引き続き直接支払についてです。

② 医療機関が出産費用を受け取るまでに時間がかかる。場合によっては、出産する人も給付を受け取るまでに時間がかかる。


 ここでまず直接支払制度導入前は、どのように医療機関が分娩費用を得ていたかです。導入以前は妊婦が出産し、退院する時点で費用がほぼ確定します。そこで妊婦に支払ってもらえれば、医療機関は1~2週間程度で回収することが可能でした。以前あった受取代理制度でも健保組合に分娩相当分を請求する必要がありましたので、すぐにとまではいきませんが、遅くとも1~2ヶ月程度で医療機関に振り込まれていたと考えられます。


 ところが、直接支払を利用した場合、正常分娩であっても2ヶ月、異常分娩(帝王切開)ならば3ヶ月は最低かかるとみなされます。理由は、分娩費用の請求と支払のそれぞれに審査・支払機関が入ってくるからです。

 例として、10月中分娩した場合を考えます。以前も少し説明しましたが、その月に出産した分については翌月(11月)10日までに正常分娩は国保連へ、異常分娩は支払基金へ請求をあげます。正常分娩は国保連で各保険者に振り分けられ、費用請求されますが、この時点で11月下旬頃になっています。保険者は請求された分を国保連に支払い、それを受け取った国保連から各医療機関へ支払われるのが12月上旬になると思われます。

 支払基金に送られた異常分娩分については、1ヶ月かけて内容の審査が行われますので、国保連のものと比べてスケジュールがちょうど一月ずれます。これはレセプトとまったく同じ流れであると考えれば、理解はしやすいでしょう。



 以上のように、医療機関はどうしても直接支払導入から2~3ヶ月の間は分娩費用をもらうことができませんので、医療機関の持ち出しのような形にならざるをえません。しかも、これまでよりも費用回収が遅れてしまうのですから、短期間とはいえ医療機関の経営に悪影響を及ぼすことは間違いありません。
 厚労省はこの対策として、独立行政法人福祉医療機構の医療機関向け運転資金貸付制度を活用しようとしています。しかし、これも利率は下げられていますが、利息がしっかりと取られますし、一定額以上は担保も要求されます。


 また、これは結構限定されるケースだとは思いますが、一時金の付加給付が4万円超の保険者に加入している人は、これまで受取代理を利用すれば38万円+4万円超が分娩費用と相殺されていました。一方、直接払制度では法定給付の42万円しか相殺されませんので、事前に準備しなければならない費用が逆に増えてしまっています。
 さて、この直接支払制度にも問題が指摘されています。ざっと考えられるものとして、3つの問題点があると思います。


① これまで支払う必要のなかった事務費などの各種出費。

② 医療機関が出産費用を受け取るまでに時間がかかる。場合によっては、出産する人も給付を受け取るまでに時間がかかる。

③ 失効した保険証を提示した場合、一時金が宙に浮いてしまう可能性がある。


 ①については前回説明しましたので省力します。また、事務費以外にもシステム・書類様式などの変更が保険者や医療機関にとって負担となります。
 なお、前回省略していましたが、増額された4万円に対しては保険者の財政余力に応じた国庫補助(最大2万円)が行われます。


 社労士試験の健康保険法では国庫補助・負担の問題がよく出てきます。これまで出産育児一時金には国費は投入されていませんでしたが、今回それが改正されたことになります。来年の試験に出るかもしれませんね。
 直接支払の説明Part3の始まりです。まずは直接払制度が、どのような仕組みで運営されているかについて説明したいと思います。


 直接支払を利用する場合、医療機関と直接支払を利用することについての合意文書を交わします。なお、まだ実施体制が整っていない医療機関で出産する場合でも、どうしても直接支払を利用したいという人は医療機関と話がつけば、個々に利用が認められています。合意文書を交わせば、あとは出産するだけです。


 ここまでは簡単ですが、ここからちょっと複雑になってきます。


 まず医療機関に支払う出産費用が、いくらかになるかが問題です。法定給付の42万円以上であり、かつ加入する健康保険からの付加金がなければ、出産育児一時金については完結します。あとは出産費用と出産育児一時金の42万円の差額を医療機関に支払うだけです。
 
 次に42万円よりも出産費用が少なかった場合と、付加給付がある場合についてです。出産育児一時金の法定給付は42万円であり、出産費用と相殺してもなお余りが発生すれば、当然これをもらう権利があります。この受給方法を説明する前に、医療機関から健保組合への費用請求がどのように行われるかを知る必要があります。


 各医療機関では、1ヵ月ごとにその月に取り扱った直接払を利用する出産を取りまとめて、翌月の10日までに正常分娩については国民健康保険団体連合会(国保連)に、異常分娩(帝王切開のこと)については社会保険診療報酬支払基金(支払基金)に請求書を出します。
 請求先が2つに分かれている理由ですが、おそらく異常分娩の診療内容の審査と査定を行わせるためだと思われます。診療内容の審査と査定自体は国保連でも行っていますが、どちらか一方だけにしてしまうと事務処理能力の限界と、収入面で不公平が発生するからではないかと推測します。というのも、出産育児一時金の請求を一件処理するごとに、事務費として国保連は210円、支払基金は154円を健保組合などから徴収することができるからです。

 支払基金は厚生労働官僚、国保連は都道府県庁幹部の天下り先ですけど、ただの偶然ですよね。


 それはさておき、説明を続けます。国保連に送られた一時金請求は当月中に健保組合などへ送られます。この請求を受け取った保険者は、差額の有無にかかわらずすべての出産した人に、医療機関に一時金を支払った旨の支給決定通知書を送ります。まだ未受給のお金がある人は、この通知書に「出産育児一時金内払支払依頼書」を記入・添付して保険者に送付することで、未受給金をもらうことができます。この支払依頼書は付加金の支払請求書も兼ねていますので、未受給金はないけど付加金のある人もこの依頼書を出す必要があります。

 まだ10月ですので、医療機関からの請求が来ていません。したがって、上記は一般的な例を挙げたものであり、保険者によっては加入者からの依頼書をもらわなくても差額や付加金を自動的に支払うところもあるでしょう。

 なお、支給決定通知書が来ていなくても領収書の写しを添付すれば、差額や付加金をもらうこともできます。詳しくは加入している健康保険組合などに問い合わせてください。


 支払基金へ送られた請求の扱いなどについては、また次回。
 タイトルの通りになってくれれば理想的なんですけどねー。出産が病気じゃないからって、健康保険の適用外にしなくてもいいのに。でも帝王切開は保険適用になるこの理不尽さに絶望した!!



 さて妊婦、医療機関、保険者に多大な混乱を惹起させているこの直接支払についての説明その2であります
 、実はこの制度、使わなくてもまったく問題ありません。しなくても出産育児一時金はちゃんと全額もらえます。

 
 というのも、直接支払を利用するかしないかは、出産する者が自由に選択できるからです。したがって、利用を希望しなければこれまで通りの方法で出産育児一時金を受給することができます。


 10月1日以降に分娩を行う医療機関と妊婦は、直接払に関する合意文書なるものを取り交わすことになっています。これは通常、直接支払を利用することについて合意したことを証明するものなんですが、同時に利用しなかったことを証明する文書にもなります。

 直接支払の制度の実施が困難な医療機関については、その実施が半年間猶予されたことは前回述べましたが、厚労省に確認したところ、今のところ直接支払を実施していない医療機関であっても、10月1日以降の出産分に関しては合意文書を取り交わさなければならない、とのことです。


 直接支払を利用しない場合、旧来の事後申請方式を採ります。要するに出産した後に申請書を書き、医療機関か自治体の役所に出産日などの証明を受けた上で健保組合などへ申請、後日現金が支給されるものです。
 平成21年9月30日までの出産に関しては、申請の際に「産科医療補償制度」に加入した医療機関で出産したことを証明するスタンプが押された領収書(の写し)などを添付する必要がありました(制度未加入の医療機関で出産した場合は不要)。
 
 ただし、変更点として10月1日以降の出産に関する一時金請求の場合は、必要書類としてさきほど説明した合意文書の写しが追加されました。ですので、利用しないからといって合意文書は粗末に扱わないようにしましょう。
 医療機関でもまだ周知徹底がされていない事項が多いようで、直接支払を利用しない人には合意文書を渡していないところもありました。


 混乱は当分続くことになりそうです。やれやれだぜ。



 次回は直接支払を利用する場合や制度の概説・問題点などを書いていきます。
 さて、いい加減ほったらかしにしていたこのブログもそろそろ再開しようと思います。いつまで続くかはわかりませんですけどね。


 今回からは、今年の10月1日より導入された「出産育児一時金直接支払制度」関連を書いていきたいと思います。

 10月1日以降の出産に対しては、少子高齢化対策として4万円が法定給付として加算されることになりました。合計で42万円となったわけですが、これは出産にかかる費用の全国平均が42万円であることから、このようになりました。健保組合にとって更なる出費となるわけであり、こんなことしておきながら「協会けんぽの赤字を国費でどうにかしようぜ!」なんて話し合っているのは何かの冗談でしょうか。


 そして今回から導入された直接払とは、要するに通常病院で診療を受けるのと同じように、保険証を提示するだけで出産ができるようにして利用者の利便性を向上させ、安心して出産ができるようにするというのが厚労省の説明 です。建前上は。

 実際のところは出産費用の取りっぱぐれを防ぐことが主な目的です。俗に言う「野良妊婦」や、出産費用を踏み倒す人間が増加しているため、その費用を医療機関が持ち出しすることとなり、ただでさえ厳しい医療機関の経営を圧迫しているためです。その結果産婦人科や医療機関そのものが消滅し、残る医療機関の負担がさらに増えるといった悪循環を生み出しているのが現状です。


 ま、何はともあれ各機関との調整が進められ、実施直前になったところで民主党政権が発足。厚生労働大臣に年金と質問主意書提出と官僚叩きにしか興味のない御仁 が就いてしまったためか、厚労省からの制度に関する詳細な通達発表が遅れに遅れてしまいました。ようやく出てきたのが9月18日になってからでした。その直後に大型連休があったため、制度開始まで実質5日程度しか確保できないという有様。さらに開始直前に準備が整っていない医療機関が多いとのことから、全面的な適用を半年間猶予するというありがたいお触れ まで出た次第。

 
 今日も現場は元気に迷惑させられています。


 次に、レセプトの分類についてです。前回レセプトは医科や歯科で分かれていると書きましたが、そこからさらに細かく分かれていきます。


 レセは医療機関ごとに、入院・外来別々に診療を一か月分にまとめたものを1件として数えます。また、総合病院のように複数の診療科がある場合は、さらにその科ごとに細かく分かれます。したがって、たとえば胃癌の治療のためにまず内科に外来受診し、消化器科に入院、退院後に治療と検査のため消化器科と放射線科に外来受診を同月内に行った場合、作成されるレセプトは4件になります。


 このレセの区分けは高額療養費の計算にも大きく影響してきますので、覚えておいたほうがよいです。
 
 

 以下は実際に使われているレセプト様式になります。白紙では味気ないので、医科と調剤のレセには一例として病名と薬剤名を記入してあります。

社会保険を学ぼう!-医科レセ 社会保険を学ぼう!-調剤レセ
社会保険を学ぼう!-歯科レセ


 今日TACの模試を受けてきました。


 全16題、計80問と結構な量があり、自己採点は51点でした。40点満点だと25.5点ですので、ちょっと微妙な点数であります。



 ただ、厚生年金法の問題の中で、空欄のアルファベットは違うのに答えは同じってどうなんでしょうか。

 
ソロモンよ!私は帰ってきた!!



 はい、仕事やら私事やらで丸々一ヶ月更新をサボってましたが、ようやくひと段落着きましたのでぼちぼち書いていきたいと思います。その間にも来ていただいた方々には感謝と幸運を。



 さて、復帰一発目は現在流行に敏感な若者の間で話題騒然大ブレイク中(笑)の新型インフルエンザについてです。



 仕事で問い合わせがあったのですが、新型インフルエンザを発症して隔離や強制入院させられたら、その間は傷病手当金を申請できるのか、というものです。早速管轄の厚生局に問い合わせてみました。


 結論から言えば、感染症法第18条(就業制限)の規定に該当した場合は、まだ確定していない検査結果待ちの期間も含めて「療養のため労務不能」とみなし、傷病手当金を受給できるとのことでした。これは新型に感染している場合はもちろんですが、結果として陰性であっても就業制限が行われているため傷病手当金は受給できます(参照:平成19年3月30日付け 健発第0330034号保発第03330005号 )。

 また、国内の二次感染で新型インフルエンザに罹患し、隔離・停留・入院等の措置がとられた場合も上記の就業制限に該当し、傷病手当金を受給することができます。



 しかしながら、国際空港などの検疫で感染が疑われ、自覚症状はないけれども検査のために隔離・停留された場合は感染症法ではなく「検疫法」の停留処置に該当するため、傷病手当金は出ないとのことです。 
 つまり、何が何でも検疫は潜り抜けましょう(笑)。


 ただし、検疫で引っかかったこの場合でも、顕著な発熱などの体調不良が発生していれば、検疫法の規定とは別個に労務不能と考えて支給してもかまわないとのことです。このあたりは保険者判断ということになるでしょう。
 医療費の支払いにおいて、レセプトがなければ何もできません。では、レセプトはどのように作成されるのでしょうか。(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AC%E3%82%BB%E3%83%97%E3%83%88)



 初診料や再診料に始まり、手術、検査、投薬や注射にいたるまで、われわれが受ける医療行為はすべて規定によって、厳格に算定できる傷病名や回数などが定められています。当然それぞれの値段も決まっています。この規定だけで分厚い本が数冊できるくらいです。医療事務の仕事といえば、レセプトの作成が最初に来るといってもよいのではないでしょうか。
 たとえば、医科の初診料ならばわれわれの負担額は810円となっています(例外あり)。



 医療行為の費用は、厚労省と中医協が定める「点数」として計算されます。今は病院の領収書にも大まかな内訳が記載されるようになっていますね。レセプトには行った検査や使った薬剤などがすべて点数化され、記載されています。


 1点は10円になりますので、点数に3を掛ければ自己負担額、7を掛ければ健康保険組合の負担分、10を掛ければ医療費の総額になります。先ほどの医科の初診料ならば、1回270点として算定されています。


 ただし、点数で算定されるのは「健康保険の適用となる医療行為のみ」であり、入院時の食事代は別途負担額が定められています。また、保険適用外の自由診療、診断書などの文書代や差額ベッド代などは、すべて全額自費負担となりますので、医療機関が自由に値段を決めることができるものです。これは高額療養費を計算するときにも知っておかなければいけないことです。
 我々は病院や薬局で健康保険証を提示すれば通常、窓口ではかかった医療費の3割を支払うだけで良いことになっています。残りの7割を健康保険組合などが支払いますが、一体どのように医療費の支払いは処理されているのでしょうか。初回のこの記事では、まず概略を書きます。



 医療費の残り7割分を請求するために、医療機関は患者一人ひとりについて「診療報酬明細書」という書類を作成します。通常の医科に加え、歯科用、薬局用、柔道整復師や鍼灸師などでも同様のものが作られます。これは大抵の場合、名前が長いので「レセプト」と呼んでいます。


 医療機関はレセプトを作成したら、これを「社会保険診療報酬支払基金(以下、支払基金)」というところへ毎月送付します。支払基金は各都道府県にひとつずつ置かれています。
 
 支払基金の役割としては、まず各医療機関から送られてきたレセプトを取りまとめて、保険者ごとに請求する医療費を計算することがあります。また、レセプトの内容を審査することによって過剰な医療の実施を防ぎ、医療費を抑制しています。
 支払基金が設けられている理由は、現在毎月1億を超える件数のレセプトが作成されていますが、それが各保険者に直接送りつけられたら事務処理が追いつかなくなってしまうからです。そこで支払基金が間に入ることで、事務がスムーズに進められることになります。



 そして支払基金が算出した、健保組合が支払うべき医療費が1枚の請求書になって健保組合に送られてきます。こうして残り7割分の金額が一度支払基金に支払われ、さらに支払基金が各医療機関ごとに医療費を支払います。こうして医療費の処理が終了した形になります。