ちょっとアメリカの歴史をかじってみると、先ずネイティブアメリカン(インディアン)とヨーロッパ人入植者との紛争がありました。
アメリカという国民意識が高まるにつれ、対イギリス戦争、イギリス対フランス戦争があり、インディアンも巻き込まれました。
(最近はインディアンという言葉を差別用語としてではなく、積極的に使う方向に変わってきているそうです。)
次にスペインとの戦争が控えているのですが、このあたりはヨーロッパにおける国対国という基準での代理戦争みたたいな様相ですね。
独立後のアメリカ人は南北戦争という、どちらかというと経済戦争を経験します。
次に起きたのが、ヨーロッパ移民同士の差別意識をベースにした争いです。
当初はイギリス系(その中でもアイルランドとか、出身地意識の違いはあります。)次に、ドイツ系とイタリア系となって、さらに東欧系移民が渡米してきて、その間で格差意識が強くなります。
差別のベースには経済成長に伴う貧富の差がありますね。
西部開拓時代はメキシコから土地を奪うことによる、スペイン系との争いが挟まります。
大戦中は中国、日本などのアジア系移民との摩擦。
そして公民権運動で有名な黒人対白人の争いになります。
その後はなんとなく白人側に分類されると認識していた、プエルトリコ、キューバ、メキシコなどのヒスパニック(ラティーノ)の移民との摩擦がクローズアップされるようになりました。
そして、テロリストとして十把一からげにされているイスラム教徒への差別となります。
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こうやって見ると、ひと口にアメリカは移民の国といっても、その歴史は出身国間、人種間、宗教間の争いの連続なのですね。
もちろんその間、移民問題を解決すべくさまざまな手が打たれました。
インディアンの強制的な居留地への隔離、日本移民の強制収容所送り、黒人への差別制度など、相当に乱暴な手法も採られました。
ぼくら日本人にはあまり知られていませんが、メキシコに対しては不足した労働力確保のために政府間で結んだブラセロ計画がありました。
それに伴い不法移民が急増し、反動として排斥運動が起きます。
このあいだNHK BSでトランプが提唱する国境の壁に、かなりの数のメキシコ系アメリカ人が賛成していることを放送していました。
これは、先に移民として合法的にアメリカ市民権を得たメキシコ系が、後から不法にやってくる仲間に職を奪われたくないというのがベースにあるのです。
複雑ですね。
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ぼくら日本人は国境問題や移民問題を聞いてもピンと来ません。
たとえば、日本海が全部陸地だと思い描いてください。(古代には実際そうだったのですから。)
すると、どれだけ長い国境線がロシアや朝鮮との間に必要なのでしょう。
不法移民を防止するために、我々はどれだけの費用と労力をかけなければならないか想像してみてください。
偶然にも、日本海側に面する日本列島の長さとメキシコ国境の長さは大体同じなんですね。

トランプがどれほどの長さの壁を作ると言っているか感覚が掴めるでしょう?
では、なぜメキシコなのかを考えてみましょう。
アメリカはカナダとメキシコ以外の国境は、意外にも海だけなんですね。
カナダは同じヨーロッパ系白人の国ですから、問題は起きません。
問題なのはメキシコなんです。
トランプ氏と彼を支持するアメリカ人の気持ちが多少分かってくるんじゃないですか?