追い出し部屋からの脱出
某大手銀行の「追い出し部屋」にいる同世代の方と話をする機会があった。
その追い出し部屋とは、従業員を自己退職させるために用意された部署らしい。会社側はリストラしたいが、自己都合で辞めさせたいという人をその部署に配属すると言う。
その部署には、机はあるが仕事はない。あってもデーターの入力であったりと単純作業を延々と繰り返しやらさせるようだ。
名刺にはそれらしき前向きな名称が付いているが、本人は生き地獄だと嘆いていた。
50歳も後半になると、どこも就職する先はない。飛び抜けたスキルや豊富な人脈のある人は、そもそもこの部署には配属されないし、自分で就職先を見つけてくることができる。
日本の男性の平均寿命が80歳だとすると、あと25年も生きれる。
家族もいるし、仕事もしたい。しかし、仕事がない。
彼と同じ部署にいる人達は、出社して1時間もすると、電車に乗ってどこかのコーヒーチェーン店に行くそうだ。お互いに、暗い境遇の自分達を見つめ合っているのがしんどいらしい。
オフィスを離れたいろいろな場所で、スマホやタブレット端末で就職先を一日中捜す「ノマド」のような遊牧民的生活をしていると言う。
私は彼に厳しいことを言うようだがと断って、今日ある自分は全て自分が意思決定した末の自分だと言った。
頑張ろうと思って頑張ってした仕事の結末を、第3者の上席が判断し、評価された結果の集積が今日の自分。
過去を振り返ってもしかたがない。それよりも自分に出来ることから、小さな事でもいいから勇気を持って踏み出してみたらどうかとアドバイスした。
気力も体力も衰えてきた50代後半だが、30年以上のビジネス経験はある。
そのビジネス経験をしっかり自分なりに分析し、出来る事を棚卸ししてみてはどうだろうか。どんなことが得意で、どういう時が自分が一番輝いていたかをもう一度考えてみる。
最後は自分の思うようにしか自分はなれない。
ならばあと人生25年もあるのだから、勇気を出して一歩前に踏み出したらいい。追い出し部屋で悶々としていても、何も始まらない。
彼の背中をポンと叩いたら、にっこりと笑ってくれた。
いい笑い皺が出ていた。
まだまだやれると心の中でエールを送って別れた。
4/28発売の「週刊現代」 に『伝説の新人たち』に市村の記事が掲載されました
5月17日第13回First Village Challenge
市村洋文「昼メシは座って食べるな!」インタビュー
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