【武蔵野】
国木田独歩 著
ニンテンドーDS文学全集
新潮文庫 刊
1949年05月24日発行
1898年の作なので、著者27歳の頃。
昔の人は若いのに、老成したような文章を書くものだ。
60歳近い私でも、ここまでの心境に達していない。
いや、死ぬまで無理かもしれない。
110年昔は明治31年。
彼が「渋谷村」に住んでいたという。
村だぜ。渋谷が!
NHKのすぐそばらしい。
当時の武蔵野をベタ褒めである。
チョット褒めすぎというくらい。
道玄坂はもちろん、小金井とか、登戸とか、玉川上水とか地名が出てきて、その辺りが雑木林だったことを思うと、感慨深いものがある。
当時の地図を見ると、確かに渋谷は町のはずれで、田んぼとか、丘陵地帯が広がっていたことが分かる。
武蔵野といえば雑木林。
私が関東に引っ越してきた50年ほど前は、まだ雑木林が残ってたところも多く、何となく武蔵野の雰囲気は分かる。
でも、いまの若い人がこの本を読んで、分かるかな?
頭では分かるけど、体験を通して得た感覚として分かる人は殆どいないんじゃないかな。
そして、世代が代わるにつれて、本当の武蔵野のよさを知るには、もうこの本でしか出来なくなるだろう。
そして、この漢文調の文体を理解できる人は少なくなり、人々の心象から武蔵野は消え去るのだろう。
そして、自然がはぐくんだ日本人の心は、だんだん異質なものに変化していくのだろう。
なんか、寂しいなぁ。
後には戻れないけれど、残念だなぁ。
もう、二度とこのような本が生まれないことが。