何十年も生徒を育てて来ると、社交ダンスが
上手に踊れるか、踊れないかは、様々な原因が
考えられますが、単純に、社交ダンスが、どれ程
好きかに掛かっていると言ってもいいと思います。
沢山の技術を教え、運動を教え、どの様にすれば
望むような踊りが出来るかを考え、長年の間
多くの方々に伝えてきましたが、最終的に、生徒が
社交ダンスとして成長できると思われる条件は、
我々教える側の力よりも、本人がどれほど強く
社交ダンスを愛して、音楽とパートナーを受け入れ
続けることができたかに有ると思われます。
レッスン当初は、将来どれ程上達するか解らない程
素晴らしい素質を感じられた方が、いつの間にかに
踊りが色あせ、ついには社交ダンスを辞めて行ったのを
どれ程数多く見て来たでしょう。
教える技術も、同じレベルの生徒の何倍も速く覚え
いとも簡単に音楽に合わせて踊れる様になったのに
まるでロウソクの火が消えていくように、いつの間にかに
その輝きが失せて、ついには伸び悩み、教室を去って
行きます。
しかし、最初から才能を感じられる人は、本当に一握り
殆どの方が、どちらかと言えば、四苦八苦して、
悩みながら努力を続けています。
とは言うものの、何も目立たなかった方々の中から
光り輝く生徒が生まれて来ます。
差ほど器用でなく、少しづつしか理解できないものの
着実に本人の踊りに成って行きます。
非常にスピーディに踊れる方の多くは、観察力があり
教師の説明をすぐに形として作ることはできるのですが、
記憶は素晴らしいのですが、習った通り踊ることは
人よりも長けていても、自分からの発信が難しく、
踊り方はすぐに身に付けるのですが、それ以上進まず
沢山の知識を身に付けた時点で、興味が半減します。
社交ダンスは、目の前のパートナーと音楽によって
瞬時に持っている技術を変えていかなければなりません。
ところが、すでにお手本の踊り方を知っている為
安易にその技術を使ってしまいます。
初級の段階で、先生やパートナーに導かれて
踊っている間はいいのですが、相手が変わったり
音楽により感じ方が変わると、途端に解らなくなります。
よく、先生の言った通り踊っているのに、どうして
踊れないのだろう、と言うのがこの生徒のタイプです。
社交ダンスは、日常生活とやり取りと何だ変わりません。
日常生活でトラブルにならないのは、同じことを言っても
その時の状況によって、お互いが上手く事を進められる様に
瞬時に判断して変化しているからです。
社交ダンスの大切な基本は、ステップや運動方法ではなく
このメンタルなやり取りに有るのです。
二人がスムーズに踊る為に、二人にとって一番良い方法で
お互いに気持ちを伝え合うことです。
つまり、ダンスの楽しさをテクニックを使って、いかに
二人にとって的確に伝えられるかと言う事です。
その為の道具として様々なテクニックや運動方法があり
どれだけ社交ダンスの楽しさを伝えられるかがカギとなります。
沢山の習った技術を使って、足形、順番、運動を伝えても
相手は楽しく踊りたくはならないのです。
楽しくなければ楽しくない反応になりますから、
どんなに、正確な踊りをしても、習った通り動いたとしても
二人の踊りは楽しくないのです。
レッスンをしていく内に、次第に頭角を現し、豊かな表現や
美しい形態を示せる方は、踊る事の楽しさ、社交ダンスを
踊る時の心の躍動感が技術以上に伝わってきます。
すると、反射的に感じる事で、同じような楽しさが生まれ
お互いの相乗効果で、ペアとしての楽しい踊りになります。
大切な事は、この楽しさは、社交ダンスの技術レベルに
関係なく生まれてくるものです。
どれ程社交ダンスが大好きで、踊っている時が、いかに
幸せであるかと言う事が現れている踊り手は、努力すれば
生きた技術が身に付き、その結果、素晴らしい踊り手に
なる可能性が高くなるのです。
社交ダンスは、誰もがプロの様に踊ったり、更には、
世界的な踊り手になるとは言えません。
社交ダンスを踊る人のほとんどの人が、社交ダンスを
踊る楽しさを味わいたくて踊るのであって、人より技術が
有るか無いかの部分を目的とすると、いつの間にかに
喜びも躍動感も無くなってしまうのです。
この事は、何年プロをしていても、決して忘れてはならず
踊ると言う事は、社交ダンスを愛し続けると言う事です。
音楽を、パートナーをいつも見失わず、いつも心の中で
愛し続ける事が大切です。
素晴らしい踊りと言うのは、社交ダンスの技術を使って
二人の愛情を表現すると言う事です。
人によって、なかなか道具が身に付かない方も多いのです。
せっかく身に付けても、見ている人に受け入れられない時も
有るのです。
しかし、そんな時も、いつも心から社交ダンスを愛し続け
諦めずに表現方法を身に付けようと努力している人が
いつの間にか、多くの人たちを感動させる踊りをするのです。
好きこそものの上手なれ、と言う諺があります。
何事にも深い愛情を注ぎ、いかなる時もその気持ちを
忘れないで努力するれば、必ず、喜びと感動の日が
訪れるものです。