男女の身体の中での役割 | 社交ダンスはヒップホップよりやさしい

社交ダンスはヒップホップよりやさしい

学校教育におけるダンスと言えば,ヒップホップが主流となっていますが、社交ダンスは二人で助け合って踊ることにより誰でも覚え易く、技術とマナーが自然と身に付きます。
子供からご年配まで、踊ることにより相互理解が得られる、素晴らしい芸術的スポーツです。

私達の身体には、本来、身体を動かしたり、バランスを
上手く取る為に、動作をしようとすると、作用反作用とか
拮抗作用と言った、相反する運動が働きます。

手足が外見的に伸びるように見えても、筋肉の中は
伸ばそうとする運動と縮めようとする運動が働いています。
どんなに小さな運動をする時も、この二つの運動が働き
一番その時の目的に相応しい強さや柔軟性を作っています。

所で、社交ダンスを踊ろるとすると、この二つの運動は、
殆どの場合、意識をすることができません。
その為、具体的に自らの手足を動かしたり、相手に対し
運動を仕掛ける事に依って自覚します。

ところが、この時、上手く目的の表現が出来る人と、
頑張ってもなかなか上手に踊れない人が出てきます。
この差は、もちろん、キャリアの差であったり、運動能力の
差であったりする事も有るのですが、多くの場合は、
身体の性質を知っていないが為に起こる事です。

例えば、初心者に多い上半身の硬直やショルダーの固定化は
コンタクト部分に直接力を、加えようとする事に依る、
身体の拒否反応であり、筋肉が硬直すると、血液の流れは
滞り、神経の反射作用はかなり悪くなります。

街を歩いていて、突然腕を掴まれたら、誰もが、反射的に
腕を自分に引き戻そうとして硬直します。
つまり、腕に強い力が加わると、反射的に、身体を縮め
腕を引かれる方向に動くことを拒否します。

この事は、社交ダンスを踊る方々に起こるトラブルの
大きな原因であり、相手を動かしたり、相手に付いて
行こうとしてコンタクト部分に力を入れると、反射的に
力を加えられた側は、硬直して運動を止め、動きは
緩慢に、更には、運動すら止めてしまうのです。

多くの方が、リード、フォローと思って行う行為が
実は、お互いの動きを止めている事なのです。
コンタクト部分は、直接相手を動かしたりする所では無く
自分の運動を伝える部分であるのです。

具体的に言えば、自分の体重よりはるかに軽い物は
コンタクト部分の周囲筋で運んででも支障は無く
両腕で持ち運ぶことができないものは、コンタクト部分を
固定して、自らが身体全体を下半身で運ぶことにより
目的の方向に動かす事が出来ます。

社交ダンスの場合は、コンタクト部分の筋肉を柔らかく
お互いの感覚が相手の動きを察知出来る状態で
コンタクトします。
此処で大切な事は、相手を動かすと言うより、自らが
目的の方向に、身体全体を使って、形を崩さず
動くと言う事です。

人は、何かを持ったり、ホールドをする瞬間に
その対象物の形態、重さ、動きを察知する習慣が
有ります。
その為、例えば、対象物が変形しながら動くと
その形態を察知できず、上手くホールドを維持できず
お互いに押したり引いたりの運動が起こってしまうのです。

社交ダンスのリードと言いうのは、自分が相手に動いて
欲しい方向に、身体全体で自らが動くことで、相手の
フォローを促し、目的の方向に導くことが出来るのです。

この事は、お互いに言える事であり、基本的に
進行方向に有る側がその役目を担います。
何故、社交ダンスは、女子の後退から始まるかと言う
理由がこれで解るはずです。

運動するにあたって、男子が主人公でなく、後退する
女子が主人公と成っている理由でもあるのです。
リードしている男子が、主人公として演技をするのでなく
進行方向に先に進む女子が表現の主人公なのです。

男子は、運動の始まり、運動の方向、次へのステップの
種類の選択、運動の停止、をリードするのであって、
中身の運動は女子が中心に成っているのです。

多くの女子の間違いは、進行方向に対し、後から来る
男子に向かって運動を行い、男子の運動を阻止したり
男子のパワーで後退している事です。

男子は、リードした方向に演技する女子とコンタクトを取り
女子が脊椎バランスを失わない様にするために
最適な位置にステップを行い、女子の演技をより大きく
豊かにすることを助けます。

ところが、この運動が、日本に於いては、男子が中心で
女子が必至に男子にすがって踊っているペアが多く、
余りにも一人でバランスが取れない女子が多く、
自由な演技が行えない姿が目立ちます。

後退しながら、男子に向かってコンタクトし、自分の足は
身体の後ろにどんどん逃げて男子のフォローを邪魔し
自らは、男子に押されることをリードされていると
信じている女子がいかに多い事でしょう。

相手とコンタクトを取ったまま、後退するステップに
体重を乗せる為、思いっきり上半身を反っている姿は
とても自然な笑顔が生まれる状態ではありません。

お互いに押し合って、男子が常に押し勝っている様な
踊りは、女子にとっては不幸であり、いつも欧米の
コーチが首を傾げるところです。

女子は、男子の懐深くコンタクトを取ったら、自らが
後退するステップの上に自分の演ずる正しいバランスを
乗せて行く事に依って、男子は、女子の演技する場所を
知る事が出来、女子の豊かな表現を助ける事が
出来るのです。

男子とて、後退する時は、コンタクト部分で女子を
引っ張ったりせず、自らの足の上に、コンタクトしている
自分の上半身を丁寧に載せる事で、女子に何をして
欲しいのかを伝える事が出来るのです。

上半身が、柔軟に相手にコンタクトし、お互いに相手が
何をしようとしているのかを察知する事で、下半身は
しっかりとした方向性のある運動が出来るのです。

社交ダンスの運動のレベルは、目に見えないところの
運動をどれだけ理解できるかと言う事に有ります。
見た目、どんなに素晴らしい運動を見たとしても、
その部分は、様々な運動が二人の身体の中で起こった
結果によって生まれたものであり、その出来上がりの
外見をいくら真似ても上手にはなれないのです。