【アジアの知略】
―日本は歴史と未来に自信を持て
李登輝著
発行:光文社 (2000/07)
(カッパ・ブックス)
またもや、83歳になろうとする親父から、読めと渡された本。
読まないわけには行かない。
李登輝の本は【台湾の主張】を、だいぶ前に読んだことがある。
内容は忘れてしまったが、今回読んだ印象とほとんど変わらない。
戦前の京都大学を卒業し、いまの日本人が失ってしまった「知性」を備えた人である。
李登輝のキーワードは「知性」しかない。
本の中身は、彼が台湾総統の時の「自慢話」が大半である。
でも、自慢話に聞こえないのがこの人の「人徳」である。
今の「民主的な」台湾があるのは、この人のお陰であったと言って差し支えないだろう。
共産党との戦いに敗れ、大陸から台湾に移ってきた蒋介石率いる国民党の出身。
それでありながら、蒋介石の亡き後、中国への再侵攻という党の旗印を下ろし、現実路線に舵を切ったその政治手腕は大いに評価されるべきであろう。
野党ではなく、与党でこれを実行したのであるから、とてつもない抵抗があったことだろう。
クリスチャンらしい外面的な「当たりの良さ」とは裏腹に、中国と渡り合った芯の強さ、粘り強さ、したたかさは相当なものである。
日本に彼のような政治家が欲しい。
ブレない信念、豊富な専門知識、人間的な魅力、説得力、辛抱強さ、バランス感覚、状況を的確に判断する能力などを合わせて、知性と思うのだが、残念ながら、日本の政治家に知性を持った人は見当たらない。
それも皮肉なことに、このような人物を育てた基礎教育を、日本が行ったという事実である。
本人も、日本教育に対する恩恵の念を隠さない。
戦前の教育の素晴らしさを、先入観を持たずに再評価する作業が必要ではないだろうか。