【O・ヘンリ短編集】
O・ヘンリ (著)
大久保 康雄 (訳)
新潮社発行
1969年3月
若いころ全くと言って良いほど名作を読まなかったので、目に付いたら買うことにした。
名前は超有名なのだが、短編の名手とは知らなかった。
短編の名手といえば、私の好きな阿刀田高とついつい比べてしまう。
阿刀田氏も世界に通用する作家だと思うが、O・ヘンリと比べると分が悪い。
なぜか?
やはり、時間の洗礼を受けていないからだろう。
死して後に、評価は定着するものである。
O・ヘンリは既に亡くなってから100年近くの時間の洗礼を受けている。
もう一つ分が悪いのは、生きた時代と、作者が送った人生であろう。
こればかりは、阿刀田氏がいくら手練の作家といえども、自分では選べない。
O・ヘンリは投獄されていた経験が、やはり大きく作品に影響というか、深みを与えている。
どんなに想像力があろうとも、何も経験しないところからは、真実味は生まれない。
歴史に名を残すか否かの分かれ目は、そういった人間の才能だけではどうにもならない、神の手が働いているものだ。
さて、内容だが、流石に上手い。
そして、人間を見るまなざしが温かい。
彼の作品の登場人物は、心底まで悪人は居ない。
どうしようもない人生を、みんな必死に生きている。
かならず、物語の最後にオチを付けるスタイルで統一されているが、ひねくれたオチではない。
この辺が、一見すると無頼の人生を送ったように見える作者の人間性に読者が共感する理由だろう。
蛇足:やはりこの本からも、100年以上前のニューヨークの空気を呼吸することができる。