花火 | so what(だから何なんだ)

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人生のバックパッカーのブログです。
暇はあるけど体力と金と気力がない。
そんなお年頃。
68カ国で止まったまま先に進みません。(;^_^A

・・・・・・・っということで、フィクションです。


A子は恋愛結婚を夢見ていた。


ところが、現実はなかなか思うようには行かなかった。


30歳近くになるまで、恋愛するきっかけさえも無かった。


大学を卒業後、就職した商社で普通の仕事を普通にこなし、


男性社員からも、A子は普通の女の子として見られていた。


特に美人ではないけれど、男性とも普通に会話でき、


社内の合コンにも普通に付き合った。


恋愛相手として、特に問題があるような女性ではなかった。


・・・・・・


ご多分に漏れず、両親が心配しだした。


盛んに、お見合いを勧められた。


A子は絶対イヤだったけれど、ダメ元でいいじゃないかと言う親の説得を受け入れた。


父親が公務員だった関係で、組合が年頃の男女を紹介するようなサービスがあり、それを利用した。


何度かお見合いをした。


思っていた通り、上手く行かなかった。


相手に心がときめくか否かという自分の尺度を当てはめる限り、


お見合いという制度は自分には到底向かないだろうとA子も分かっていた。


・・・・・・


その回も、気乗りがしなかった。


その男は、今までお見合いした相手と、だいぶ変わっていた。


話の最初から、特有の堅苦しさを感じさせなかった。


ごく自然に、男が勝手に喋りだした。


ビデオデッキを買おうと思っているのだけれど、VHSとBetaどっちにするか迷っているというような話をしだした。


かといって、不真面目な遊び人ではないことだけは、はっきり分かった。


A子もつられて、モロにプライベートな話をしてしまった。


会社で問題になっているお局さんがどんなに嫌なヤツか、話をしだした自分に驚いた。


形ばかりの食事が終わると、男は急に「今夜多摩川で花火があるんだけれど、これから見に行かないか?」と言い出した。


小田急線の登戸駅で降り、自動販売機で缶ビールを買った。


男が酒屋の裏でゴソゴソしているから何かと思うと、ダンボールを拾ってきた。


これをお尻の下に敷くと良いと言う。


夕暮れになった土手の道を、ダンボールと缶ビールを持った二人が、歩いて行く。


試し打ちの花火が上がる頃には、土手の斜面にダンボールを敷いて二人で腰を下ろした。


せっかく、白いヒラヒラのワンピースを着てきたのにと思ったが、何かとても楽しい気分になった。


じきに河原は人で一杯になった。


缶ビールをプシュッと開けて、二人で乾杯した。


今まで、こんなに近くで打ち上げ花火を見たのはA子にとって初めてだった。


殆ど真上で大きな花火がドーンと、迫力満点に開いた。


思わず、彼の腕に手を回した。


自分でも不思議だったけれど、とても自然だった。


彼と肩を寄せ合って、首が疲れるのも構わず真上を見続けた。


屋台でビールとおつまみを買い足して、仕掛け花火に点火されるクライマックスまで見続けた。


・・・・・・


A子には最初から分かっていた。


この人とは、この一回きりで二度と会えないだろうと。


そして、その通りになった。


その後、A子は30歳になる前に普通の男とお見合い結婚し、


普通に子供二人をもうけ、


普通の生活をし、


普通に歳を取った。


でも毎夏、花火の季節になると、あの時の記憶が蘇ってくるのである。


あの人は今ごろどうしているだろうかなって。