・・・・・・・っということで、原題は【Hostiles】で、敵同士という意味です。
2時間を越える大作であります。
インディアンと白人の憎み合いが描かれていますが、テーマはずばり「人種差別」です。
悪いインディアンが出てきて、悪い白人が出てきて、自分達の土地を守るために侵入者を襲うインディアンと白人。
主人公の大尉を演じるクリスチャン・ベイルは仕事のためと称して残虐にインディアンを殺しまくり、インディアンの酋長はその復讐のために騎兵隊を殺しまくった過去を持つ。
それぞれが対立する構図です。
その他、家族を皆殺しにされた女性や、様々な過去を持つ人物が加わって旅をする物語。
長い旅を続けるにしたがって、大尉の気持ちが変化して、敵同士が心を通わせる・・・
と、お決まりの筋立てです。
しかし、お互いを理解するために、何が必要なのかを真正面から、真面目に取り組んでいます。
真面目すぎて、全体的に冗長な印象を与えるところが残念ですが、この差別が蔓延する現代において西部劇という形式で描いたのはとても良い着眼でしょう。
中国がウイグル自治区で行っているのは、ジェノサイドだとアメリカが決めつけたことに対し、中国が「インディアンに対して行ったことこそジェノサイドだ」と反論しました。
かねがねぼくは正しくその通りだと思っていたし、アメリカの反省が足りないと感じています。
だけれども、現代の倫理観で過去を糾弾するのには、何となく抵抗を感じるのも事実です。
この映画の優れた点は、西部劇といっても南北戦争が終わり、騎兵隊の役割りが消滅し、近代化が進んでいる時代を背景にしたことです。
主人公の大尉に率いられた隊員たちは、戦いに疲弊しきっています。
大尉自身も、この任務を最後に退役するつもりです。
そう、時代は変わっていくのです。
誇り高いインディアンは既に征服され、残ったのは統制のとれていないギャング化したインディアンたちです。
白人のほうもエゴ丸出しで、本質はギャングと何ら変わりません。
以前は職業としてインディアンを殺しまくっていた大尉。
多くの信頼する部下が死んでいき、またその復讐のために殺戮を正当化していた大尉。
だが、彼は疲れた。
もう彼が活躍する場は、失われつつある。
結局のところ、他人が住んでいた土地を奪い、正義のもとに原住民を殺すことが正義ではない、原住民たちだって人間なのだと気付くのに必要だったのは、長い時間の経過とそれに伴う疲労だけなのです。
決して、神への信仰心から生まれる道徳観ではなかったのです。
そんな道徳なんて人間は始めから持ち合わせていない。
「時間の経過と疲労」、ここからしか人間は正しい道を学べないのです。
歴史を辿れば、これは虚しい事実であって、人間の愚かさにため息が出てしまいます。
・・・・・・・
クリスチャン・ベイルが良い演技をしています。
あの【ラスト・オブ・モヒカンズ】で血の気の多い戦士を好演していた、純血のチェロキー俳優ウェス・ステュディが味のある酋長を演じて良い。
【ゴーン・ガール】のロザムンド・パイクも好演。
ちょっと難しすぎるテーマに果敢に挑戦した監督にもアッパレをあげなくちゃ。
★★★★★