先日、生活保護制度における「自動車の所有」
に関する新聞記事を読んで、考えさせられました。
生活保護制度の原型は1946年に遡り、日本国憲法に基づいた公的扶助の中核として1950年に確立されました。
現在、
「生活保護を受けられる方は、原則として車の所有が認められない
」
というのがルールとなっています。
これは、車が資産と見なされるからですが、多くの人は所有を認められていません。
今日は、その制度の原則と例外、私自身が車を所有して痛感した「維持費」の高さ
を交えながら、この問題についてお話していきたいと思います。
目次
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原則と例外:時代とともに変わる「必需品」の線引き
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「車の維持費」という名の重い現実
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自立への壁? 新聞記事に見る切実な事例
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制度運用への提言:不正を防ぎ、本当に必要な人に回すために
原則と例外:時代とともに変わる「必需品」の線引き
まず、生活保護制度では、車は原則認められていません。
でも、例外
として認められるケースがいくつかあります。
- 通勤に不可欠なとき
- 病院への通院
に使うとき - 住んでいる場所に公共交通機関がないとき
かつては、エアコン、冷蔵庫、テレビといった家電製品も「資産」と見なされ、特別な扱いが必要な時代がありました。
しかし、現在ではこれらは「生活に不可欠な必需品」として認識され、資産としての管理が不要になっています。
特にエアコンは、30年ほど前には我が家や学校の教室には、設置されていません
でした。
当時の夏は暑くても、「夏だから仕方ない」と受け入れて過ごしていました。
ところが、現代の夏は命に関わる危険な暑さとなり、北海道でさえエアコンが必要なほどです。
熱中症や脱水症状のリスクが高まり、健康な人でも日常生活を送るのが困難な時代です。
そのため、こうした生活家電に対する社会の認識の変化は、現在の常識に照らして認められるようになりました。
これに対し、自動車の必要性は、住む場所や環境によって大きく異なり、その線引きは非常にあいまい
だと感じられます。
「車の維持費」という名の重い現実
私自身、初めて車を持ったのは大学3年生のときでした。
たまたま姉から譲ってもらえたのですが、車体そのものの値段よりも、その後の「維持費」がとんでもなく高い
ということを、この時初めて痛感しました。
新卒で社会人になったとき、その車を所有し続けるか、手放すか、悩みました。![]()
結局、所有することを選びましたが、そのためには実家に住まわせてもらい、自分の生活費を大幅に削減する必要がありました。
今は違う車に乗っていますが、大体7年前に新車で200万円くらいで購入しました。
購入費用は一旦置いておいて、維持費だけを見ても、その高さに驚きます。![]()
車体価格を除いた、最低限必要な年間の維持費ってどれくらいだと思いますか?
- 毎年払う任意保険代
- 2年に1回の車検代
- 毎月の駐車場代
- ガソリン代や税金
- タイヤ、バッテリーなどの消耗品の交換
ざっくり計算すると、車体価格を除いても私の場合、年間25万円は最低でもかかります。
これって、月に換算すると約2万円。
この2万円という金額を、生活保護で暮らしている方が払えるでしょうか?
生活保護の単身の方の一般的な支給額は月額10万円から13万円
程度となるケースが多いようです。
その中で、最低限の生活費を捻出しながら、この2万円を車に充てる。
中古で車体20万円とか30万円の車を買ったとしても、結局この維持費はついて回ります。
もし「生活保護だから任意保険は入らなくていい」なんてことになれば、それこそ無保険車による事故という、より大きな社会問題につながってしまいます。
制度として車の所有を認めるなら、「維持費」の現実的な問題までセット
で考えるべきだと、と強く思います。
自立への壁? 新聞記事に見る切実な事例
新聞記事で、車所有を希望する30代の母親の事例がありました。
4人の子ども
を抱え、仕事と子育てを両立するために車は所有したいというケースです。
- 通勤時間:車なら30分 → 公共交通機関だと片道1時間半。
- 子育て:未就学児の保育園送迎、子どもの病気の通院。
往復で3時間を通勤に費やしていては、子育ては破綻します。
この場合、車は「贅沢品」ではなく、「自立して働くための道具」です。
彼女の場合、最初は処分を求められたそうですが、最終的には所有が認められたとのこと。
これは、自立支援を優先した妥当な判断だと思います。
しかし、個人的な考えとして、その方は離婚の経緯や子供の人数など、過去の選択に厳しい意見を持つ人もいるでしょう。
私自身も、子どもを育てる環境ではない場合は、身の丈にあった生活や家族構成を選ぶべきだと考えてしまう部分もあります。
ですが、過去のことはもうどうにもならない。
今、目の前にいる子どもたちの未来と、本人が自立を目指そうとしている努力を、制度は止めるべきではないと思います。
制度運用への提言:不正を防ぎ、本当に必要な人に回すために
とはいえ、全国の生活保護世帯のうち、平均4.5%が車の所有を認められているという数字には、正直驚きました。
「ちょっと多すぎるのでは?」
と感じてしまいます。
やはり、車の所有を認めることで「ずる」をする人が出てくるリスクを考えると、ハードルは高く、ルールは極めて厳格
に運用すべきです。
納税者として、私たちの税金が本当に困っている人のために使われてほしいからです。
車の所有を認めるために絶対に守るべき3つのルール
- 車種を限定する:
もちろん高級車、新車は論外。維持費が安く、移動手段としての役目を果たすための最低限の軽やコンパクトカーなどに限定すべきです。
- 任意保険の加入を必須化する:
事故は誰にでも起こり得ます。
任意保険に加入していること、その保険料を生活費から確実に捻出できることを、毎年書類で証明させるべきです。
- 使用目的と頻度を厳格に証明させる:
「通勤に必要」なら、どのくらいの頻度で、どれだけの距離を走っているのか。
子どもの送り迎えや病院の通院についても、詳細な記録や証明書類を定期的に提出させ、遊びに使われていないかを厳しくチェックすべきだと思います。
このくらい厳しくしないと、制度を悪用して嘘をつく人が現れ、本当に生活に困りながら懸命に頑張っている人たちが不公平な目にあってしまいます。
この制度に頼りきってしまったり、「車が簡単に持てる」といった誤解が広がることは、制度の趣旨に反するため、絶対にあってはなりません。
車両の保有許可については、真に自立を目指す上でやむを得ず車が必要な方にのみ、厳格な基準のもとで適切に運用されることを強く望みます。