【日本の弓術】
オイゲン・ヘリゲル述
岩波文庫
1982年10月18日発行
1936年(昭和11年)に日本に滞在していたドイツ人が講演で用いた原稿の訳である。
実際の彼が日本に滞在していたのは、大正15年頃の事である。
読んでみたいと前から思っていた本である。
日本について書かれた書物の中では、絶対に外せない本である。
短い。
あっという間に読み終えてしまう。
読者としての日本人は、彼が弓道の先生(阿波先生)から教えを請いながら、本質に迫る過程が面白いであろう。
また、彼の通訳を務めた人が書いた、彼の個人的な事柄の思い出に、興味を示すであろう。
さらに、ドイツ人の持つ論理的なものの考え方と、日本人の考え方の文明比較が面白いとも感じるであろう。
しかし、ヘリゲル氏が一番言いたかった事は、そんな過程ではなく、彼が得たそのものであったはず。
即ち、西洋哲学では到達できない「神秘」について、彼が会得したものを主張したかったはずだ。
「無」になる事によって、「有」が返ってくる事実である。
要するに「禅」と同じ効果(?)が弓術から得られる驚きである。
私も、弓道についてこのような効能があると、この本で初めて知った。
私も、老子を少しかじった事があり、「無用の用」、「無為自然」、「無から有を生ずる」なんていう言葉に接し、痛く感心していたものだ。
言葉では、なかなか表現する事が難しい事を、彼はこの本の終わりのほうで、大変上手く表現できていると思う。
彼がこの本で伝えたかった本質を、もう少し理解してあげようではないか。