・・・・・・・っということで、ぼくは親父の希望に添えませんでした。
というより、逆らいました。
母から聞いた話。
まだまだ元気だった頃、母が親父に向かって「私は延命処置までして長生きしたくないわ」と言ったそうです。
その裏には、親父も同じ意見だという予想がありました。
しかし、しばらく躊躇したあと親父の答えは、
「オレはどんな手段をとっても生き続けたいなぁ~」でした。
その理由を聞くと、「だって、医学が進歩して助かるかもしれないじゃないか」と答えたそうです。
それほど親父は生への執着が強い人間だったのです。
・・・・・・・
親父の死亡診断書には老衰による慢性呼吸不全と書かれましたから、病気によるものではありませんでした。
その老衰を招いたのが嚥下機能の低下でして、要するに自分では食べ物を飲み込めなくなったったということなんですね。
その後、点滴だけで46日間も生き続けました。
・・・・・・・
それ以前、老人ホームに入所するとき、いくつかの質問書にサインをしなければならないのですが、その中に「意識不明の状態で発見されたとき、救急車を呼びますか?」というものがありました。
ぼくはケースバイケースだからそんな質問には答えられないと返事しました。
しかし、この質問のココロは【延命処置を希望しますか?】なのです。
病院に担ぎ込まれたら、医者は患者を治療するのがその責務です。
心臓を動かすためには手術だって何だってやります。
若い患者だったら考えることもないのですが、85歳にもなった老人にチューブを一杯付けて生き続けさせるべきかという問題なのです。
その後親父は二度転倒して股関節を骨折し、大腿骨を骨折し、そしてある事情で急性肺炎を起こして入院しました。
急性肺炎のときは、医者から覚悟しておいてくださいと伝えられたので、死の淵まで行ったのは確かなことです。
その都度、【延命処置】をするかの課題を突きつけられました。
結局ぼくはしないと決心し、書類にサインしました。
そう、これは親父の意思に反することです。
・・・・・・・
結構悩んだんですよ~~~~~~。
息子が親父の生き延びる機会を奪うことになるのですから。
・・・・・・・
あるスウェーデン在住の日本女性とブログで知り合いました。
その人は、あちらで老人介護の仕事をしているのです。
そこで、スウェーデンの考え方を教えてもらいました。
先ず、スウェーデンでは「寝たきり老人」がいないこと。
基本的には自宅での生活を続けさせ、出来るだけ施設に入れないそうです。
介護人は、各自宅への訪問介護が中心だそうです。
どんなに老化しても毎朝起きてイスに座らせ、料理など自分で出来ることは自分にさせ、買い物に行くときは車椅子に乗せて付き添うそうです。
要するに独りになっても今までの生活をなるべく続けさせるという方針ですね。
方針と言うより、老人本人がそれを望むそうです。
遺漏(いろう:胃に穴を開けドロドロにした食物をパイプから直接流し込む栄養供給方法)なんて、そんな非人間的なことは考えられないそうです。
そもそもスウェーデンでは、本人がそんな生き方を望まないのです。
自分の力で嚥下できなくなったのは、それが寿命だからなのです。
その寿命を受け入れるしかないでしょうと言うのです。
この考え方は大いに参考になりました。
ブログのお陰です。
・・・・・・・
いよいよ親父が口から食べることを拒絶してしまった時点で、医者から入院させますか?それともこの老人ホームに留まりますか?と質問されました。
両者の違いは、より患者を密接にケアーすることが出来るかどうかでした。
病院の場合、スタッフが常時近くでモニターでき、設備も整っているからイザというときはすぐに対応できるというもの。
すぐ近くの老人対応の病院も紹介されました。
医者も老人ホーム側も入院を選択して欲しいという気持ちが滲んでいました。
ぼくも、病院に入院させるべきだという気持ちに傾きました。
しかし、現実的な問題として、入院させたら入院費がかかる。
個室に入れようものなら、天文的な金額になってしまうので、必然的に大部屋にならざるをえない。
老人ホーム側は何の手間もかけずに、毎月の利用収入を得ることができる。(要するに厄介払いね。)
医者も手間が省ける。
・・・・・・・
このときの判断も悩みましたよ~~~~~。
でも、結局親父のクウォリティー・オブ・ライフを優先しました。
曲がりなりにも3年半自分の部屋で生活(?)してきたし、施設のスタッフとも顔見知り。
病院に入院してワン・オブ・ゼムの環境の中で人生の最後を迎えさせるよりいいのではないか。
結局、老人ホーム側のケア体制に期待するほうを選びました。
・・・・・・・
この判断は間違っていませんでした。
確かに、病院に居るときのように常時モニターできませんが、予想以上に介護士やヘルパー、看護師、そして掃除のオバちゃんが頻繁に親父の様子を見に来てくれたのです。
中には単に息をしているか確かめるだけのヤツもいましたが、スタッフはとてもよく面倒を見てくれたと感謝しています。
元気な頃の親父を知っていますからネェ~と口々に言ってくれました。
・・・・・・・
最後に黒色の専用運搬車に載せられて施設を去るとき、殆ど総てのスタッフが玄関前に勢ぞろいして見送ってくれました。
・・・・・・・
以上、長くなりましたが、延命処置について考える機会になればと思い書きました。