現やステップは教えられても
自分自身と目の前のパートナーとの関わり合いと、お互いの
全く異なった役割を押しれらえていない方が殆どなのです。
その為、メディアやネットで覚えた方も多く、お互いの運動の
伝わり方や運動機能が全く解っていない競技選手も多いです。
この事は、やはり、教える側の問題ともいえるのですが、
踊る本人達も、自分の事だけでなく、相手や音楽の事に
もっと関心を持ち、相手の動向や音楽の違いによって
柔軟性を持って自分の運動を変えられる事が大切です。
素晴らしい音楽表現をする世界のデモンストレーターは、
同じルーティンで踊っている様に見えて、毎回、全く違った
心の持ち方で、新鮮な感覚で踊っているのです。
その為、同じ様なデモを踊っている様に見えて、環境や
音楽、更には、二人のコンディションによって、巧みに
音楽表現やステップの種類を変えているのが解ります。
日本人は、世界的に見ても多くの知識を得られる環境で
社交ダンスを踊ることが出来ます。
その為、踊り手の知識は世界でもトップクラスと言え
アマチュアの方でも、膨大な知識とステップの種類を
身に付けている方も多いです。
しかしながら、多くの方が、その知識に振り回されて
自問自答しながら笑顔を作って踊っているのです。
知識を沢山持つことは素晴らしい事ですが、その知識を
どの様に使うかは、踊っている時の二人の状況と
音楽、更には環境が感じられないと無駄な運動表現が
自分達の踊りを邪魔する事と成ってしまうのです。
社交ダンスは、生ものです。
過去の記憶だけで踊っていては、踊りが死んでしまいます。
そして何より、二人がお互いを感じられなければ、
良かれと思ってする事は全て裏目に出てしまい、習った通り
踊っているのに、見た様に格好良く踊っているのに、
どうしてうまく踊れ無い、更には、点数が入らないと嘆くのです。
男女がコンタクトを取るのは、踊る為の運動表現ではなく
お互いの気持ちを量る為に必要なのです。
恋人同士として抱き合った時の肌から伝わる感触は
自分の全ての思いが相手に在ったはずです。
身体をコンタクトしているから、自分のリードやフォローは
伝わっていると思っていると、いつの間にか、相手の気持ちは
遠い所に行ってしまいます。
どの様にコンタクトするのか、どれくらいの強さで、どれ位の
柔軟性で、と答えを求める人は、相手の心と触れ合った
心豊かな踊りをまだ体験していない方です。
ホールドやボディコンタクトの感覚は、ペアによって全く違い
2人が心からお互いを関じることが出来、思いのままに
踊れるコンタクトがベストと思われます。
社交ダンスは、外見を作り合うものでは無く、コンタクトを通して
相手も音楽も環境も、五感を通して感じながら踊るものです。