メディアで取り上げられる、美男美女の理想的な結婚、
理想的な夫婦という言葉には、極めて、商業的な価値や
外見的理想が感じられ、素晴らしいと思いつつも、
眉唾的な話題作りの様に感じてしまいます。
確かに、誰もがうらやむような、理想的なペアと言うのは、
多くの人の賛同を得て、男女の結び付きとしては、
お手本の様に思えてしまうのですが、実際の所は
外見とは裏腹に、多くのトラブルを抱えていたり、
直ぐに、ペアを解消したり、離婚したりして、新たなる
話題を提供する結果と成る事も珍しくありません。
この、外見的理想的な姿と言うのは、いつの世も、大衆が
求めるものであり、決して個人の目的ではないのです。
どんなに素晴らしい映画の主人公であっても、誰もが
憧れる芸能人であっても、それは、画面の中や、スクリーンの
演技上の事であったりであり、その姿を求めても意味は無く
理想の先に幸せが来るとは限りません。
社交ダンスのを長く踊っている人には、夫婦が多いですが、
何十年も踊っていても、他人の関係であるペアも少なく
有りません。
また、社交ダンスは、男女の踊りであり、より二人が親密になり
御互いが常に一緒にいれば、おのずと、二人の演技が
向上するかと言えば、そうともいえないのが実情です。
例え夫婦であっても、日本人の離婚率が３組に一組と言われ
周囲を見渡しても、離婚している人を探す事は難しくありません。
当然、ダンスに於けるペアも、ずっと長く組んで踊っているペアも
多く見かけますが、頻繁にペアを解消している方々も多いです。
と成ると、社交ダンスは、いつも一緒にいたり、結婚していたり
恋人同士であったとしても、必ずしも、素晴らしい踊り手になる
とは限らないのです。
やはり、問題は、いかに、御互いの事を正しく理解できるか
という事に付きると言えるでしょう。
社交ダンスを踊っている時の笑顔は、パートナーから感じられる
自分に対する深い想いと理解の結果生まれるのです。
幸せそうな笑みを作り、外見的な表現を見せると、楽しくも無いのに
笑っている、不自然な顔が出来上がるのです。
踊っている時、流れてくる素敵な音楽を感じ、パートナーからの
愛情深い想いを感じる時、自然と笑顔が生まれ、その二人だけの
唯一無二の幸せな踊りと成るのです。
競技選手の踊りを観ていると、表現の仕方も、二人の笑顔も
ルーティンとして作られた、喜びの押しつけの様に感じる事が
結構多いのに興ざめする事があります。
誰か理想のエキスパートと同じ様な動き、表情を真似ているのか
そんな作られた喜びを、観ている人たちは求めていません。
かつて、現役当時、世界ﾁｬﾝﾋﾟｵﾝからコーチを受けているとき、
どの様に表情を作ったら良いのか尋ねると、不思議そうな顔で
日本人の笑顔が一番だと言って笑い、表情の作り方を教えて
頂けませんでした。
更に、ルーティンの表現をコーチャーの踊りを真似てすると、
途端に顔が曇り、自分の踊りをする事を命じられました。
欧米のコーチャーは、一人１人とても個性的です。
同じフィガーの説明でも、表現と成ると、全く異なった説明で
どのコーチャーの踊りをすれば良いか、迷ってしまう事も
有りました。
更に、当時の日本人の踊りは、コンペに於いて、何組踊ろうが
踊り方が同じなので、どの様に優劣を付けるかに困ったそうです。
私達日本人は、昔から、お手本を大切にする民族であり、
何かを演ずる時は、いかにお手本通りするかに力を注いで
多様性のある表現に疎かった様に思われます。
しかしながら、今や、世の中は、様々な個性を大切にする
バラエティに富んだ世界です。
もちろん、運動としての基本は大切ですが、いかにペアとして
魅力的な踊りを身に付けるかが求められています。
外見的に技術的には精度が高くても、首をすげ替えれば
誰でもいいような踊りは、見ている人を退屈にさせます。
理想的と言う言葉の意味する事は、外見的なものではなく
二人の心がお互いに感じ合って作り上げた、内面を見せる
表現でなければなりません。
当然、ペアとしてそれぞれ個性的になることから、
見ている人にとっては好き嫌いが出るのが当たり前です。
しかし、その多様性のある表現が一番理想的な踊りであり、
ペアとしての完成度を上げ、二人にとって一番幸せな未来を
作り上げて行くのです。
文化が進歩して行く様に、私達の心も育って行くものです。
初期の頃は、外見に囚われて社交ダンスが踊られたのですが、
今の時代は、いかに、人として成熟した大人の心が演じられ
見ている人々の心を揺さぶる事が出来るかが理想です。
その為にも、二人の関係は、世の中の制度や見方を越えた
二人にとってオリジナルな感覚であることが大切です。