・・・・・・・っということで、アルツハイマー。
自分が自分で自分を自覚することによって、初めて自分が自分でいられれるのです。
もし、それが出来なくなったら、もう自分は自分ではなくなるはずです。
自分ではなくなった自分とは何なのでしょう?
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母がどんどんかつての母ではなくなっていきます。
ついさっきのことどころか、過去の大きな記憶も無くしていきます。
そのうち、ぼくのことも忘れるでしょう。
このままいけば、自分自身のことも忘れるでしょう。
問いかければ返事をしますし、今は普通に会話もできます。
そこにいるのは間違いなく母なのに、自分の知っている母ではなくなるとはいったいどういうことでしょう。
ぼくも同じようにボケていく。
自分であることを自覚できない自分は、果たして自分だと言えるでしょうか?
そもそも自分とは何なのでしょう。
何時から自分は自分になったのでしょう。
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母の頭蓋骨は、歪みのない実に見事な形をしています。
天然パーマなのですが、綺麗なカーブを描いていて下手な美容師がカットしても上手くまとまってしまいます。
流石に薄くなり、全体が真っ白になってしまいました。
母の小ぶりな頭を両手で包むと、形の良い頭蓋骨が細くて柔らかい白髪を介して指に伝わってきます。
もうこれ以上、母の頭の中から記憶が漏れ出さないようにと、ただただぼくは祈るばかりです。