『人間』加古里子(かこさとし) | ほたるいかの書きつけ

『人間』加古里子(かこさとし)

 こないだの『神様のパズル』のエントリ がらみで一つ思い出した。加古里子(かこさとし)の絵本、『人間』がスゴイのだ。どんなにスゴイか、中身を語るより、各ページのタイトルを見ていただくのが早いだろう(見開き2ページで1タイトル)。
  1. 宇宙のはじまり
  2. 地球と海のたんじょう
  3. はじめてできた生命
  4. あらわれた海の生物と魚類
  5. 植物と動物の上陸
  6. 恐竜とその大絶滅
  7. 鳥類とほにゅう類の時代
  8. 人類の祖先とその歩み
  9. 地球の生物の歴史
  10. 子をうんでそだてる人間
  11. おなかのなかの赤ちゃん――胎児
  12. 成長してゆく子ども――乳児から成人へ
  13. 骨と筋肉のはたらき
  14. 食べ物とその消化の道すじ
  15. いろいろな内臓のやくめ
  16. 心臓と肺のようす
  17. 脳と神経のしくみ
  18. 人間の手とはたらく力
  19. 人間の知恵と知識のつみかさね
  20. 美しさをもとめる人間の心
  21. 人間のあつまりと社会の混乱
  22. 死のおそれと悲しみをこえて
  23. あなたが、そして君も、人間です
これを見るだけで、なんと広く深い「人間」のとらえ方か、と驚嘆せざるを得ないだろう。
 最初の「宇宙のはじまり」では、ビッグバンからはじまって、太陽ができるまでが一気に語られる。クォークや元素合成、強い力・弱い力なんて言葉も書いてある。子どもにはチンプンカンプンかもしれない。でも、きっと、「なんかすごくワクワクドキドキする」に違いない。
 人間が登場するのはこの本の半ばからだ。それまでは延々と、人間が誕生するまでの世界を描いている。それはつまり、人間というものが、世界から切り離されて独立に存在するのではなく、どのようにこの世界に位置づけられているのかを明確にし、宇宙の・地球の中の人間、様々な生物種のなかの人間、という姿を明瞭に描き出す。
 人間の解説は、その物質的な部分(肉体的な部分)だけにとどまらない。豊かな精神活動についても丹念に描かれている。外界にはたらきかける、能動的な存在としての人間、知識を集積し、美に感動する人間の心。さらに「個」を越えて、集団としての人間にまで触れられている。
 百科事典的な描き方ではなく、ものの見方を教えてくれる絵本、と言っていいだろう。

 1995年の出版だが、17年の歳月をかけて製作されたそうだ。その歳月に相応しい、壮大なスケールである。子どもは勿論、大人でも十分に読み応えのある絵本である。

人間 (福音館のかがくのほん)/加古 里子
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