【セメント樽の中の手紙】
葉山嘉樹(著)
任天堂DS文学全集
・・・・・んっ?DS文学全集?
っと思われたでしょう?
そうです、ニンテンドーDS用のソフトなんですよね。
日本の小説の古典が100冊分入っている。
それでいて、3千円ちょっと。
1冊あたり三十数円で読めるというお得なソフトです。
・・・・・エ~っと、そんなことより小説の中身・・・っと。
プロレタリア文学だという。
【蟹工船】に影響を与えたという。
たしかに、劣悪な作業環境で、安月給の上、長時間労働。
働けど働けど、一向に生活は楽にならない。将来の夢なんか描けない。
こうなりゃ、いったい誰が悪いんじゃ?
そうだ、自分たちをこき使っている資本家が悪いんじゃ。
俺たちゃ、資本家に詐取されているんだ。
そうだ、みんなで立ち上がろう!!
労働者が団結して、革命じゃ!革命じゃ!!
そんなことを煽るのがプロレタリア文学なら、この本はそんなものとは違うと思う。
御伽噺のような筋立て。
悲しい御伽噺。
【蟹工船】より、こちらのほうがもっと悲しい。
資本家に詐取されているかもしれないが、生きていくためには資本家に頼らざるを得ない。
資本家をやっつけろというアジテートには、乗っかりやすい。単純に。
でも、やっつけた後の具体的なビジョンが描けない。
そして、共産主義という幻影に縋ったのじゃないか。
そして、その幻影は、資本主義と同じか、それよりさらに悲惨な世界だったじゃないか。
それは散々レーニンや、毛沢東が証明して見せたじゃないか。
だから、この作品は悲しい。
【蟹工船】のように、幻想を撒き散らさないだけ、よけいに悲しい。