スポーツを行なう時、強靭な下半身は必要ですが、
柔軟な上半身は、さらに重要です。
いくら足腰を強くしても、上半身が硬かったり、
意思表示が無かったら、単なる暴走車の様に突っ走り
様々なパフォーマンスは期待できません。
特に、社交ダンスのスタンダードを踊るとき、上体が
硬くて固定されていると、下半身は、脊椎反射が悪くなり、
ステップを片足づつ動かす事と成ります。
足は、普段から、上体の反射運動として、歩幅も強さも
決めている為、無意識で歩く事が出来るのです。
私達は、上肢下肢共に、脳からの命令が脊椎を通し
常時伝えられ、更には、手足からの感覚を同時に脳へ伝え
日常生活が円滑に行われています。
私達が、遠い昔、四足から二本足歩行になった時から、
手足の役目が大きく変わり、上体は、脳からの直接の意思が
動かす機能が高まり、下肢は、上体からの運動や、地面からの
反射を脳に伝える役目と変わりました。
つまり、下半身の動きは、上半身の動きに対し、反射的に動き
スムーズに目的の方向に進むことが出来るのです。
その為、この事を考えると、スタンダードダンスに於いて、
上体を固定して下半身で動く事がいかに不自然な事であるかが
解ると思います。
二人の上半身が滑らかなローテーションを行なう事により、
下半身のステップは、目的の足型を反射的に、その時一番
的確な強さや大きさで動かす事が出来るのです。
サッカーの選手の能力は、ボールを転がしたり蹴ったりすると
思っている人は、サッカーは上手になりません。
サッカー選手は、非常に上半身が敏感に動き、下半身を
リードしてボールを捌いています。
また、バスケットの選手は、ボールを持って、相手の外に
身体をパスする時、両足がまだ床に着いている状態で
ボールを持った上半身が、相手の背中側に入ります。
社交ダンスがスポーツ的芸術と言われるのは、
上半身の的確な意思を下半身が力強い前進後退に変え
更には大きなスウィングに変えているからです。
二人が回転の方向に同じタイミングで上体を動かす事から
上体の反応が良いペアは、二人が一体となって、
一見、二人の上半身が何にもしていない様に思えるのです。
エキスパートになると、サッカーの選手以上に、二人の身体が
御互いに、目的の方向にローテーションし、その運動に
二人の下肢が美しくフォローしているのです。
社交ダンスは、例え素晴らしいレッスンを受けても、
外に見える表現の印象が強く、例えプロであっても
外見で覚えてしまう事が有ります。
身体の構造は誰しも同じです。つまり、身体にとって
気持のいい運動や筋肉の繋がりは同じものなのです。
身体の中の繋がりが正しいと、踊っている時、気持の良い
マッサージを受けている様で、いつまでも踊っていたくなります。
社交ダンスを踊っている時、やたらと足型が気になったり、
上体が固まったり、意識して表情筋を作らなければならない時は
もう一度、人の身体の運動の原理を習って下さい、
この身体の繋がりを練習する事が、基本の練習と言われ、
全てのスポーツに共通のものなのです。