フィレンツェの郊外にあるチェレート・グイディという小さな町について8回目です。

前回の7回目はこちらからどうぞ。

 

ヴィラ・メディチェア・ディ チェッレート・グイディ(メディチ家別荘)については

今回で最後になります。別荘内の絵画などの展示品を画像で紹介しながら、

このメディチ家の別荘で起こった悲劇のエピソードもご紹介します。

 

チェレート・グイディ博物館 絵画

 

この上の絵は決して大作ではないとは思いますが、やはり目につくのはあのお方、

ロレンツォ デ メディチ 通称 ロレンツォ イル マニフィコ (1449~1492年)

Lorenzo di Piero de' Medici detto Lorenzo il Magnifico

が描かれているところでしょうね。

 

ロレンツォはどちらかというとあまりかっこいいほうではなかったらしいのですが、

人を引き付ける声と話術で優れた政治や外交能力をもち一般市民からは絶大な支持を受け

学問や芸術のパトロンとして彼のもとでルネサンス文化は最盛期を迎えた、

といわれる"メディチ家の歴史の中で最も有名で重要な人物"の一人であります。

そんな彼が象徴的に描かれているのがお分かりになるでしょうか?

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ロレンツォ・イル・マニフィコについてはブログの過去記事やウィキをご覧ください。

 

①ルネッサンスの真の意味とは?

 

ウィキ(日本語と宜しければ画像だけでもイタリア語のほうもご覧ください)

 

ちなみにロレンツォを描いた絵は、他のメディチ家の別荘にもありました。

⑤ポッジョ・カイアーノ 2階部分

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チェレート・グイディ博物館

 

ちなみに、この別荘を作らせたメディチ家のコジモ1世(初代トスカーナ大公)は、

ロレンツォ・イル・マニフィコの直系ではなく、傍系出身

(ロレンツォ・イル・マニフィコの祖父コジモ・イル・ヴェッキオの弟のロレンツォの子孫側)

ですが、コジモ一世の母はロレンツォ・イル・マニフィコの孫でもある為、

直系との血も混ざっているので当主として最適だったのでしょうね。

 

フィレンツェ近郊 チェレート・グイディ博物館

Arazzi アラッツィ  精巧な毛織物で表現された物語絵

 

 

 

***  ***  *** ここからはこの別荘で起こった悲劇のお話***  ***  ***

初代トスカーナ大公 コジモ一世(1519-1574年)の娘、

イザベッラ・デ・メディチが1576年7月16日チェッレート・グイディの別荘内で

33歳という若さで世を去りました。

 

長い病気と断続的な熱の結果の死であるとか、

イザベッラの兄弟の2代目トスカーナ大公であるフランチェスコ一世からは

髪の毛を洗っている間に死んだ、という公式の発表があるそうですが、

長い歴史的記述と歴史編纂によると彼女のあまりにも早急すぎた死は

実は夫の従弟との不貞行為を責められ、

夫である初代ブラッチャーノ公パオロ・ジョルダーノ・オルシーニ

(1541-1585年)に首を絞められ殺害されたのだ、という。

そして、今もなおイザベッラの幽霊が別荘に現れるという噂まで。

 

死後には彼女の死にまつわる醜聞がヨーロッパ中に急速に広まりました。

 

ジョン・ウェブスター John Webster (1580 ?– 1634?年)という英国人劇作家による

『白い悪魔』 (しろいあくま、The White Devil)という作品があり

演劇作品の中ではイザベッラの暗殺や夫と夫の愛人にまつわる悲劇が

描かれ、それ以降、何世紀にも渡りルネサンス期の黒い歴史の一つとして

皆に広まっていきました。

 

イザベッラ デ メディチ 殺人事件

ブラッチャーノ公妃イザベッラ・デ・メディチ(1542-1576年)

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さて、これら語り継がれていることがが実際真実なのかどうかはわかりませんが、

今ネット上でも調べると殺人だったという風に語られる事が多くみられます。

 

チェレートグイディの別荘のイタリア語のウィキによると、

現在美術館となっている室内にイザベッラの全身の肖像画が置かれている部屋は

実際に殺害されたと推定される場所であり、

第二次世界大戦の間に起こった略奪が行われる前までは、

暗殺に使われたとされる首を絞めるひも状の凶器まで保管されていたということですが、

これもどこまでが真実かもわかりません。

 

あくまでも個人の感想、仮説になりますが、なぜそういうかといいますと、

本当にこんな悲しい事が起こったなら凶器をわざわざ保管する人がいるのだろうか

と思いますし、その後凶器が第二次世界大戦中の略奪でなくなってしまったという

いかにも曖昧過ぎる内容に少し後付けされた感が残ります。

 

男女の愛のもつれで嫉妬により起こった殺人である、という検察側の主張が~

という言葉が現代のニュース番組でもよく耳にしますが

性愛関係の話となると、部外者には想像できない何かがあったのだろうと思わせる

想像力が生れ、第三者にはなぜか納得させられやすい為、よく使われるのだと思います。

それはある意味、無実の人間を犯人にでっちあげやすいストーリーの代表であり、

実際に今もなお現代においても使われている手口なので、

もしやこの500年前に起こったという暗殺事件についても実はそうかもしれないという事を

心にとどめておきたいと思いました。

 

それと、今も昔も通常金や権力のある人間同士の結婚は

主に愛だの恋だの理由で決まるのではなく、お互いの利益の為に行われる場合が多く、

結婚=お互いの未来のための家族間の契約という感じで

どちらかというと恋愛がしたければ外でする傾向であると思います。

 

そういうのもあり、500年前の有力貴族同士の結婚となったら、愛人の存在だけで

殺人が起こるものかどうか?と色々考えていたところ、

 

「4世紀以上の後ほどにイザベッラ・デ・メディチの夫の無実が証明される」

という、イタリア語のネットニュースを発見!そして

 

題訳 イザベッラ・デ・メディチの失われた名誉  (エリザベッタ・モーリ作)
という本の存在をしりました。
 
いや~、ブログを書かなかったら、こんなところまでたどり着きませんでしたよ。
あら、こんなところで殺人事件が起こったのね、で終わりだったと思います。
本当に皆さんのおかげです。<(_ _)>
 

さて、両者を簡単に訳してまとめますと

(一部 WIKI ITALIA Isabella de' Medici欄に書かれているモーリ氏による説も含みます。)

 

"今日までイザベッラに関しての情報に色々な混乱がありました。

彼女の悲劇的な死は数世紀に渡り複数の作家や詩人、歴史家インスピレーションを与え、

ウェブスターのエリザベス朝演劇から、アレクサンドル・デュマ・ペルの小説、他にも

イザベラはまるでとどまるところのない、禁じられた情熱に溺れる女性として脚色されていきます。

しかしこれからは今までの通説は通用しません。

夫が嫉妬にかられて妻を殺害したとされる浮気の証拠だといわれる手紙は

どこにも彼女が書いたという確たる証拠は一切ないということ、

オルシーニ家の保管文書として残された手紙の数々を通して

イザベッラとパオロ・ジョルダーノ・オルシーニは愛のある夫婦であったことが分かっています。

 

そして彼女は殺人ではなく恐らく尿器官系の病気のせいで自然に死んだ、という事。

エリザベッタ・モーリ氏の約20年にわたる研究の結果のおかげで真実を知ることにより

イザベラに対するあまたなる誹謗中傷を返上し今こそ、失われた名誉を取り戻すことが可能なのです。"

 

というような、内容でした。

 

イザベッラ夫婦は幾世紀にかけて恐らく

一部のアンチメディチのイタリア人やイギリス劇作家、フランス人小説家等諸々によって

偽のイメージを作り上げられ、それが独り歩きして今となってはまるで事実のように

認識されるようになったのかもしれません。

 

日本のウィキを読んでると、まるで殺人事件が史実かのようにそれだけが書き込まれていて

前々からわかっていましたが誰でも書き込めるウィキには注意して読まないといけないな、と

再認識しました。

 

ちなみにジョン・ウェブスターという上記にある「白い悪魔」を書いた人物は

ウィキによるとシェークスピアと同時代に活躍した人で

彼については実は全く知りませんでしたが、なんとなく何かがつながり分ったような気がします。

 

あくまでも、巷で言われている仮説の域かもしれませんが、

シェークスピアという人物は実は存在していないかったとか、

複数いる説など謎が多くがあるのを動画で知ったので、

 

恐らく彼の背後にはメー●ンだとかイル●ナティなどの秘密結社の組織がいたんじゃないかと妄想していたのですが、イザベラ・デ・メディチを貶めるきっかけとなる劇を書いたウェブスターと数世紀に小説を書いたというデュマ・ペルも、きっとその類ではないかという結論にいたりました。

 

さて、今回の記事はいかがでしたか?('ω')ノ

よろしければ皆さんのご感想をお待ちしております。

 

次回はチェッレート・グイディのプレゼピオについてです。お楽しみにうさぎ

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