おこしくださり、ありがとうございます。
もう1つ、落語のお話です。
こんな内容です。
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1人の若い侍が旅をしていました。
夕方になったので、泊まる宿屋を探していました。
でも、なかなか見つかりません。どこも旅行客でいっぱいです。
やっとのことで、町外れの、田んぼばかりの道に、1軒の宿屋を見つけました。
宿屋の主人が出迎えてくれました。
部屋に入って、その夜はお酒を飲んで寝ました。
それから7日経ちました。
1週間前に泊まりにきた若い侍は、お酒ばかり飲んで、外に出ません。観光地を見に出かけたりしないのです。
心配した宿屋の女将さん、主人に様子を見てきてくださいと頼みます。
そこで主人が泊り客の部屋の前に立って、声をかけました。
「お客さん、よろしいですか?失礼します」
と部屋に入って、
「あの、お客さんが1週間お酒を飲んでくださるのはありがたいんですが…。
お酒屋さんにその分のお金を払わなければならないんです。すきなだけ泊まっていってください、ただ、お酒の代金を今ここで、いただけませんか?」
すると若い侍はこう答えます。
「大きいお金を持ってないが、よいか?」
「ええ、細かいのでもかまいません」
と、主人。
「細かいお金も、ないんだ」
「えっ!?」
このお客さん、一文無しでした!
お金をぜんぜん持っていないのに、1週間も泊まって、その間、お酒ばかり飲んで過ごしていたんです。
びっくりする主人に、1文無しの侍は
「おわびに、絵を描いてあげよう。そこにある真っ白いついたてに描くから、筆と墨を頼む」
この衝立、前に泊まった別のお客さんが置いていったそうなんですが…。
そのお客もやはり、一文無しだったそうです。
さて侍はついたてに何やら描きました。
そして、かならず戻ってきてまた泊まるからと、そのまま出ていってしまったのです。
さて次の日の朝、主人は、侍が泊まっていた部屋を掃除しようと、障子を開けました。
するとついたてから雀が飛び出して、向かいの家の屋根で餌をついばんで、またついたての中に入って、動かなくなりました。
主人はびっくり。おかみさんや近所の人に、話しました。
みんな、絵を見に集まってきました。
ついたての置いてある部屋の障子を開けると、さっきと同じように、雀が絵から飛び出して、向こうの家の屋根で餌をついばんで、またついたての絵の中へ…。
不思議な絵。不思議なついたてです!
それが評判になって、お殿様の耳に入り、千両で買い取ることになりました。
それからしばらくして、この宿屋に年取った1人の侍が泊まりにきました。
そのころは、絵から抜け出す雀を見ようと、お客さんがたくさん泊まりにきていました。
やっとの思いで、年取った侍も部屋に通され、あのついたてを見ました。じっと見ています。
「この雀は、まもなく落ちて、死んでしまうだろう」
突然そんあことを主人に向かって言います。
「困ります!お殿様にも知られて、千両の値がついた絵なんです」
「この絵には、かごがない。餌をついばんで帰ってきても、かごがないと、絵から抜け出るような力をもった雀でも、疲れて、死ぬぞ」
驚いた主人。
「じゃあ、どうすればいいんですか?」
「止まり木を描いてやろう。ところで、この絵は誰が描いたのだ?」
尋ねられて主人が、一文無しの若い侍が描いたと説明しました。
「そうか…」
なにか感じたのか、年取った侍はつぶやいて、ついたての雀の絵に、鳥かごと、その中に止まり木を描き足しました。
これも大評判、お殿様は二千両で買うことを約束しました。
若い侍は、約束通り、戻ってきました。
「あなたのおかげで、この宿屋も繁盛しています。ついたても、2千両で売れることになりました」
と感謝する主人に、
「絵を見せてくれ」」
突然ついたての前に土下座した侍は、
「ご迷惑をおかけしました」
絵に向かってしきりに謝っています。
実は、止まり木を描いていった年取った侍は、この若い侍の父親でした。
喧嘩をして、若い侍を家から追い出したのですが、許してやることにしたのです。
今回若い侍が泊まりにきたのは、父親に許されて、長い道を旅して、これから自分の家に帰るところだったということです。
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主人と女将さんは、貧乏な宿屋が繁盛して幸せです。
若い侍は、父親に許されて、幸せです。
そして絵の中の雀たちは、止まり木のついたかごがあるから、ずっと元気に生きていけます。幸せです。
みんな、幸せになりました!
そういうお話だと、私は思います。
貧乏だった頃の主人は、なぜかよく、一文無しのお客さんを泊めることが多かったようです。
なにも描かれていない衝立を置いていったのも、一文無し。
雀を描いた侍も、一文無し。
女将さんは、そんなそそっかしい主人に、いつも文句ばかり言っていました。
お金を持っているかどうかは、服装や態度で、わかるはずだというのです。そうかもしれません。
でも、おかげで、この宿屋は大繁盛することになりました。
常識ではだめな人、そそっかしい人だといわれても、
それがとても役立つことも、あるんですねえ!
だから私は、この「抜け雀」のお話が大好きなんです。
最後までお読みくださり、ありがとうございました。
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