1989年にカナダのモントリオール理工科大学で発生した乱射事件を題材にしています。
原題は【Polytechnique】ですから、理工科という意味でしょう。
事件の経過に忠実なのか分かりません。
たぶん、正確な証言は聞いたでしょうが、忠実ではないと思います。
この悲惨な事件を一度自分の中で精一杯消化し、ゼロから組み立て直したと思います。
ひとつの凄惨な事件を扱った映画は多数あります。
しかし、この監督は誰もが思いもつかない視点から、この事件を分解して描いていきます。
そこがこの監督の才能でしょう。
犯人の動機は反フェミニストであること以上に、詳しく語られません。
女性の入学者のために、男である自分が落第させられたと思い込んだのが動機ですが、それは描かれません。
女性ばかり14人も射殺し、犯人は自殺しています。
何とも虚しく、理解不能な事件ですが、深い何かは残るものです。
その何かは、観客が映画を通してしか受けとるしかないのです。
映画が説明する必要はないし、説明できるものでもありません。
ただ、犯人は犯行前に母親に手紙を投函し、ある登場人物は自殺前に母親に会いに行き、主人公の女性は自分の妊娠を知ったとき父親に電話します。
そこから連想するのは、血の繋がりの大切さでしょう。
犯人はそれに気づいていない。
見過ごされがちでしょうが、犯人の頭部から流れる血が殺害した女学生の血と繋がる描写があります。
この映画は珍しく、モノクロで撮られています。
真っ赤な血が流れると、あまりにも印象がそれにフォーカスし過ぎるので、あえてモノクロにしたのだと思います。
ヴィルヌーヴ監督の才能を堪能できる映画です。
★★★★★