・・・・・・・っということで、ドイツ映画を何本も紹介しましたが、まくら言葉のように付くのが「真面目」です。
この映画も例外ではありませんが、その上に「超」が付くのです。
真面目も超真面目の領域に達すると、「芸術」に昇華すると知りました。
この映画は映画芸術の頂点を極めているとさえ思うのです。
いつもは辛口の評価ばかりのぼくですが、この映画に関しては人生で見た映画のトップテンに入ります。
どこまでデフォルメされているかは明かされていませんが、ゲルハルト・リヒターという実在のモダンアート画家の半生を描いています。(現在91歳)
彼が子供の時のシーンから始まります。
ちょうどナチスが台頭してきた時代です。
彼の叔母がイイ。
スッゲェー美人(おまけにセクシー)で幼い彼に強い影響を与えます。
かなり気が触れている部分がある叔母なのですが、芸術とは何かを知っている女性です。
全裸でピアノを弾くシーンがイイ。
「目を逸らさないで。真実は全て美しいの。」というセリフがあるのですが、この映画のテーマがここで提示されます。
そして、「ラ」の音で止まります。
ラのキーを何回も叩きながら、「宇宙の根源さえもこの音にあることを見つけたわ」と言うのです。
男の子はさっぱり分かりません。
もちろん観客も分かりません。
美人の彼女が前を隠そうとせずですから、男の子どころか観客もビックリ。
(日本公開のため、陰部にボカシが入っているのですが、これは止めてほしい。)
こういった強烈な印象を残す場面が導入部分で提示されます。
このピアノのシーンの前に、彼女が男の子を連れてバスステーションで止まっている何台ものバスの運転手に、一斉にクラクションを鳴らしてもらうよう頼みます。
騒音としか聞こえないのですが、彼女は恍惚の表情を浮かべて聴き入るのです。
実はこのシーンが映画全体を理解するキーになるのです。
・・・・・・・
上映時間188分の長尺ですから、正直いって中弛みがあります。
ドイツは負けて、舞台のドレスデンは廃墟と化します。
少年は成長して、(西)ベルリンに移り美術学校に入学して画家を目指します。
その過程で、恋人と巡り合います。
この恋人役もイイ。(以前観た【水を抱く女】のウンディーヌ役の女優でした。)
叔母の面影と似ているところがミソです。(一人二役かと思いました。)
その父親がナチス親衛隊の医師(産婦人科)が悪役で、過去にドイツが犯した罪の象徴として描かれます。
この俳優もイイ。
美術大の教授もまたイイ。
絶対に帽子を脱がないのですが、彼だけが主人公の才能に気づきます。
ナチスのアーリア人を讃える芸術。
ソ連共産党の労働を讃える芸術。
美術学校で彼は、それらの対極としてある奇抜なモダンアートにチャレンジします。
自分が本当に描きたいものは何かわからず、苦悩します。
もちろん教授は彼の作品を見て、これは君の本当じゃないと見抜きます。
君の本当の原点は何か?と問いかけ、帽子を脱ぎます。
妻(恋人とその後結婚)からもヒントを得ます。
彼の原点とは、幼い頃に影響を与えた叔母だったことに気づきます。
映画のストーリー立てとして、義父の医師に対して懲罰が与えられるものと観客は期待しますが、映画は突然終わります。
その終わり方はネタバレになりますので触れません。
表面的には一青年画家が、本当の芸術とは何か?それを表現できる自分の原点とは何かを発見するまでのストーリーですが、裏にもっと大きなテーマが隠されています。
それは、「ドイツという国家の原点は何か?」を考えさせることです。
ドイツが第二次世界大戦で犯した罪から目を逸らすな。
そこを抜きにしては、真実は決して得られないということです。
ねっ?真面目でしょう。^m^
★を付け足して★★★★★★