詩人 意味を成さず  ~掌握~ -3ページ目

詩人 意味を成さず  ~掌握~

私が詩だと思ったものを
ロックンロール

音楽 2018 5 31

 

 

凍った梁の下

少女は横たわる

 

彼女の右足は家政婦に焼かれてしまった

彼女の左足は黒い犬に食われてしまった

彼女の右腕は杭を打たれて腐ってしまった

彼女の左腕は凍傷になり血が通わなくなった

彼女の耳は浮浪者に与えてしまった

彼女の目はいたずらなピエロが持っていってしまった

彼女の声は最初から失われていた

 

彼女の意識は言語を持たず

誰にも通じることのない繭のようなもの

彼女の

唯一

唯一自身とやりとりできるもの

繭のような形のイメージ

形をなさず

形容されない形容を作っていた

 

誰とも交流できないその状況

彼女は苦には思っていなかった

交流できたことがないから

交流を知らない少女

 

苦という言葉すら当てはまらない

 

彼女には膨大な時間があった

彼女はその膨大な時間の中で

多分それは彼女の遊びだったのだろう

繭が遊歩する

繭が散歩する

 

ポンポンから始まった

彼女にとってはポンポンではないのだろうが

血流の打撃音が彼女を楽しませた

そこで繭は遊歩した

ポンポンに合わせて

散歩した

 

ものを意識できる感性が芽生えた少女の試み

繭を自在に操る意識

鼓動するビートに

繭をのせる

ああいいううええおおおおおおおおおおおおおお

 

言語ではない言語

彼女自身を躍動させる彼女の命

 

ビート

レベル

癒し

娯楽

高まり

発達

発展

リピート

スタッカート

主旋律

オブリガード

アクセント

興奮

リフレイン

リフレイン

リフレイン

フレア

未来

 

ビート

メロディ

 

無限

獲得

渇望

 

 

 

 

 

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遠雷 2018 5 11

 

 

こんなに近くで吐息も髪の香りもぬくもりも感じて

キスはしない

鼓動までありありと

今までの失敗した愛の刻印までもはっきりと

近くにいる

これ以上ないくらい

キスはしない

できない

 

募る

募るが響きがある

誓ったはずの距離を超える

膜は越えてはいけない

 

時計の針を無理やり12時にさせない

強引に留まる時間と隔たり

遠くで雷が鳴っている

雨が降ってもかまわない

ロマンチック

ドラスチック

 

募る響きは繊細な音楽に生まれ変わる

失ったコードを補完する体温

 

雷の音がきこえる

雷の音が遠くから聞こえる

 

上昇する雲に思いをはせる

 

単純なことだ

 

何もかも投げ捨てて受け入れる

その選択はない

 

単純なことだ

 

 

 

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意味の意味   2018 5 14

 

 

すごい奴らがいる

言葉の魔術師

亜空間から50音を操縦する

奴らは文法を熟知して

それを見事に脱出する

 

意味を理解し

無意味に並べて

読み手を翻弄する

しかし

 

奴らはわかっている

手をはなれた詩はみんなのものであると

自分の込めた意味を越えて

自分の込めた意味に反して

その詩を読む人を

共有しようという人を

わかっている

 

詩は自由だ

様々な読み手が

自由に言葉を共有する

 

国語教師みたいなバカな野郎が詩を分断する

受験テストみたいな知識の試しあいが詩を愚弄する

 

意味を押し付ける

価値を押し付ける

 

心に悲しみを抱えて

悲しみを読み取って何が悪い

心に憐れみを抱えて憐れみを読み取って何が悪い

 

それを無理やり親しみに矯正する

そんなのは日本語ではない

 

凡ての詩の中から

子どもをだましやすい詩を選ぶ

凡ての詩の中から

理由を後付けできる詩を選ぶ

 

教科書は

ときに料理する人間によって腐っていく

 

死の中から詩を選んで何が悪い

生の中から価値を選んで何か悪い

 

押し付けられた読みに

いったい何の可能性があるんだ

 

子どもの作った詩に

100人教師がいれば

100人同じ読みがあるとでも思うのか

指導書に騙される愚かな大人

直したり付け加えることで

子どもの純粋の表現が殺されていく

 

詩に上下があるのか

詩に上下があるのか

 

すごい奴らの果てしない詩もあれば

小さな感性のすがすがしい詩もある

 

定型だけではなく

自由詩や

ときに散文詩が

いったい何が悪い

 

題名を読め

単語を読め

リズムを読め

技法を理解しろ

 

それ以外のすべてに手を出すな

口をだすな

 

詩を書くすべての人間に勝手に優劣をつけるな

詩の意味を完全に共有できるなんて幻想を捨てろ

 

言葉の無限のつらなりの可能性を示唆しろ

言葉の無限のつらなりの可能性を示唆しろ

 

詩を読む

君も読む

僕も読む

お互いの読みの違いから

その詩の威力を知る

 

これ以外の押し付けはすべていらない

 

教師が生徒と意見をぶつけ合う

それは素晴らしい

 

ただいつも教師が正しくて

それがテストになるのが腹立たしい

教師が詩を書いているわけではないのに

 

みんな好きなように読もう

みんな好きなように生きよう

 

詩にはそういうことが書かれている

意味は君の全身で感じればそれでいい

 

理屈を知ることと詩を感じることは

親指と小指ぐらい違うんだ

 

 

 

 

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握りこぶし 2018 6 6

 

 

強く

強く

握るこぶしを振り上げず

大人って一体なんなのかを考える

そういえば僕は前よりも我慢できるようになっている

これがいいのかどうかはわからないけど

大人ってのはそんなものなのかとやはり考える

 

我慢に限界はあるのだろうか

 

世界は平和になるのだろうか

 

 

 

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愛をください 2018 6 26

 

 

愛をください

君をください

たらの芽が

摘まれる前に

 

愛をください

君をください

知床の鳥が

わななく前に

 

愛をください

君をください

朝顔の開花が

廃れる前に

 

愛をください

君をください

薬のボトルが

空になる前に

 

愛をください

君をください

綿のシーツが

奪われる前に

 

愛をください

君をください

櫃の米が

かびる前に

 

愛をください

君をください

悩める子が

競う前に

 

愛をください

君をください

老人に箸を

突き立てられる前に

 

愛をください

君をください

零時の針が

交尾する前に

 

 

 

 

 

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リピート君と僕との愛と  2018 4 10

 

少しかすんだ雑踏の中確実に君は目の前にいる

多少返事はそっけないけどあの頃よりも美しくなった

乾いた指の隙間から零れ落ちないように

君の全てを今度こそ包むのさ

 

リピート僕と君との愛と

 

誰もを傷つけたくなくて君一人を守ることができなかった

優しさはときに鈍い刃物だとしばらくたって教えられた

そんなに暑くない夏の日に黙って君は去っていった

サイダーは口をつけられることもなく

生ぬるく機嫌を損ねていた

 

 

僕の知らない君の歴史に込められた道がある

2度出会うための何かが落ちている

僕にも少しは歴史が増えたが失ったあとに失うものはない

君の目をみてこう言う

日向はけっこう暖かいけどもしよかったら寄り添ってくれ

 

 

リピート君と僕との愛と

 

 

何も苦しめるものがない都合の良い世界に僕は理想を求めていた

そこに君は居場所を求めなかった

僕の根本は変わっていないかもしれない

でも変わろうとした努力をみせたいと何度も考えた

それはあり得ないし野暮だし大人ではない

今君は目の前にいる

立ち止まって僕と話をしている

僕は慎重に話している

あと少し

あとほんの少しあとに僕は大胆に行動する

あり得ないし野暮だし大人ではない

なぜここで君と再会できたのだろう

あり得た偶然に

だから野暮でも大人じゃなくても僕は大胆に行動する

乾いた指の隙間から零れ落ちないように

君の全てを今度こそ包むのさ

 

 

リピート君と僕との愛と

 

夏に別れて冬に再会した

日向はけっこう暖かいけどもしよかったら寄り添ってくれ

 

 

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過不足の招待 2018 8 29

 

 

四つ葉のクローバーを見つけられない

今度こそと

学校の南の公園で姉はあっという間にみつけだす

ほらこの四つ葉のクローバーあげるよ

もらうよ

嬉しかった

どこにあるのと聞けば

どこにでもあるよと言われた小学生のころ

 

四つ葉のクローバーは幸せを呼び込む

 

らしい

 

クローバーの上でバイクを降りる

彼女が四つ葉のクローバーを探し出す

しおらしくこっちに持ってくる

子供の頃と変わらないクローバーを見て

辺りを探してみた

 

やはり自分では探し出せない

 

本を読む

 

しおりには簡素なクローバーのマークが書かれていた

 

満ち足りた中

俺はもう十分な幸せに包まれていて四つ葉のクローバーをみつけだせないのかもしれない

 

であれば

姉や彼女の足りない部分は一体何なのか

 

そんなことを考えながら何本も鉛筆を削った

 

 

 

 

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俺のうわさ 2018 5 30

 

 

なぜ俺のことがうわさになるのだろう

 

それをなぜ俺に丁寧に報告してくるのだ

聞きたくもない情報

俺は石のように閉じこもって生活していたい

今は友達を作りたいとは思っていない

ここは友達づくりの場所ではないと思っている

苔のように

滴りのように

隠れて生活している

空耳や

セミの抜け殻のように

まるでなかったことのように生活している

服だって地味に

誰にも目を合わさず

挨拶してくれた人にだけ挨拶をし

誠実に話しかけてくれた人にだけ誠実にお話をして

慎重に貝になっているのにも関わらず

なぜ俺の噂が俺の耳に入ってくるのだ

安楽とした俺のテリトリー

やっと手に入れた俺のカートリッジ

いつぞやの俺の風貌

いつぞやの俺の空気

いつぞやの俺の声色

知らぬ間の俺の色欲

確実な何もなく

俺は裁かれる

 

俺のうわさを捨てろ

ましてやここまで丁寧に俺に話しかけてくれた君は

「私はいい人だと思っていたけどみんなはそうは思っていなかった」

なんて

もう俺の印象なんて話題にするために君は失言だらけで

俺にはもうどうすることもできずの甲殻類になって

これからもそれを聞く

繰り返しそれを聞く

丁寧に丁寧にそれを聞く

うんざりする言葉が毎回付け足されて

生殺し一丁出来上がり

必要のない情を三枚におろし

俺の前に完成するいただきます

 

どうとらえる

前向きに俺に興味をもってると考えるのか

後ろむきにタブロイドスターを気取るか

たいしたことのない俺のメダカのようなうわさ

それを気にする人間もいる

俺のガラスのメンタルを思い知れ

極小の世界のくだらないゴシップ

自分が的でなければ俺の中に何も生じない

知らなければ――

それでいい

勝手になんとでも言ってくれ

俺に絶対に伝わらないように勝手にやってくれ

完全犯罪

企めよ完全犯罪

知らぬが俺

この俺のどこに話題になる要素がある

 

よだれを拭けよ淑女たち

 

 

 

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「雨」    2019 7 5

 

 

期待に応える石になる

殉じる魂を併せもって

多くの傷を癒しボロボロになった

君のさびしい笑顔を知りながら

 

雨だからこそ歩きたくなるんだ

人の痛み知り俺も痛くなる

 

そして未来の申し子は

勝手に互いを許しあう

多くの傷を癒しボロボロになった

君のさびしい笑顔に背を向けて

 

雨だからこそ歩きたくなるんだ

人の痛み知り俺も痛くなる

 

 

 

 

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詩「雲が泣く鳴く」    2018 5 16

 

 

長男が友達に石を投げた

前から公園で仲間外れにされていただけでなく年下からもバカにもされていた

今日もそんな感じで腹が立って石をなげたらしい

そうしたらその年下の子に石があたった

一応友達だ

妻からその話を聞いた

長男を連れてスーツを着て謝りにいった

相手方の玄関を開けたら下が血まみれで

お母さんが出てきて「全然大丈夫ですよ」って

「全然大丈夫ですよ」って

そして「うちの子がいつもひどいことを言っていてごめんなさい」って

相手の子をみたら頭にガーゼをはってTシャツが見事に血まみれで

相手のお母さんが「全然大丈夫ですよ」って

長男はごめんなさいって言えなかった

俺は長男に何も言えなかった

このお母さんは前から息子が俺の長男をバカにしていたのを知っていたに違いない

ひたすらに頭をさげた

お互いに

 

 

俺は身長が高いしスポーツもできた

だから次男がこんなに小さく育つなんて思いもしなかった

こんなに運動オンチだとは思いもしなかった

キャッチボールしてもボールがどこかにとんでいく

決定的に打てない

たまたまさっきの公園でお友達と一緒にサッカーをした

俺も珍しくそこにいた

新しいサッカーボールを買った日

俺も長男も次男も喜んで思いきり公園に走っていった

それをみかけた近所の子が集まってきてみんなでサッカーになった

どの子も体が大きくて

次男なんてけちょんけちょんで

そうしたら次男が泣くんだよ

新しい僕のボールに僕は触れないって

相手はちゃんとサッカーをプレーしている

その公園の誰一人として悪い奴はいない

俺は次男に何も言えなかった

 

 

うっすら聞いてはいた

妻は中学校のとき壮絶ないじめにあっていた

それでもかたくなに自分を変えずに変えるすべを知らずにいじめられたまま学校に通った

妻は美しい

普段は話し方も落ち着いている

そして「いじめ」や「バカにされる」というような言葉にヒステリックになる

息子たちが絶対にいじめられないように

祈り豊かに見守ればいいものの

少しでも息子がけなされた話を聞くと相手の家にクレームの電話をする

まずまずのもめごとになる

そして息子たちは友達を失っていく

息子たちは人生を考えるチャンスを失っていく

俺は妻に何も言えなかった

妻は一方的にゆがめる

愛という名のもとに

 

 

雲が泣く鳴く空の中

雲が泣く鳴く空の中

独りぼっちな雲もいる

くるくる回る雲もいる

低く高く

薄く厚く

 

雲は泣く鳴く空を行く

雲は泣く鳴く空を行く

雲は無理せずそこにいる

雲はさだめを知っている

姿をかえ

形をかえ

 

俺といえば好きなようにやってきた

欲しいものは全て手に入れるために強引にやってきた

それが正しいと思っていたし当たり前だと思っていた

仲間外れになったことはある

でもそれは俺のやりすぎで人が離れていっただけのことで

そのやりすぎにはそこそこ自分で気づくことができた

制裁を受けるところではしっかりそれをかみしめてきた

交友関係は良好だと自分では思っている

という言い訳で

長男や次男や妻のことを俺はなんとなくわかっていたのだけれど

そこには触れないようになんだかタブーというか

いやそんなことじゃない

俺はカッコーの群れの中

自分がトンビだと勘違いしていただけだ

そして家族を捨てた俺にかける言葉なんてない

 

 

雲が泣く鳴く空の中

雲が泣く鳴く空の中

独りぼっちな雲もいる

くるくる回る雲もいる

低く高く

薄く厚く

 

雲は泣く鳴く空を行く

雲は泣く鳴く空を行く

雲は無理せずそこにいる

雲はさだめを知っている

姿をかえ

形をかえ

 

 

 

 

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