・・・・・・っということで、オヤジが本格的にボケてきた。
彼の唯一の楽しみは、携帯電話でオフクロと話すこと。
もう、老人ホームからひっきりなしにかかってくる。
それに一々、丁寧に対応するオフクロの態度には感心する。
一ヶ月の通話料が2万円を越すこともしょっちゅうらしい。
ところがその携帯を失くしてしまった。
個室だから失くなりようがないはずなのに、失くしてしまった。
本人は盗まれたと言い張っているが、ゴミ箱に落としてしまったのだろう。
実は、ぼくも一度それで失くしたことがある。
なんたって唯一の楽しみだから、新しい携帯を買って来いと、火が付いたようにオフクロに催促する。
もちろん、老人ホームを巻き込んでの大騒動である。
オフクロも体が思うように動かなくなっているので、結局ぼくが買ってくることになる。
auに代理として委任状の書類を出さなくてはならないので、親父の署名を真似て左手で書く。
まあ、その辺はいろいろあったのだが、結局失くしてから1週間かかってしまった。
今回買ったのは、小学生向け携帯。
ワンタッチボタンが3つ付いていて、合計10件の連絡先しか登録できないもの。
ほとんどオフクロとの会話なので、4件登録すれば十分。
電話をかける操作も、3つのボタンを覚えるだけで超簡単。
auの女の子が優秀で、てきぱきと対応してくれた。
一番かける番号をどうします?と聞かれたので、オフクロの自宅の固定電話の番号を教え
たら、au家族割りが効くから、オフクロの携帯の電話番号にしたほうがいいですよといわれた。
・・・そこで、ようやく月に2万円以上も通話料がかかる謎に気付いた訳である。
オヤジはいつも固定電話にかけて長電話していたのだ。
別人に使われているとか、オヤジが浮気相手にかけているんじゃないかとか、色んな憶測が飛び交った。
まったく、年寄りのすることは危なっかしくて見ていられない。
・・・・・・
さて、一番派手なピンク色の携帯をオヤジに渡し、使い方を教えた。
繰り返すが、たった3つのボタンを覚えるだけである。
ところが、オヤジサッパリ覚えられない。
しまいには、耳に当てることさえ忘れる始末。
そのうち、使い方を覚えるだろうと施設を後にする。
心配になって、オフクロに聞いてみたら、全然かかってこないし、電話しても出ないという。
老人になると、老化が加速度的に進むということを実感させられる。
昔のオヤジが記憶力抜群の秀才だったことを知る身にとって、とても寂しいことである。
ベッドの壁には、オフクロとオヤジが写った写真が張ってある。
聞くと、ハワイのヨットハーバーで撮ったものとのこと。
その日付を見て驚いた。
たった5年前だ。
まあ、自分自身の老化の加速も、否応無しに実感させられているのだが。
・・・・・・
(オマケ)
auの女性販売員から聞いたのだけれど、最近は小学生でもスマフォを親が買い与えているそうだ。
小学生用の携帯なんか、子供たちは見向きもしないらしい。
その女性の話によると、まだ早すぎるんじゃないかと、出来るだけ親にアドバイスするようにしているらしい。
やはり、犯罪とかトラブルに巻き込まれるケースを見てきているそうだ。
以前は、メーカーの方で規制をかけていたけれど、法律の改正で、親が自主的に規制するようになったとのこと。
時代はもう後戻りできないポイントを遥かに超えてしまったのだろう。