【大人の見識】 | so what(だから何なんだ)

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そんなお年頃。
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【大人の見識】
阿川 弘之著
新潮新書
2007年11月20刊

この本も私の父親からのお下がりである。
郵送してきた。
老人のたわごとなのでつまらなければ捨ててよいとの紙片が挟んであった。
著者87歳。
父81歳である。

たしかに老人の思い出話である。
昔の民衆は最低限の教養を身につけていたし、指導者もそれなりの見識を持っていたというもの。
民衆のそれは論語から、指導者はそれプラス英国流の作法によるもの。
海軍の伝統へのあこがれ・・・・・っと、まとめられるのかな。

感心するところは、老人にありがちなお説教口調が、極力抑えられているところ。
この辺の語り口に著者の「見識」が現れていて、好ましい。

さて、最近はこのような題材の本がやたらと多い。
「国家の品格」が火付け役なのだろうか。
これだけ多いということは、今の日本人に見識や品格が著しく欠けていると、ようやく気付き始めたからだろう。

私もそう思うが、ちょっとだけ違った見方をしている。
品格のない人間の割合などは、昔も今も特に変化したとは思わない。
昔に比べ今の人間のほうが下品な人間が多くなったとは思わないのである。

私が思うに、そういう輩が目立つようになったと。
そして、彼らがそれを恥じなくなったこと。
どうしてそうなったかというと、誰もそういう人間をとがめなくなった事によると思う。
さらに悪いことには、そういう下品な行為をする人間が、逆に格好がよいと思うようになったことである。

この原因はマスコミにあると思う。
特にテレビが果たした役割は、犯罪的であると思う。

この日本の悲惨な現状に歯止めをかけるのは、教育しかない。
著者の言うチャーチルや、吉田茂などの「気骨」のある指導者が今の日本に現れると期待するのは、奇跡を待つような気がする。
そんな不確定なものを期待するのではなく、やはり教育を地道に改革するしかない。
その教育とは、エリートを育てる教育である。
イギリスにある貴族階級を求めるのは、もう日本には不可能であるから、エリート養成ということを本気で考えるべきではないか。

あるいは、極論かもしれないが、エリートが育つまでは外国からレンタルしてもよいのではないか。
ゴーンのように。

エリートの持つ危険性も十分知っている。
知った上で、日本の現状を見る限り、そちらの危険性をとったほうがまだマシだっと思うのである。