他の店舗の社員から、サプリメントや指導に関する相談が時々くるのだが、先日はG1を担当するトレーナーのからメールでこんな相談がきた。
『お客様に食事の提案をなかなか受け入れてもらえず、結果が出ない。』
成果を提供することがお客様にとっての価値なのだから、焦る気持ちは分かる。
メールには、お客様の状況について一切述べられていない。ただ、困っている、どうしたらいいのか?それだけしか書かれていない。
僕はその社員がセッションを行なっている姿を思い浮かべながら、『方法論やフレームを期待しているのではないか?』そんな心配をした。
そこで僕はカウンセリングや指導テクニックはひとまず置いておき、成果よりもまずお客様と良好な人間関係をつくることにどれだけ集中出来るかが土台であることを伝えた。
どうやったらお客様が自分の提案を受け入れてくれるだろうか?
そうやってお客様と向き合うのではなく、隣に寄り添い、同じ方向を見るところからはじめる。そうすることによってはじめてお客様を認めることが出来る。そしてそのためにどんな行動をすれば良いのかを細かく記して長文メールを返信した。
そんなやり取りを何度か続けると、数日後、お客様のカラダにもようやく変化が出始めてきたという報告が届た。そして僕が伝えたことを実戦して継続していることも。
まずは結果が出始めたことに胸を撫で下ろし、僕がそのトレーナーに伝えたかった事は、うまく届いただろうか?情熱やスキルなんかではないということに気づいてくれただろうか?そんなことを思いながら、僕は自分が送ったメール内容を1つ1つ確認してみた。
そして読み進めながら思った。
『こういうことは、トレーナーとお客様の関係だけでなく、職場での人間関係でも大事なことだなぁ。』
その瞬間ハッとした。また自分の器の小ささに気づき思わずため息をついてしまった。
『悩んでいるお客様と向き合うのではなく、隣に寄り添い同じ方向を見る』
さらに僕はこうも伝えていた。
『解決しようとするよりも、お客様の一番の理解者になることが重要。』
この言葉を僕とそのトレーナーの間にに当てはめるのなら、そのトレーナーと同じ立場になりきったつもりで一緒に悩み、真剣に考え、一緒に解決していく、そんな姿勢でなくてはいけなかった。
だが、僕はそのトレーナーからの最初のメールの内容を読んでこう思った。
『僕からただ解決策だけを聞き出そうとしているんじゃないか?』
そして、彼に対して、
『お客様と◯◯というふうに接していない?』
『お客様のことを、どうして痩せたいのに食事改善に消極的なんだろう?と思ったりりていない?』
『お客様のことを認めてあげていないなんじゃない?受け入れていないんじゃない?』
僕は、彼が見落としているだろうと感じる部分を次々と指摘し、彼の心情や立場など全く考えず、真正面から向きあった返事を返していた。
『向きあうのではなく、隣に寄り添い同じ方向を見る』
と教えておきながら、僕こそがそれを意識出来ていないじゃないか・・・
彼の理解者になってあげられていないじゃないか・・・
気をつけなくてはいけない。きっと僕は知らずのうちに、今までも同じことを繰返しえては自己満足に浸っていたことだろう。僕の中で『こうした方が良い』と思うことを、その通りにすればよいという『答え』として伝え、それを相手が理解する必要があると決めつけていることもあったに違いない。
アリストテレスは相手を説得する3つの要素を
・ロゴス(論理、議論)
・パトス(情熱、感情)
・エトス(徳、信頼)
と呼んだ。
これら全てが必要だが、順番とバランスが大切だ。
エトス>パトス>ロゴス
この順だという。
僕は彼に気づきを与えるつもりだったが、そこに使われていたのは明らかにロゴス(論理)だった。
そしてもし彼が僕の言っていることを実践できない、あるいは理解できていないようであれば、間違いなく『どうして分からないかなぁ、◯◯ということだろう』と躍起になって、さらに具体的な行動を指示していたに違いない。パトス(情熱)の登場だ。
人は何かを伝えようとする時、ついついロゴス(論理)で押し切ろうとすることがよくある。しかしそれではうまくいかず、
『部下がいつまで経っても成長してくれない』
『上司に意見を言っても取り合ってもらえない。』
そして感情的になってくる(パトス)。
最初にとエトス(徳・信頼)。これがないことには論理も情熱も絵空事。
職場だけではない。家族や友人も含めあらゆる人間関係に共通する順番。
エトス>パトス>ロゴス
もちろん必要ではあるがロゴスは一番後。
紀元前300年代の哲人が教えてくれたこの順番は不変だ。
メールを読み返し、やってしまったなぁ・・・と思いながら、ふとそんなことを思い出していた。
相手が困っていると感じたなら、ロゴス満載のメールを打つ前に、すぐに電話をして話を詳しく聞いてあげればよかった。
今更と思わずに、一言伝えようと僕はすぐに彼のいる店舗へと電話をかけた。
きっと僕はいつもこんなことを無意識に繰り返しているに違いない。他にも困っていることがあったのではないだろうか?そんな心配をしながら電話の呼び出し音を聞いていた。
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