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アフターダーク : 村上春樹

アフターダークを読み終えて・・・

村上春樹の本について、誰かと話しあったことなんかないので、
正直、ブログに書くという行為が、なんとも表現できない感情をともなっていることに
驚いている。

でも正直に言えば、このこころの中の波紋を、外にむかって放ってしまいたいような気がしている。

※この先は、ネタバレなのでまだ、物語を読んでいない方はご遠慮ください。


アフターダーク











異空間
いつの間にか はじまる世界

(不思議な視線?自分自身の視線なのか、作者の視線か、一般的な登場人物の視線なのか・・・)


いつのまにか、物語ははじまっている。なぜかとても自然だ。物語世界の中に自分がいるような錯覚。
物語の中に飲み込まれているような感じと言えばいいのか・・・


魅力的な人物も登場する。

(より具体的な人物を描くようになったんだなあ・・・)



そして、事件。 どこかでいつでも起こっているような事件だが、心は痛む。
でも、その痛みとは対照的に、物語の中には魅力的な人々が描かれる。

物語が進むにしたがい、魅力的な脇役もふえていく。



異空間。

そして、ストレス


物語の中で発生する、マイナスエネルギーが読み手に伝わるといえばいいのか・・・

異空間にいつの間にか生まれた点は、いまやはっきりと「ストレス」と感じられるようになる。

次第に明確になっていく2つの物語世界。それは「光」と「闇」ほどの違いがある。

それは単なる印象というよりも、心象風景のと言ったほうが適当かもしれない。

一方は「魅力的な登場人物が描かれた血の通った世界」
もう一方は「暗い闇」だ。
しかし、物語の時間軸は「夜」に属している。

つまり

「光の届く闇」と「光の届かない闇」


「光の届かない闇」もまったくの漆黒ではなく、闇の持つディテールを備えている。

「心の闇」を表現しようとしているのなら、それは完全に成功している。



交互に進行する物語。

(読み手を揺さぶる。)

そして、2つの物語りはどこかで交差する予感に満ちてくる。




そう

いつの間にか、物語りは交差し、入り混じる。



そして、朝を迎える予感が、物語から伝わってくる。

そう、朝はやってくる。


闇、いや長い夜の後には、必ず朝はやってくる。

光がさすところにも、ささないところにも朝はやってくる。





読み手にも、確かに朝がやってくる。

たとえ読んでいるのが夜の帳の中であっても、たしかに朝がさしかかっているのが感じられるはずだ。

そして物語は終わりを・・・いやはじまりを・・・


(そもそも闇の後には、朝が、はじまりがやってくるのに、
 物語が終わるというのはまったくもっておかしい。

 だから

 物語りははじまる。                     )

物語りはいつでもはじまりつづける。しかし、どこにでも闇はある。でも、闇はずっとそのままであるはずがない。


闇ははじまるためにそこにあるのかもしれない。

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世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド : 村上春樹

世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」村上春樹

村上春樹は、高校時代から読み始め、現在も好きな作家の上位にくる。(全部を読破するほどではないんだけど・・・)
作家のイメージというのは、ものすごく一人歩きするので、気になっているけど、なかなか手にとれない本って多い。(最近の村上春樹の作品は、刊行後いきなりベストセラーになるので、読んでも自分の感想とか評価がしずらい。そういう意味で、手にとるのにちょっとした決心までも必要だ。)

どちらかと言えば、ファンタジーぽい話がすきだ。
高校時代は「これって文学?」と思いながら、何度も読み直した。
中でも、「世界の終わりと・・・」は、一番好きな作品を選べといわれると、迷ったすえ手にとる1冊だ。

(だって、そうは思わないか?

海辺のカフカだって、ノルウェィの森だって、ねじまき鳥だって、羊をめぐる冒険だって・・・

ふーん、なるほどね・・・。って思われちゃうじゃない。(というか、僕だってそう思う)

だから、あの無意味に金をかけたハードカバーやケース。初めて手にとった図書館で、ピンク色の表紙が薄汚れていた感じのこの作品が好きだっていうところに、自分のアイデンティティが保てる気がするのだ。)

ちょっと思い出して、そのでかい本を引っ張り出してきた。(この記事を書くのにすでに文庫本を手にしたのだが・・)


真打登場!!


あらためてみるとすげえ!




谷崎潤一郎賞受賞!


笑い・冒険・思想の三重奏 小説の面白さが横溢した哀しくて楽しい
恐怖小説










恐怖小説って・・・・(*´Д`)





これってすべて、タスキ(ハードカバーに下1/4に巻いてあるやつネ)にかかれている。


そして、驚くなかれ、ケースの表紙と背表紙のタイトルの上に



純文学書き下ろし特別作品



純文学


*・゚゚・*:.。..。.:*・゚ウフフフフフ( ´∀`)アハハハハハ*・゚゚・*:.。..。.:*・゚

高校生のオレはやっぱり、めまいがしたと思う。

1800円

今は、ポッター最新刊が2冊で4200円だから、びっくりする値段ではないけど

1985.6.15発行。20年も前ならやはり高額だよ。

*・゚゚・*:.。..。.:*・゚ウフフフフフ( ´∀`)アハハハハハ*・゚゚・*:.。..。.:*・゚

高校生のオレはやっぱり、めまいがしたと思う。

でも当時の僕は、小遣い削っても読みたかった。

読んだかいはあったよ。

もうそれは、感動した。こればっかりは、この本を読んでもらうしかない。

しいていうなら、「真っ暗闇の中で影絵が織り成す物語」とでもいうような・・・。

この記事を読んだあなた。

ぜひ文庫本で読んでください。上下で1200円みたいなので。
でも、古本屋でピンク色のハードカバーを見つけたらぜったい買いだよ。きっとその本は読んだ人の気持ちが染み込んでいる。あなたもその感情の海と一体になれる。

できればムカつかずに生きたい(4) : 田口ランディ

No.4 「恨みつらみの晴らし方」

戦争や、殺人、暴力沙汰、いじめにいたるまで、被害者と加害者という立場が存在する。それは、時にはあいまいであったり、無意識であったり、一方しか存在しなかったり、双方がその立場にたつこともあるが、とにかく「傷つけるもの」と「傷つけられるもの」が存在する。

どんなに小さなことでも、傷ついた心、被害者の気持ちはいったいどこへいくのだろう。
どのように昇華されるべきなのか。

いや昇華なんて、そんな生やさしいことではないのかもしれない。

拉致問題や、児童の傷害問題のニュースや、記事を読んでいると思わずそう思ってしまうことがある。


釈由美子主演で映像化された高橋ツトム作「スカイハイ」は、この問題にまっこうから切りこんでいる。不幸な死をとげた人間は、3つの道を選択できる。?天国へ行き転生する?未成仏霊になる?誰かを一人のろい殺す。

なにもかも忘れて生きる。ゆるしてしまえれば楽なこともあるし、ホントに忘れてしまうこともある。

でも・・・忘れられる?・・・


痛みをもって生きる。これは、ものすごくつらく悲しいものなのだと思うが、現実問題としてこの選択しかできないことが多い。

うーん・・・

目には目を、歯には歯を。

やりかえす。

(だって、そうしないと気がはれないんだもん)

これが、一番自然な行為なのかもしれない。

やり返されたら、またやり変えす。 やり返されたら、またやり変えす。
やり返されたら、またやり変えす。 やり返されたら、またやり変えす。
やり返されたら、またやり変えす。 ・・・

これは、「恨みの連鎖」だ。

因果応報
そうだ、だれでもわかっている。わかっちゃいるけど・・・

でも・・・

そうせざるえないから・・・因果応報なのだろう。

「恨みの連鎖」を断ち切るには、結局「忘れてしまう」か、「痛みをもって生きる」かを選ぶことになる。


しかし、やっぱり「痛みをもって生きる」というのもつらいことだ。


ランディは、人は痛みを受け入れ、乗り越える為に「想像力」を持っているといった。


でも、やっぱりつらいよ。「悲しみ」「痛み」は結局心を傷つけている。
そして

…心の痛みを抑える。ストレスになる。ストレスが溜まる。爆発しそうになる。

爆発を抑えようとする。ストレスになる。ストレスが溜まる。爆発しそうになる。

ストレスが爆発する。他者へのストレスになる。他者のストレスが溜まる。…爆発する。


それは、「ストレスの多重連鎖」だ。


結局「忘れる力」だけが、人を痛みから救うのかもしれないとも思う。



ランディさん。

人間は悲しいね。

でも「想像力」や「忘れる力」は、心を前に押し出す力かもしれないって思うよ。


できればムカつかずに生きたい田口ランディ

HTMLおおー

いつの間にかフォントサイズ使えるし。

http://staff.ameblo.jp/entry-3b80074c33bfa620b3a1db631b1d6e01.html

ハノイの犬、バンコクの象、ガンガーの火、 : 小林紀晴

小林紀晴と言うと、デビュー作「ASIAN JAPANESE」から続く、アジアでの出会いを写真と文章でつづった作品で人気だ。
実際、いけるはずのないアジアに、「何もかもすてて」行ってしまいたくなるような・・・そんな魅力にあふれている。

それは、現実と非現実の間に、広大に広がる 「海のような何か」 を越えて旅をする「パスポート」ようなものなのだと思う。

今日紹介する本は、世界文化社から刊行され、幻冬舎文庫から文庫化された作品だ。

「アジア旅物語」世界文化社 (ちょっとベタなタイトルです。) (つД`)

「ハノイの犬、バンコクの象、ガンガーの火、」幻冬舎文庫 (手を伸ばしやすいですね) (*´∀`)


基本的に9編の旅行記という形式をとっているので、読みやすく、感情移入しやすい。

必ず、気に入ったひとつの旅が見つかると思う。






僕は「路上の約束」という話がとても印象に残った。



場所は、ハノイ

小林は、チャンチィエン通りで、「ある約束」をした少年をたずねる。

・・・結局、少年には会えないのだが・・・。



「出会いと分かれ」、そうなふうに言ってしまうと、とても「うすっぺらく」感じてしまうが

そこに存在した彼と少年の交流を、羨ましくもあり、ほほえましくもあり、悲しみと笑顔が入り混じったような顔をして想像してしまうのだ。

いつか行けるかもしれない自分の旅のことを思って。

できればムカつかずに生きたい(3) : 田口ランディ

No.3 「断層の向こうのお父さんたち」

父親との距離を思い浮かべると、これほど理解するのが難しいものはないと思う。

しかし
今、ひとつの考えが浮かんだ。



「僕と父も、ここに書かれている親娘と、おなじなのかもしれない。」

そう解釈すると少しは安心できそうな気がした。




ランディの父親は、マグロ漁業船の乗組員で、物心ついた頃には家庭にいなかった。酒癖が悪く、酔って刃物を持ち出したぐらいだ。
漁業船の男たちを描いた「土佐の一本釣り」(青柳裕介)なんか、まるで、うそっぱちのような世界が想像される。




うちの父も酒が好きで、若いころから相当飲んできた。僕なんか到底足元にも及ばない。

父は
酒がずっと強いのだと思ってきた。

しかし、息子の生き方が、自分の思ったものと違かったのか、父はことある毎に僕につっかかった。
そして、年々好戦的になってきた。
「おまえの人生に納得できない」とでも言うように、絡むようになった。

しかし、酔っ払った父と口論になっても、翌朝の父は何も覚えていない。
そういったことがたびたびあった。

(なにすっきりした顔で話し掛けるんだよ・・)

僕は混乱した。

そして、それはいつもより酒が入ったときに多いことに気がついた。






しかし、酒の上での話として流せるほど僕は大人でなかった。

家庭に対する考えの違いなのだと思っても、押し流せない塊が僕の中に出来てしまっていた。




それは、ランディの言うように断層のようなものなのかもしてない。

「断層の向こうのお父さんたち」

それは、単にジェネレーションギャップといえるものかもしれないが、
お互いが同じ時代を生きている人間にとって、とらえることの出来ない「幻獣」のようなものなのかもしれない。





ランディさん

僕には、まだ父を理解できそうじゃないよ。
でも最近、距離をおいて観るということや、彼を分析するというアプローチで、近づいてみようと思っているんだ。

できればムカつかずに生きたい 田口ランディ