私達が皆さんにステップや表現法を説明する時、
どなたもその所作を見つめ、一生懸命覚えようとします。
しっかりと記憶して、いざ踊ろうとすると、ほとんどの場合
想像したようには動けません。
先生が滑らかに美しく踊っている様を完全にコピーしても
いざ踊るとなると、現実は全く思いとは裏腹となるのです。
特に初心者に於いては、目に映るものしか印象が無く
見えた様に動けばダンスになると思ってしまうのです。
この事は、かなりキャリアの有る方でさえ同じ傾向が有り、
習っている時の理解の仕方でその後の踊りの進展が
決定的に違ってくるのです。
先生が説明する時、踊っているのは、相手が空気であって、
1人で踊っているにすぎないのです。
社交ダンスが難しくなる一番の原因は、自分1人の運動として
ステップや表現を理解したり覚えたりする事にあります。
ステップは常に4本の足で踊られ、ボディは二つあり、
体重は二人合わせて100キロを超えます。
この二人で踊っている事を感じられるか、また感じながら
演技が出来るかが社交ダンスの上達には不可欠なのです。
一対一の対人的スポーツは、目の前の相手からの情報を
どれ程沢山キャッチして、自分のテクニックで対処できるかが
一番重要なのです。
特にボディコンタクトは、相手と身体を付け合って踊るのでは無く
相手の身体と表現の情報を得るための手段です。
お互いに何をしたいのかをしっかりと認識出来る事が
社交ダンスを上手に踊る秘訣でもあるのです。
その為には、自分の事しか考えられない様な難しいフィガーを
一生懸命練習するのではなく、出来るだけ簡単なベーシックで
2人の運動と感覚を確認し合って練習する事です。
お互いに自分のどちらかの足に体重が乗っていますから、
その時の乗っている音楽的な時間と、その他の部分の演技が
同調しているかを確認して踊りましょう。
両腕とボディコンタクトを通じて、目の前の人の踊る姿が
直接見なくても想像できるようになることが大切です。
自分がバランスを取って立っている時は、相手も同じく
バランスを取って立っています。
相手の運動を邪魔しない様に、むしろ助けられるくらい
テクニックが増すと、本当の社交ダンスの名人と言えます。