- 代行返上〔文庫版〕 (小学館文庫)/幸田 真音
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机の上に文庫本が置いてあった。
何だろう、と思ってみると
付箋に「ちょっとおもしろい」と書いてあり、
右端に部長の名前が書いてあった。
パラパラと捲ってみると
「代行返上」というタイトルが目に飛び込んできた。
「代行返上」という言葉を聞いて
年金関連用語だと分かる人はかなりの年金通です。
今やっている仕事が年金関連、
といっても公的年金ではなく私的年金である
企業年金システムの構築。
仕事に関連するということもあって、
この本を読んでみたらと言うことなのだろう。
企業年金というと馴染みがないかもしれないが、
退職金を退職時に全部(一時金で)もらうのではなく、
国民年金や厚生年金のように
月々貰えるようにした制度のこと。
数週間前に企業年金連合会の年金未払い額が
何十億あるといったニュースが流れたが、
その企業年金(退職金)のこと。
通常の年金も退職金もちゃんと支払われていない、
もの凄く恐ろしい国。
老後の生活は不安だらけ。やってられない状態。
ちなみに俺は常々、
年金と退職金は貰えないと思えと
いろんな人に言っている。
自分の老後資金は自分で作るしかない。
こんな不安定で無茶苦茶な制度に
老後生活を任せられない。
きっと今の30代辺りのひとは
年金の支給開始が70歳になっているだろう。
60歳で定年退職して、その後再雇用で65歳まで働いても
まだ5年間、食いつないでいかなければならない。
俺たちはそんな社会に生きている。
本の内容に戻って、
代行返上とは簡単に言ってしまうと
厚生年金基金が国の代わりに
厚生年金の一部を国に代行して運用していたものを
その代行部分を返すこと。
何故返すかというと、運用が上手くいっていた時代は
代行することで運用益を増加することが出来ていたが、
2003年頃、株価が7000円台となると、
マイナス運用が何年も続き、
代行部分を抱えていること自体が
重荷になってしまった。
ということで国に変わって代行運用していたものを、
もうあきまへんわ、といって国に返上することをいう。
この本はその代行返上の大変さ、
2003年の執筆時には社会保険庁のずさんな
記録管理を書いているし、
代行返上における金融市場への影響なんかも
書かれている。
ある意味で時代がこの本にやっと追いついた感じだが、
俺として今ひとつ物足りなさを感じた。
ストーリーは主人公の会社の話、妻の話、義父の話、
高校時代の友人の話、証券会社の社長令嬢の話と
かなりのボリュームだがどれも中途半端な気がした。
盛りだくさんなストーリーの割には内容が薄い。
年金関連にしても、金融や投資についても
もうひと突っ込みが欲しかった。
この辺はかなりドロドロとした
裏の世界があるので、
そこを突っついたら
かなり面白いと思うんだけど、
そこまで書いたらヤバイのかなぁ。
本日の基準体重との差:-0.2kg