供給限定と低金利が、需要を逼迫させているようです。
すなわち需要が通常水準に戻っているわけではなく、供給は低迷した価格の前に「売るに売れない」事情によって限定されているに過ぎない。
日本もかなり似た状況にあるようにみえます。資金が豊富で、信用力の高い企業や個人の投資意欲は高いものの、市場では供給が限定的で、高値での売買が余儀なくされたり、割高なワンルームマンション投資に走ったりしている事例が多い。
[ワシントン 8日 ロイター] 米国の住宅価格が足元でやや上向いている。差し押さえ物件の減少と抑制されていた需要の復帰が重なったことが背景にある。ただし住宅市場の回復が加速していくとの期待は禁物だ。
住宅供給の引き締まりで、ローン金利が超低水準で価格もまだ低いこの機に乗じたい買い手の間でし烈な競争が起こり、売り手市場になった地域も出てきた。不動産情報会社ジローのチーフエコノミスト、スタン・ハンフリーズ氏は「需要が市場に戻ってきたのは心強い。買い手がとうとう動き出そうとした」と指摘した。
しかし住宅市場が急速に活性化しているわけではない。多くの住宅所有者は、依然として資産価値がローン残高を下回る状況に置かれたままで、たとえ売りたくても売ることはできない。こうした事情によって今後も市場における供給は乏しくなるだろう。
全米不動産協会(NAR)が発表した6月の中古住宅販売は5.4%減少したが、在庫不足が理由とされた。6月の在庫は約239万戸で、2007年のピーク時の404万戸を大きく下回っている。
別の不動産情報会社レッドフィンのグレン・ケルマン最高経営責任者(CEO)は「需要は多いが供給はあまり多くない。われわれに必要なのは販売の増加であって、単なる価格の安定ではない。今のところ、販売が大きく増えるとは思わない」と語った。
<需給の不均衡>
市場に出回る差し押さえ物件はごく短期間のうちに「奔流」状態から「ポツリポツリ」状態に変わった。その結果、需給の不均衡が生じ、価格が上昇している。
差し押さえ物件が減ったのは、昨年、金融機関の不適切な手続きが問題化したことを受けて、一部の州で規制が強化された影響もあるとみられている。また銀行が、例えば住宅ローンの条件変更など差し押さえ以外の対応を積極化させていることも、背景になっている。
住宅在庫が最も減っているのはフェニックス、サンフランシスコ、ロサンゼルス、ミネアポリス、マイアミといった都市。ハンフリーズ氏は「これらの市場では需要の好転が見られ、在庫が減少している。通常なら、こうなれば売り手が出てくるのだが、これらの市場の一部では、資産価値の問題が供給を抑制する大きな要因になっている。需要があり、売りたい気持ちはあっても、住宅の資産価値がローン残高より低ければ、住宅を売ることは不可能だ」と説明した。
差し押さえ物件の減少により、米国全土で住宅価格は安定化し、一部の都市では上昇しつつある。スタンダード・アンド・プアーズ/ケースシラーがまとめた20都市の5月の平均住宅価格は前月比2.2%上がった。
ところが、こうした価格動向が売り控えを促す面もある。レッドフィンのケルマンCEOは「今が底値と思うなら、価格がもう少し上がるまで売りたくないだろう。足元で売っているのはやむにやまれぬ事情がある人々だけで、機を見て売るような人々はあまり見かけない。後者の人々は、時間は自分の味方で、待てば海路の日和ありだと考えている」と指摘した。
<住宅購入競争激化も>
住宅供給不足のせいで、特に首都ワシントンやシアトル、シリコンバレーなどでは購入競争が激化しつつある。ケルマンCEOは「サウス・パサデナ(カリフォルニア州)のある物件を午前10時に売りに出したが、その日の午後2時までには20人から買いたいという電話を受けた。都心部に近いほど、引き合いが多い可能性が高い」と話した。
さらにCEOによると、例年なら5月と6月が活況になるが、今年は銀行が物件を売りに出さず、住宅所有者も売りを控えたことから、春の方が動きが激しかった。
供給不足が一番深刻なのは、初めての住宅購入者の需要が急増している最も低い価格帯の市場だ。不動産会社ソーンダース・アンド・アソシエーツのシニアバイスプレジデント、ダイアン・サーチ氏は「大方の想像以上に需要は大きい。なぜなら約4年間にわたって潜在的に蓄積されてきたからだ。買い手は価格が下がるのをずっと待ってきた。そして底を打ったとの認識に変わった」と指摘した。
一方でシカゴやフィラデルフィア、シンシナティ、クリーブランド、ミルウォーキーといった都市では在庫の滞留期間が長く、依然として値引きが普通という状況にある。
全般的にみても住宅価格が一本調子で上がっていくことはなさそうだ。価格が上昇すれば、現状で資産価値がローン残高を下回っている住宅所有者が、恐らく売りたいと思うようになるだろう。
ハンフリーズ氏は、住宅価格が上がればこうした所有者などの売りを呼ぶので、価格が上がっては頭を抑えられるという形で階段状に回復していくと予想。V字回復になるのはマイアミやフェニックスなどごく一部の市場だけだろうとみている。