映画【ある画家の数奇な運命】 | so what(だから何なんだ)

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人生のバックパッカーのブログです。
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そんなお年頃。
68カ国で止まったまま先に進みません。(;^_^A

・・・・・・・っということで、ドイツ映画を何本も紹介しましたが、まくら言葉のように付くのが「真面目」です。

 

この映画も例外ではありませんが、その上に「超」が付くのです。

 

真面目も超真面目の領域に達すると、「芸術」に昇華すると知りました。

 

この映画は映画芸術の頂点を極めているとさえ思うのです。

 

いつもは辛口の評価ばかりのぼくですが、この映画に関しては人生で見た映画のトップテンに入ります。

 

 

どこまでデフォルメされているかは明かされていませんが、ゲルハルト・リヒターという実在のモダンアート画家の半生を描いています。(現在91歳)

 

彼が子供の時のシーンから始まります。

 

ちょうどナチスが台頭してきた時代です。

 

彼の叔母がイイ。

 

スッゲェー美人(おまけにセクシー)で幼い彼に強い影響を与えます。

 

かなり気が触れている部分がある叔母なのですが、芸術とは何かを知っている女性です。

 

全裸でピアノを弾くシーンがイイ。

 

「目を逸らさないで。真実は全て美しいの。」というセリフがあるのですが、この映画のテーマがここで提示されます。

 

そして、「ラ」の音で止まります。

 

ラのキーを何回も叩きながら、「宇宙の根源さえもこの音にあることを見つけたわ」と言うのです。

 

男の子はさっぱり分かりません。

 

もちろん観客も分かりません。

 

美人の彼女が前を隠そうとせずですから、男の子どころか観客もビックリ。

 

(日本公開のため、陰部にボカシが入っているのですが、これは止めてほしい。)

 

こういった強烈な印象を残す場面が導入部分で提示されます。

 

このピアノのシーンの前に、彼女が男の子を連れてバスステーションで止まっている何台ものバスの運転手に、一斉にクラクションを鳴らしてもらうよう頼みます。

 

騒音としか聞こえないのですが、彼女は恍惚の表情を浮かべて聴き入るのです。

 

実はこのシーンが映画全体を理解するキーになるのです。

 

・・・・・・・

 

上映時間188分の長尺ですから、正直いって中弛みがあります。

 

ドイツは負けて、舞台のドレスデンは廃墟と化します。

 

少年は成長して、(西)ベルリンに移り美術学校に入学して画家を目指します。

 

その過程で、恋人と巡り合います。

 

この恋人役もイイ。(以前観た【水を抱く女】のウンディーヌ役の女優でした。)

 

叔母の面影と似ているところがミソです。(一人二役かと思いました。)

 

その父親がナチス親衛隊の医師(産婦人科)が悪役で、過去にドイツが犯した罪の象徴として描かれます。

 

この俳優もイイ。

 

美術大の教授もまたイイ。

 

絶対に帽子を脱がないのですが、彼だけが主人公の才能に気づきます。

 

ナチスのアーリア人を讃える芸術。

 

ソ連共産党の労働を讃える芸術。

 

美術学校で彼は、それらの対極としてある奇抜なモダンアートにチャレンジします。

 

自分が本当に描きたいものは何かわからず、苦悩します。

 

もちろん教授は彼の作品を見て、これは君の本当じゃないと見抜きます。

 

君の本当の原点は何か?と問いかけ、帽子を脱ぎます。

 

妻(恋人とその後結婚)からもヒントを得ます。

 

彼の原点とは、幼い頃に影響を与えた叔母だったことに気づきます。

 

映画のストーリー立てとして、義父の医師に対して懲罰が与えられるものと観客は期待しますが、映画は突然終わります。

 

その終わり方はネタバレになりますので触れません。

 

表面的には一青年画家が、本当の芸術とは何か?それを表現できる自分の原点とは何かを発見するまでのストーリーですが、裏にもっと大きなテーマが隠されています。

 

それは、「ドイツという国家の原点は何か?」を考えさせることです。

 

ドイツが第二次世界大戦で犯した罪から目を逸らすな。

 

そこを抜きにしては、真実は決して得られないということです。

 

ねっ?真面目でしょう。^m^

 

★を付け足して★★★★★★