【或る女】
有島武郎著
ニンテンドーDS文学全集
岩波文庫
1950(昭和25)年5月5日
ウ~ン、長い。
力作ではあるが。
主人公(早月葉子)の心理描写が主なのだが、本当の人間がこれほど物事を考え、感じながら生活しているか?
という疑問が付きまとった。
こんな風に頭の中で考えていたら、疲れてしようがないだろうと思う。
まあ、文学作品なのだから、現実とかけ離れてもいいのだが、ちょっと書きすぎ。
もう少し短い小説にしても、描くことが出来たのじゃないかな。
ここに、この作家の才能の限界を感じる。
過度な描写のため、読者の想像で補う部分が少なくなっている。
その結果、余韻を楽しむ余地を奪っていると思う。
確かに、心理描写における才能には光るものを持っている。
しかし、そのひらめきを全部出さなくてもいいじゃないということ。
・・・・・・っと、前置きが長すぎたが。
しかし、嫌な女だね。この主人公。
感情移入をあえて避けて書いているのか。
【カインの末裔】の主人公(男性)も、感情移入を拒絶するような書き方だった。
まともに読めば、女性の自立が主題だろう。
日清戦争後の日本だから、1895年(明治28年)以降、たぶん1900年前後の時代である。
そのころの女性の立場というものは、現代に比べ男性に頼らねばならない部分がとても大きかったことが分かる。
妾を持つのは、男の甲斐性みたいなところが見えて面白い。
女中を当たり前みたいに使うっていう感覚も、驚きだ。
そして、長女が妹達に対して、とてつもなく威張っているのも面白い。
文明開化の中で、古い因習に囚われている民衆が、新しい時代にマッチしようともがいている。
そんな、時代のアンバランスが伝わってきて興味深い。
結局、主人公は、男の呪縛から逃れることが出来ず、破滅してしまうのだが、あまり可愛そうだとは思わない。
読後感は、作者は本当に女性の自立を描きたかったのかという疑問である。
本当は、違うのではなかったのじゃないか。
確かに、女性権を題材にはしているが、それは単なる借り物であって、本当は、【或る女】そのものを、自分の文学的才能をもって描きたかったのじゃないか。
私には、そう思われて仕方がない。
(実際の有島武郎は、情死を遂げるのだが、その辺のヒントが得られるのじゃないかと期待していた部分もあった。
でも、あまりピンとはこなかった。)