ミス・サイゴンは愛の物語(かな?) | 終演後の劇場にて

終演後の劇場にて

こちらは観劇の記録はつけますが観劇ブログではありません。
お芝居の解釈・考察・妄想・時代考証などなどを行っていく
深読み暴走オタクの妄言エッセイ置き場です。
劇場の幕が下りてから、筆者の暴走は始まる…

こんばんは。


通路側の座席は早めに着席しちゃうと

後から座りに来た真ん中の人に

気を遣わせてしまうのが悩みです。


観てきましたミス・サイゴン

DVDで予習したけど

実物の迫力はすごかったです。


ドラゴンすごい。カッコいい。


言っていいのかわかりませんが

苦手なストーリーです。

可哀想すぎるし…

生々しいし…


でもその苦手さを演技、美術、照明など

全てをひっくるめた舞台芸術の品質で

どうにも魅力ある作品にしています。


すごい。本当にすごい。



ということで

レミゼの時にも言ってたけど


これは愛の物語なんだろうか問題

(筆者が勝手に気になってるだけ)



キムとクリスの火花のような恋

クリスとエレンの夫婦の絆

トゥイの契約から生まれた執着

そしてエンジニアの

アメリカン・ドリームへの片想い…


色んな愛がありますよね。

でも愛って種類多すぎませんか?

無粋な発言!!!ごめんなしや!



てっとり早く言うと私は

ミス・サイゴンの主題は「夢」

だと思いました。



キムとクリスは一夜の夢で結ばれ

また一夜にして引き裂かれるという

とても儚い愛でした。

そしてその引き裂かれた夜は

“キムの悪夢”として想起されます。


エンジニアはアメリカに恋焦がれ

自らの才能を活かす場

つまり

夢の叶う場所として

求めてやまないんですよね。


夢を叶える場所を夢見ているというのは

なんか入れ子構造っぽくて複雑ですが…



クリスに限らず多くのGIが

ベトナム戦争の“現実”から“逃避”する“夢”

としてドリームランドに惹かれてしまいます。


ジョンもそうだったんでしょうね。

ジョンに経済的に支えられているジジも

映画の世界である

平和なアメリカを求めていました。


ただジョンは夢から覚めるのが上手でした。

寝起き最高。


今までの行い、夢の中で傷付けた人、

見捨ててしまった子どもたち…

夢から覚めた彼は現実を良くするため

行動を始めました。

ブイドイ財団ですね。



トゥイもキムが“嫁いでくる夢”を

戦いに身を置きながら見ていました。

彼は親の決めた許嫁であるキムに

婚約者であるという理由だけで

妄執を募らせていたようには見えません。


闇雲で泥沼の戦争でもがいている人が

「生きて還れば誰かが待ってる」…

そう確信できるだけで

震える足を前へ進める力になるでしょう。


婚約者になったのが先でも

トゥイは約束されたキムとの結婚を

心の支えにして生き延びたとすると

生存本能というめちゃくちゃ強い気持ちと

キムへの想いが混ざったのかもしれません。


おかえりって言ってもらいたくて…


トゥイ…可哀想だが…好きだ…(突然なに)



一般的に考えると、子どもは未来です。

キムもタムに夢を託します。


ブイドイの子どもたちは、

夢や未来であるはずなのに見捨てられた。

つらいし許せない事態です。




サイゴンは誰かの夢が

現れたり潰えたりしていく

明滅の連続です。


なのでストーリーはつらいけれど

夢を追っていく姿は魅力的に見えるし

どの夢が潰える瞬間も

ドラマを伴っているものなのです。



観劇も現実逃避という夢ですしね( ˘ω˘ )

(上手いこと言った顔)


終わり