【五重塔】
幸田露伴著
任天堂DS文庫
1963(昭和38)年1月19日講談社発行
幸田露伴は明治の人だ。
文体はかなり読みづらい。
当時の人たちはスラスラ読めたのだろうけれど。
でも、読みづらいなりに読んでいくと、独特の語り口が心地よい。
まるで、講談を聴いているような感じがする。
第三者の視点で書かれているが、人が喋ったことを「括弧」としてくくらずに、話すまま書いていく。
誰が喋ったか混乱するのではないかと普通は思うのだが、全く自然に流れる。
この辺が、著者の力量か。
登場人物は、皆善人だ。
ひねくれたヤツは出てくるが、悪人は出てこない。
善人の善人たる者が大工の十兵衛とその親方源太である。
思い悩む動機が、善良だ。
いがみ合うその内容が、善良だ。
善良な人たちの心の葛藤。
江戸っ子気質(かたぎ)というのか、職人気質というのか、感動的なオチだ。