50年というと半世紀。
本当の出来事だったのか、信じられないくらいの快挙でした。
それなのに、世間ではあまり騒がれていませんね。
だから観ました。(^^ゞ
うぅ~~ん、難しい。
どういう映画に仕立てるかが難しい。
あまりにも有名な、誰でも知っている物語をどう料理するか?
たぶん、映画【アポロ13】と比較したくなるでしょう。
だけども、作る側からすればアポロ13のほうがずっと作りやすい。
事故で宇宙から生還できるか、ヤマ場がはっきりしているからです。
月面着陸を描くだけでは観客は満足しない。
そこんところを、よく理解してから映画を観るなり、批評する必要があるんじゃないでしょうか。
この監督は、ニール・アームストロング一人にフォーカスすることに決めた。
だから、一緒に乗り組んだオルドリンもコリンズも、おざなりと言えるくらいの扱い。
アポロ1号の事故で亡くなった(隣人の)エドさえも、アッサリとしか描いていません。
ましてや、本来なら描くべき(アポロ13では描かれていた)宇宙飛行士仲間とのライバル意識など、ちょっと触れた程度です。
実際のニール・アームストロングという人物も、掴み所のない印象だったのでしょう。(故人です。)
優等生には違いないけど、写真の彼は本当の笑顔ではない。
ライアン・ゴズリングを主役に抜擢したのは、こういう理由からでしょう。
そういう人物の分かりにくさを際立たせるために、妻役のクレア・フォイが見事に演じています。
アポロ13なみの映画を期待していた人たちは、ちょっとガッカリでしょうね。
そういう心の準備をしてこの映画を観ると、実に緻密な計算のもとに作られているかが分かります。
先ず、当時の雰囲気を出すために、画像がアナログ風。
もちろん最先端技術を使っているのですが、描写がデジタルデジタルしていないのです。
全体が電球の明かりなんですね。
時代考証も完璧です。
NASAの交信データもそのまま使っているはずです。
外部から見えるCGはなるべく使わず、パイロットからの視線に拘っています。
それより何より、この映画の優れた点は、セリフです。
長い間がイイ。(観客にも考えさせるから)
ニールが宇宙飛行士の採用面接を受けるシーンなんか、実に洒落た受け答えをさせます。
それによって、ニールの人間性、優秀さが浮かび上がってきます。
発射前の記者会見で、記者から月に何を持っていくかと聞かれ、バズ(オルドリン)が妻のジュエリーを置いてくると言ったのに対し、ニールは少しでも余分の燃料を持っていくと答えます。
実際、着陸の時の残念量はギリギリだったことが知られています。
しかし、この映画ではあるものを月に置いてきたことになっています。
それが何かを書くとネタバレになってしまいますが、ニールという人間を知るとても重要なカギになるものです。
彼の人間性を炙り出すことがこの映画に主題ですが、宇宙開発の必要性についても、この映画はしっかり問題提起をしています。
月面に降り立った人間は、あれ以来、半世紀が経っても誰もいないという事実です。
ぼくらの世代にとって、色々考えさせられる映画です。
★★★★★
(その他)
ニール・アームストロングは2012年に82歳で亡くなっています。(他の二人は存命)
水葬されていますが、彼は海軍出身だからです。(他の二人は空軍)
映画ではその後離婚したことまでは描いていません。(余計だ)