・・・・・・・っということで、アカデミー賞も冒険をしたものですね。
これが作品賞とは。
ご存知【パンズ・ラビリンス】の監督。
あの何というか、後味がスッゲェ~悪い映画だったけど、やたらに不思議な印象を残す困ったちゃん。
本作も似たようなテイストが残る。
だんだん腐っていく二本指の印象を常に意識させながら、観客は生理的な不快感をずっといじられながら見ることになる。
間違いなく御伽噺である。
深く心に刻まれる作品なので、出来るだけ子供に見せたいと思うのだが、あからさまなセックスが背景にあるので、やはり大人向けのファンタジーと理解しなきゃならないのだろう。
いうまでもなく御伽噺は、何かの比喩である。
語られるシチュエーションには必ず伝えたい裏の意味が隠されている。
そういう目で見るのが、大人の御伽噺を見るときの正しい鑑賞の仕方だ。
するとこの映画は、物質文明に置き去りにされていく人々への慈しみだと理解できる。
時代背景は正に60年代で、電化製品やクルマ社会が到来している時代だ。
ソ連と宇宙競争にしのぎを削っている。
多分にアナログの時代だが、文明の進歩を誰も疑っていない時代。
主人公は赤ん坊のときに捨てられ、しかも声帯を失っている。
最先端の科学施設で働くものの、来る日も来る日も夜間勤務で社会の底辺を這うように生きている。
ダンスもしたい、男性と交際したいと夢見ているが、一生叶わないと知っている。
同僚は黒人で人種差別対象者だ。
唯一心を通わせている商業絵描きの老人は時代遅れで失職中。
孤独を紛らわせるために、不味いパイを出す店に通っている。
悪役の上司も結局のところ社会から振り落とされまいと必死である。
科学者としてのプライドを持つソ連の科学者も、共産党という巨大な組織の中の捨て駒に過ぎない。
どんどん進んでいく物質文明の中で皆が振り落とされまいとあがいている。
その意味でも、登場人物はみなその犠牲者と言える。
そんな中で、本当の真実は何か。
本当の愛とは何か。
主人公の女性はそれを見出し、曇りのな心で飛び込んでいく。
そして、そんな主人公を助けるのは、時代に取り残された人々なのである。
ぼくらはいったいどこでボタンを掛け違ってしまったのだろう。
本当に大切なものとは何だろう。
この大人向け寓話は、御伽噺の基本中の基本を問いかけている。
(水中でハイヒールが脱げて沈んでいくシーンは象徴的でしょう?)
☆☆☆☆☆