父が亡くなってから葬儀まで数日の時間があって、その数日は悲しいというか…いや、それよりもぽっかりと心に穴が開いたといった表現のほうがあっていたと思います。
これを“喪失感”というのでしょうか?
私は19歳になる年に、大学進学のため実家を出ました。
19歳から一人暮らしを始めたので、実際に父と一緒に生活したのは人生のうちの18年だけになります。
大学は関西だったので、一人暮らしをしてたと言っても、よく実家に帰っていましたし、両親も時々遊びに来ていました。
大学卒業後、23歳になる年にイタリアに来て、それからは…
1年に1回会えるか会えないかになりました。
そして、ここ3年はコロナのために会えませんでした。
今年の4月でイタリアに住み始めて19年になります。
ついに、日本の実家で過ごした年月よりも長い時間をイタリアで過ごしていることになります。
そう考えると…父と一緒にいられた時間はとても短かったのだなと思います。
それでも、よくビデオチャットをしていたし、ピピウが生まれて、NICUを退院してからはほぼ毎日ビデオチャットをするようになりました。
だからそれほど距離を感じていなかったのかもしれません。
実は過去に一度、“もう父には会えないかもしれない”ということがありました。
私にとって2017年は最悪の年でした。
ピピウが予定よりも3か月早く生まれて、10数回にわたる手術と7か月のNICU生活。
それと同時に父の容体も悪く、もしかしたら年が越せないかも…という状況だったのです。
2017年は父と息子を失うのではと本当に辛い年でした。
2017年の秋。
ピピウの容体は命の危機を脱したものの、父のほうがかなり危険な状態でした。
父も、日本の家族も、ピピウが大変なことを知っていたので、その時も「帰ってこい」とは簡単には言われませんでしたが、ピピウのNICU退院が決まり、父が「ピピウにクリスマスプレゼントをやりたいから、お前だけでも帰ってきてくれ。」と私に言いました。
ダンナと相談し、お世話になっていたNICUのドクターと看護師さんとも相談して、ピピウの退院後、私一人で3日~4日だけ日本に帰ることにしました。
出発前日の夜、オンラインチェックインをして、点滴に繋がれたピピウと過ごしていると…
ピピウの顎から首にかけて、パンパンに腫れだしたのです。
NICUのドクターにすぐに電話すると、「カテーテルが体内で破損した可能性がある。点滴を外して、今すぐ救急に連れてきて。」と。
すぐに救急に連れて行き、診てもらうと…
やはり、NICUのドクターの予想通り、カテーテルが体内で破損していたようでした。
外科のドクターが来て、「夜が明けて、午前中に、損傷したカテーテルの除去と新しいカテーテル挿入の手術をします。」と。
その時すでに、私の日本出発まで、数時間しかありませんでした。
事情を知っていたNICUのドクターと外科のドクターが
「お母さん、もし、日本へ行きたいなら行きなさい。ピピウの手術は命に係わるような手術ではないわ。」
と言ってくれました。
簡単な手術だと分かっていました。
それでも…
手術室で全身麻酔をかけられるピピウを思うと、日本へは発てませんでした。
ピピウの手術前、すでに乗るはずだった飛行機が出発したあと、日本の母に電話して事情を説明しました。
日本へは帰れないと。
母が「そうか…。ピピウはお母さんに離れてほしくなかったんかなぁ?もうそれは、日本に来ないでピピウのそばにいろってことだね。」と言ったのを今でも覚えています。
その時は、“もう、父には会えないだろう”と覚悟しました。
結局、乗れなかった飛行機のチケット、事情を説明すればもしかしたらいくらか返ってきたか、日にちを変更できたかもしれないのですが…
ピピウの手術に、父への不安、申し訳なさ…もういろいろ疲れ切ってて、結局、手続きせず、チケット代も水の泡。
その時もルフトのチケットだったなぁ~。800ユーロ弱払った記憶が…。今思えば、もったいない。でも、当時、手続きする時間も、心の余裕もなかったのも事実。
本当に2017年は最悪の年だったのです。
ところが…
ピピウに続き、父にも奇跡が起こったのです。
危ないと言われていた父の容体が徐々に回復。
ちゃんとピピウと日本へ行けるようになるまで、父は待っていてくれたのです。
2017年に私が日本へ帰れなかったのは、逆に父の生きる力を更に引き出したのでしょうか?
「ピピウをこの手に抱くまでは死ねない。」
そう言っていた父は2017年の命の危機から5年も頑張ってくれて、3回ピピウに会って、ピピウを抱っこしてくれました。
コロナがなかったら、もっと会えてただろうに…。
ちょっと話が脱線したうえに、長くなったので、すみませんが続きます
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